SUPER GT 2022 ROUND 1
OKAYAMA
■予選:4月16日/決勝:4月17日
■開催地:岡山国際サーキット(岡山県)
■レース距離:300km(82周×3.703km)
ミシュランタイヤ&新型Nissan Z GT500
デビュー戦で3位表彰台獲得&5位入賞を飾る
2022 AUTOBACS SUPER GTの開幕戦が岡山国際サーキットで開催され、ミシュランタイヤを使用して出場したNo.23 MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)がGT500クラスの3位に、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)が同5位にそれぞれ入賞しました。日産陣営は今シーズンからマシンを新型のNissan Z GT500にスイッチし、今大会がその初戦でした。そんな注目の一戦で、ミシュランタイヤ装着の2台がNissan Z勢のトップ2を占める結果となりました。また、ミシュランはGT300クラスにおけるタイヤ供給を今大会より再開。唯一の供給車両であるNo.7 Studie BMW M4(荒 聖治/アウグスト・ファルファス)は、予選では7位を獲得し、決勝レースではずっと5位を走行。最後は他車による追突を受けてリタイアに追い込まれる残念な結果となりましたが、今後への期待を高めるパフォーマンスを見せました。
SUPER GT開幕戦 岡山
MOTUL AUTECH Z
日産のGT500マシンのベース車両が一新されたのは14年ぶりのこと。その新型マシン Nissan Z GT500のデビュー戦であった今大会の日産勢にはひときわ注目が集まりましたが、終わってみればミシュランユーザーの2台がトップ2を占め、ミシュランタイヤの秀でた性能を多くの人々に知らしめる結果となりました。
ミシュランは、SUPER GTで四半世紀──同シリーズの前身である全日本GT選手権の時代、そしてBFグッドリッチブランドとして参加したシーズンを含めると、ミシュランのSUPER GT参戦は25年目に。そんな今シーズンは、GT500クラスのNo.23 MOTUL AUTECH ZとNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Z、GT300クラスのNo.7 Studie BMW M4にタイヤ供給を行います。
2008年から14年にわたって使用されたGT-Rに替わる日産の新型GT500マシンとして、今年6月に国内販売が開始される予定の新型フェアレディZをベースにした「Nissan Z GT500」が今大会でデビュー。搬入日であった金曜日の午後、それまでかけられ続けていたカバーがメカニックたちの手によって丁寧に外されていき、初戦に臨む体勢がいよいよ整いました。
No.23 MOTUL AUTECH Zを駆るのは松田次生とロニー・クインタレッリ。日産のワークスチームであるNISMOの「23号車」がこのコンビで戦うのも、これで実に9年目となりました。その9年の間の23号車のタイヤは常にミシュランでした。今大会の予選では松田がアタックを行いましたがQ1突破にはあと一歩及ばず、9番手グリッドからのスタートになりました。
NDDP RACINGが走らせる「3号車」は、23号車と同様にメンテナンスがNISMOとなり、カラーリングが従来の白ベースから赤ベースに一新されました。ドライバーは、ミシュランタイヤでGT500クラスに挑むのが6年目となる千代勝正と新加入の高星明誠のコンビ。予選では千代がQ1を担当しましたが、決勝を重視したセッティングの影響が出て14位にとどまりました。
BMW Team Studie × CSLからの要請に応え、ミシュランはGT300クラスを戦うNo.7 Studie BMW M4にもタイヤ供給を行います。BMWの新しいGT3マシンであるM4 GT3が世界トップレベルのレースを戦うのは今シーズンのSUPER GTが初めてであり、ミシュランはこのBMW M4 GT3用のタイヤ開発をNo.7 Studie BMW M4へのタイヤ供給を通して進めていく計画です。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、過去2シーズンにわたって行われてこなかったピットウォークが今大会から復活。各チームのマシンやドライバー、ピット設備などを間近に見る機会を渇望されてきた熱心なファンの皆様が入場されました。なお、この2日間で岡山国際サーキットを訪れられたお客様は延べ1万9100人でした。
SUPER GTのトップカテゴリーであるGT500クラスには、今シーズンも15台のマシンがシリーズを通じて出場します。参戦タイヤメーカーは4社で、ブリヂストンが9台、横浜ゴムが2台、ダンロップが2台、そしてミシュランが2台にタイヤ供給を行います。
今大会が開催された岡山国際サーキットは、コース幅が比較的狭く、エスケープゾーンも比較的狭いところです。そこで、SUPER GTを運営するGTアソシエイションは、今大会限定でのGT500車両の性能抑制措置を取りました。各車のエンジンに一律で取り付けられている燃料流量リストリクターを通常より絞り、エンジンの出力ダウンを図るという内容でした。
なお、出場各車には獲得ポイントに応じてサクセスウェイトを課していく独自のハンディキャップ制度を採用しているSUPER GTですが、今大会はシリーズ開幕戦であることから出場全車がノーハンディの状態で行われました。
