
SUPER GT 2020 ROUND 2
FUJI
■予選:8月8日/決勝:8月9日
■開催地:富士スピードウェイ(静岡県)
■レース距離:300km(66周×4.563km)
2戦連続開催の富士ラウンドでミシュラン勢奮闘
CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rが再び日産勢の最上位に
2020年SUPER GTシリーズ第2戦が前戦に続いて富士スピードウェイで開催されました。トップカテゴリーであるGT500クラスに出場したミシュラン勢は、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R(平手晃平/千代勝正)が9位、No.23 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ)が10位でフィニッシュ。ただし、レース後に上位車両に対してペナルティタイム加算の裁定が下ったため、以下の各車両の順位がひとつずつ繰り上がることに。そのため、No.3 GT-Rは8位、No.23 GT-Rは9位という最終結果となり、ミシュランタイヤ装着車が今回も日産 GT-R勢の最上位を得ました。


SUPER GT第2戦 富士
MOTUL AUTECH GT-R
前戦と開催コースが同じという、SUPER GTでは極めて例外的な開催条件となった今大会。レースウィークを通じて空には雲が立ち込め青空が見られることはなかったものの、雲を通して降り注ぐ日差しは強く、全セッションがドライコンディションに恵まれました。そうした中、No.23 MOTUL AUTECH GT-Rは、松田次生のアタックでQ1(予選第1セッション)を突破し、Q2(予選第2セッション)でのロニー・クインタレッリのドライブにより予選5位のポジションを獲得しました。

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、前戦に続いて今大会も無観客での開催となりました。大きなグランドスタンドに人っ子ひとりいない光景は、まるでテスト走行時のもののよう。9月の第4戦ツインリンクもてぎまでは無観客とされることが決まっています。

土曜午前の公式練習に向けて準備を進めるクインタレッリ。マスクを着用する習慣がほとんどないイタリアの出身の彼であっても、現在はヘルメットを被る直前までマスクを外せない状況。もちろん、メカニックをはじめとするチームスタッフたちやミシュランのスタッフたちもマスクやフェイスガードを常時着用してレースウィークを過ごしました。

前戦ではQ1突破がならなかったNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rですが、今大会では松田次生がQ1で7番手のタイムを記録してQ2に進出。そのQ2ではクインタレッリが5番手タイムを刻んで3列目のスターティンググリッドを獲得し、スピードが上がってきたことを感じさせました。

No.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rは土曜午前の公式練習で5番手のタイムを記録したものの、ドライバーがセットアップにもうひとつ違和感を覚えるという状態でした。そのためもあって、土曜午後の公式予選ではQ1に挑んだ平手晃平のベストタイムが12番手にとどまることとなりました。

GT300クラスのミシュランタイヤ装着車の一台であるNo.9 PACIFIC NAC D'station Vantage GT3は、レギュラードライバーであるニッキー・ティームが来日できず、今大会も日本在住のケイ・コッツォリーノがピンチヒッターとなり、レギュラーの藤井誠暢と組む体制。公式予選ではQ1を突破してQ2に進出し、14番手のグリッドを得ました。

GT300クラスにおけるもう一台のミシュランユーザーであるNo.60 SYNTIUM LMcorsa RC F GT3は、吉本大樹が果敢なアタックを見せたものの、Q1を突破できるレベルまで約0.2秒届かず予選24位に。様々な車種と様々なタイヤが入り乱れるGT300クラスの競争の激しさを示す結果となりました。
新型コロナウイルス感染症拡大を受けて、開幕は7月となり、11月最終週までの20週間のうちに8回のレースを一気にこなしていくスケジュールとなった2020年のSUPER GTシリーズ。その第2戦が前戦と同じく富士スピードウェイを舞台に開催されました。前戦は予選と決勝を1日のうちに行うワンデイ開催とされましたが、今大会は土曜日に予選、日曜日に決勝レースを行うツーデイ開催に。ただし、今大会でもサポートレースは一切行われず、引き続き無観客での実施とされました。
独自のウェイトハンディ制を採用しているSUPER GTですが、今大会におけるミシュラン勢は、GT500クラスではNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R(平手晃平/千代勝正)が14kg、No.23 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ)が4kg、GT300クラスではNo.9 PACIFIC NAC D'station Vantage GT3(藤井誠暢/ケイ・コッツォリーノ)が3kgのウェイトを搭載しての出場に。No.60 SYNTIUM LMcorsa RC F GT3(吉本大樹/河野駿佑)のウェイト搭載はありませんでした。
今大会の全走行セッションはドライ路面のもとで実施されましたが、8月8日(土)の午後3時03分から行われたGT500クラスのQ1(予選第1セッション)の開始時で路面温度は37℃、Q2(予選第2セッション)の開始時で路面温度は34℃というコンディション。No.23 MOTUL AUTECH GT-RとNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rはどちらも今大会におけるハード仕様のスリックタイヤを装着して予選に臨みました。そしてNo.23 GT-Rは、松田次生が7番手のタイムを刻んでQ1を突破し、Q2ではロニー・クインタレッリのアタックで予選5位を獲得しました。一方、平手晃平がQ1を担当したNo.3 GT-Rは予選12位にとどまりました。
明くる8月9日(日)も薄曇りながら強い日差しが路面に照りつける天候となりました。午後1時05分にスタートし、富士スピードウェイを66周=300kmを走行して午後2時46分にチェッカーフラッグが振られた決勝レースは、路面温度が終始40℃付近という状況下で行われました。
クインタレッリが乗り5番手グリッドからスタートしたNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rは、レース序盤はライバルたちのペースに伍していくことに苦しみました。5周目からGT300車両を周回遅れにしていく状況となるとペースの維持がさらに難しくなり、後続車両に捉えられてポジションを落としていくことを余儀なくされました。そして7周目以降のNo.23 GT-Rは9位を走行。やがてペースは上がってきていましたが順位を上げることはなく、31周目を終えたところでピットへ向かいました。
このピットストップにおいてNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rは、タイヤをそれまでのハード仕様からミディアム仕様にスイッチ。そして新たに松田次生が乗り込みました。後半スティントにおけるNo.23 GT-Rはライバルと互角かそれ以上のペースで走行し、49周目には今大会における自己ベストタイムを記録します。しかし、レース終盤に同車にはエンジントラブルが発生。松田は全力を尽くしてNo.23 GT-Rをゴールまで運び、10位でチェッカーフラッグを受けました。すると、上位でフィニッシュしていた車両がペナルティを受けて大きく順位を下げることになったため、No.23 GT-Rはひとつ繰り上がって9位という最終結果となりました。
平手晃平が前半スティントを担当したNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rは、オープニングラップで2つ順位を落とし14位という後方からレースを戦うことになりました。ドライバー、マシン、そしてタイヤの状態は悪くないものの、ライバルたちのペースも速く、ポジションを上げられない状況が続きました。
そこでNDDP RACING with B-MAXチームは少し早めの29周目終了時でピットストップを行うこととしました。タイヤは引き続きハード仕様を選択。新たに千代勝正がステアリングを握ったNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rの前を走るのは、同じミシュランタイヤを履くNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rとなりましたが、これをNo.3 GT-Rは37周目にパス。良好なペースで走る千代は、前を行くNo.38 トヨタ GRスープラの背後に迫っていきました。ただし、オーバーテイクするところまで持っていくことは難しく、No.3 GT-RはNo.38 GRスープラの真後ろにつけた恰好で9番手でフィニッシュ。先述の上位車両へのペナルティタイム加算があったことから最終結果は8位となり、前戦に続いて日産 GT-R勢の最上位を得ました。
GT300クラスでは、予選はクラス14位であったNo.9 PACIFIC NAC D'station Vantage GT3が藤井誠暢のドライビングによってオープニングラップのうちに3つポジションを上げ、その後も次々に先行車両をかわして一時はクラス4位にまで浮上する快走を見せました。また、同車の後半スティントを担当したケイ・コッツォリーノも果敢な走りを見せて2度のオーバーテイクを披露し、クラス10位でフィニッシュしました。ただし、走路外走行があったためにレースタイムに40秒のペナルティタイムが加算されることになり、No.9 Vantage GT3の最終結果はクラス19位となりました。
一方、クラス24番手のスターティンググリッドからレースを開始したNo.60 SYNTIUM LMcorsa RC F GT3は、前半スティントを吉本大樹、後半スティントを河野駿佑が担当。なかなかペースを上げられない状況に陥った前戦よりはるかに競争力のあるラップタイムでの走行を続け、クラス17位でフィニッシュしました。その後、No.9 Vantage GT3にペナルティタイム加算の裁定が下ったため、No.60 RC F GT3の最終結果はクラス16位となりました。