【今大会のGT500クラス用ミシュランタイヤ】
■ドライコンディション用:スリックタイヤ(ソフト、ミディアム)
【GT500クラス予選】
搬入日であった前日は冷たい雨に見舞われた岡山国際サーキットでしたが、予選日の4月16日(土)は朝から晴天に恵まれました。その午前中に行われた公式練習は、Nissan Z GT500にとっては初めての公式走行セッションでしたが、No.23 MOTUL AUTECH Z+ミシュランタイヤが松田次生のドライブでトップタイムをマークするという幸先のよいスタートを切りました。
そして、GT500クラスのQ1(予選第1セッション)は午後2時46分より開始。気温は17℃、路面温度は30℃でした。ミシュラン勢は、No.23 MOTUL AUTECH Zには松田、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zには新加入の高星明誠がそれぞれ乗り込みました。ともに順調な走行を見せ、特にNo.23 Zの松田はまったくミスのないアタックラップを決めましたが、Q1突破には0.061秒届かず予選9位に。No.3 Zも、No.23 Zに0.296秒及ばなかっただけでしたが、混戦模様の予選における全体成績では14位にとどまりました。
【GT500クラス決勝】
決勝日の4月17日(日)も岡山国際サーキットの上には青空が広がりました。午後2時に決勝レースのフォーメーションラップが開始された時点での気温は24℃、路面温度は39℃と、前日の予選時より高いものになっていました。
No.23 MOTUL AUTECH Zに乗り込んだロニー・クインタレッリは、いつものように果敢なスタートを決めました。オープニングラップのうちにポジションを1つアップ。そしてNo.36 トヨタ GRスープラを追い立てました。しかし、前年のチャンピオンであるNo.36 GRスープラを攻略することは容易でなく、クインタレッリは様々なアプローチでオーバーテイクを試みましたが果たせず、ついにレースの3分の1にわたってNo.36 GRスープラの後ろを走り続けることになりました。そこでNISMOチームは、1名のドライバーの義務周回数をクリアした30周目終了時にNo.23 Zをピットに入れ、ルーティンのピットストップを実施しました。
千代勝正が担当したNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zの前半スティントはよほど順調でした。やはり良好なスタートを決めて1台をかわし13位に上がると、7周目にNo.64 ホンダ NSX-GTを、10周目にはNo.19 GRスープラを、21周目にはNo.8 NSX-GT、24周目にはNo.17 NSX-GTをそれぞれ抜いて9位にまでポジションアップ。前走車に封じ込められた格好で8位を走り続けていたNo.23 MOTUL AUTECH Zに続く位置にまで上がっていきました。そして、No.23 Zの1周後にNo.3 Zもピットイン。ドライバー交替、給油、そしてタイヤ交換を行いました。
このピットストップにおいて、給油量が多くそのぶん停車時間が長くなったNo.23 MOTUL AUTECH ZをかわしてNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zが前に出ることになりました。そして、GT500クラスの全車がピットストップを終えた時点で、高星明誠が後半スティントを担当したNo.3 Zは7位、松田がステアリングを握ったNo.23 Zは9位につけていました。
後半スティントの前半は膠着状態が続きましたが、周回数が進んで各車のタイヤの余力に違いが出てきたところから、ミシュランタイヤを知り尽くした松田が駆るNo.23 MOTUL AUTECH Zのスピードが際立ってきました。67周目にNo.39 GRスープラをかわすと、その2周後には同じミシュラン+Nissan ZのパッケージであるNo.3 Zの前へ。72周目には、同じNissan Zながらブリヂストンタイヤを履くNo.12 Zを抜き去って4位に。続く73周目にはNo.38 GRスープラをヘアピンで仕留め、ついに表彰台圏内の3位へと浮上していきました。
スティントの終盤に入ってもパフォーマンスが大きく落ちることのないミシュランタイヤを履くNo.23 MOTUL AUTECH Zは、そのままの勢いで2位のマシンに迫っていきました。最終的には一歩届きませんでしたが、No.23 MOTUL AUTECH Z+ミシュランタイヤは9番手グリッドスタートから3位でのフィニッシュを果たし、Nissan Z GT500のデビュー戦での表彰台獲得を実現させました。
No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zは、69周目に僚友車であるNo.23 Zに前へ出られましたが、75周目にはNo.12 Zをオーバーテイクして5位に浮上。その後、前を走るNo.38 GRスープラを上回るペースで走り続け、順位を上げるには至りませんでしたが、5位でフィニッシュ。これにより、今大会に出場した4台のNissan Z GT500のトップ2はミシュランタイヤ装着車が占める結果となりました。
【GT300クラス】
27台が出場したGT300クラスにおいて、これがデビュー戦であったNo.7 Studie BMW M4+ミシュランタイヤは、荒 聖治のアタックによって予選Q1を見事に突破。アウグスト・ファルフスが担当したQ2で予選7位を獲得しました。