■日本ミシュランタイヤ モータースポーツダイレクター 小田島広明のコメント:
「今回のレースにおける我々は、ドライコンディション用タイヤについては、GT500クラスの2台とGT300クラスの2台のどちらに対しても、それぞれのクラス用として今大会に向けて設定したミディアム仕様とハード仕様を用意しました。また、ウェット用としては、GT500/GT300ともに、路面が湿っているダンプコンディション用のドライイングタイヤとフルウェットの2種類を持ち込みました。
GT500クラスの3号車と23号車は、予選と決勝レース前半スティントにおいてはともにハードタイヤを選択しました。一方、決勝レースの後半スティントではチョイスが分かれ、3号車は引き続きハードを使ったのに対して23号車はミディアムを履きました。総じて、GT500クラスの2台における我々のタイヤはよく機能しました。彼らのレース中のベストタイムやアベレージのラップタイムは上位車両のものと遜色ありませんでした。後半スティントではタイヤ選択が分かれましたが、どちらのタイヤもよく機能したと思います。我々のタイヤのパフォーマンスは良好で、十分な競争力を示しました。
GT300クラスに関しては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響でシーズン開幕前にテストを十分に行うことができなかったのですが、今大会ではタイヤという観点からの各装着車両についての理解を前戦以上に一層深めることができたと考えています」

SUPER GT第2戦 富士
CRAFTSPORTS MOTUL GT-R
各車両のフロントウィンドウ右上に設けられたディスプレイに、搭乗ドライバーのイニシャルを4秒間、その時点での順位を2秒間、交互に表示させるシステムの運用が今大会から開始されました。写真は千代勝正がドライブ中の決勝レース後半スティントの終盤のNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R。ポイント圏外であったところから順位を上げていき、最後は上位車両のペナルティもあって8位という結果を手にしました。

今大会も無観客での開催とあって、決勝レースの前でもグランドスタンドに人はおらず、いつものようなファンによるグリッドウォークもなく、非常に静かなスターティンググリッドに。No.23 MOTUL AUTECH GT-Rはリアウイングの翼端板を今大会でも医療従事者の方々への謝意を示したデザインとしていました。

レース序盤のNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rはスタートポジションである5番手をキープして走行。その後、前戦優勝のNo.37 トヨタ GRスープラ、同3位のNo.14 GRスープラ、同6位のNo.100 ホンダ NSX-GTらが先行していくことになりました。No.23 GT-Rはやがて良好なペースを取り戻しましたが、レース最終盤にエンジントラブルが発生。それでもポジションを失うことなくフィニッシュしてみせました。

後半スティントに入ってペースが上向いたNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R(写真左端)は、先行していたNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rに追いつくと37周目にこれをパス。ともに完全な新型車であるトヨタ GRスープラとホンダ NSX-GTがひときわ強さを見せる中、No.3 GT-Rは8位という最終結果を手にして次戦につなげました。

No.60 SYNTIUM LMcorsa RC F GT3は、初めてミシュランタイヤを履いた前戦よりはるかに競争力の高い走りを披露。クラス24位という後方スタートから8つものポジションアップを果たして16位でフィニッシュしました。ポイント獲得には至りませんでしたが、レース後のチームには明るい雰囲気が漂っていました。

ミシュランタイヤ初使用であった前戦でアストンマーチン・ヴァンテージ GT3としては初めてのSUPER GTポイント獲得を果たしたNo.9 PACIFIC NAC D'station Vantage GT3は今大会も上々のレース内容。走路外走行によるペナルティタイムの加算は無念でしたが、実際にはポイント圏内の10位でレースを走り切っており、今後さらなる上位進出が期待されます。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けつつも、ミシュランは今大会に合わせた仕様のタイヤを確実にレースに間に合わせて投入しました。そして、上位車両に対するペナルティによるところが大きいとはいえ、今大会でもミシュランタイヤ装着車が日産 GT-R勢の最上位を得る結果となりました。