決勝レースの前半スティントは荒が担当し、安定した走行で7位をキープしました。そして30周をこなしたところでピットストップを実施。新たにNo.7 Studie BMW M4に乗り込んだファルフスは5位を走り続けましたが、1つ順位を落とした直後に後続車両の追突を受けてコースオフ。再スタートはできず、残念なリタイアに終わりました。
■日本ミシュランタイヤ モータースポーツダイレクター 小田島広明のコメント:
「今大会のドライコンディション用タイヤに関して、我々ミシュランは、GT500クラス用、GT300クラス用ともに、今大会におけるソフトコンパウンドとミディアムコンパウンドの2種類のスリックタイヤを持ち込みました。GT500クラスの3号車と23号車はともに、この週末を通じてソフトタイヤを使いました。一方、GT300クラスの7号車は今大会のすべての走行でミディアムタイヤを使用しました。
例年SUPER GTの開幕戦が行われているこの岡山国際サーキットでのレースに向けて我々が今回選んだタイヤは、決勝レースにおける高いパフォーマンスの安定性と良好なウォームアップ性能を特に重視したものです。今回のレースではいろいろなことが起こっていましたが、その中で我々のパートナーチームはコンスタントにポジションを上げていくことができていましたし、FCY(※アクシデントの処理を行うため、コース上の全車に対して追い越しを禁じ、一定の低速で走行することを課す措置)の中でタイヤの温度が下がった後のレース再開時のタイヤの温まりの良さは良好であったと思います。
特に23号車に関しては、ラップタイムは本当に安定していました。我々が狙っていたとおりのレースができたと思いますし、複数のメーカーのタイヤを履き分けるNissan Z GT500のデビュー戦で我々のタイヤを使用するパートナーが表彰台を獲得したことはとても良かったです。
GT300クラスの7号車のBMW M4 GT3に関しては、我々のタイヤを履いてドライコンディションでしっかり走らせることができたのは今大会の週末が初めてのことでした。我々としても様々なデータを得て検討を行いながらのレースでしたが、我々が7号車のために用意したタイヤは確実に機能していましたし、今後の開発につながる多くのものを得ることができました」
SUPER GT開幕戦 岡山
CRAFTSPORTS MOTUL Z
ルーフからリアハッチまでのラインがまっすぐで、リアウイングの効率がいかにも良さそうに見える新型Nissan Z GT500。そのデビュー戦で、千代勝正/高星明誠のコンビが駆ったNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zはスターティンググリッドから9つものポジションアップを果たして5位入賞を決めました。
SUPER GTではタイヤウォーマーの使用が禁じられており、タイヤを温めるために各チームは走行の直前までタイヤを日光にさらします。そしてグリッドに着いた後は、装着タイヤをカバーするようにバックアップ用のタイヤを置いて、熱を持った装着タイヤの温度が少しでも高く保たれるようにします。こうした努力の積み重ねがレースでの好成績につながります。
No.23 MOTUL AUTECH Zの前半スティントはクインタレッリが担当。スタートをクリーンに決め、オープニングラップのうちにNo.19 トヨタ GRスープラをかわして8位に浮上しました。ただし、その後は前年王者のNo.36 GRスープラに前をふさがれ続ける格好になり、抜くに抜けない周回を重ねたクインタレッリはフラストレーションを大いに高めることになりました。
"Performance made to last"の理念の実証。松田が担当した後半スティントは82周のレースの3分の2をこなす長いものになりましたが、その後半では、タイヤのライフの最後まで高いパフォーマンスを発揮し続けるミシュランタイヤの持ち味が発揮され、松田は見事なオーバーテイクを連発。Nissan Z GT500のデビュー戦表彰台獲得を実現させました。
No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zは、千代がステアリングを握った前半スティントのうちに5台を抜き去るという快進撃を披露。後半スティントでは高星がミシュランでの初レースを戦い、最終的には予選順位から9つもポジションを上げての5位でフィニッシュ。ミシュラン装着車がNissan Z勢のトップ2を占め、レースにおけるミシュランの強さを印象づけました。
最終的には他車による追突のためにコースアウトしてリタイアに追い込まれてしまったNo.7 Studie BMW M4ですが、同車とミシュランタイヤのパッケージの競争力の高さが初戦から確認できたことは収穫でした。ミシュランとしては、このBMW M4 GT3用のタイヤ開発を始めたばかりであり、今回得たデータをもとに改良し進化させたタイヤを順次投入していきます。
ミシュランにとっては、GT500クラス、GT300クラスともに、パートナーチームの車両がデビュー戦であった今大会でしたが、ともに良好な手応えを得ることができたレースとなりました。とりわけ、GT500クラスの後半スティントの後半でNo.23 MOTUL AUTECH Zが見せた“ライフの終盤に入ってもタレない”パフォーマンスは、ミシュランタイヤの本領を示すものでした。