
SUPER GT 2022 ROUND 2
FUJI
■予選:5月3日/決勝:5月4日
■開催地:富士スピードウェイ(静岡県)
■レース距離:450km(100周×4.563km)
MOTUL AUTECH Zが4位に入賞
CRAFTSPORTS MOTUL Zは勝利に迫るも不運に泣く
2022年SUPER GTシリーズ第2戦が富士スピードウェイで開催され、ミシュランタイヤを履くNo.23 MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)がGT500クラスの4位に入賞しました。同じNissan Z GT500&ミシュランタイヤのパッケージであるNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)は、決勝の大半で3位以上を走り、レース中盤にはトップ走行車両を目前に捉えるスピードを見せましたが、不運なレーシングアクシデントに見舞われてクラッシュ。ドライブしていた高星明誠が無事に済んだことは幸いでした。


SUPER GT第2戦 富士
CRAFTSPORTS MOTUL Z
予選で3位を獲得したNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zは、決勝レースでもハイペースで安定的に上位を走行。100周で予定されていたレースが折り返しを過ぎたところで2位に浮上し、トップ走行車両のテールに迫っていきました。そして、59周目に入るメインストレートでトップ車両のスリップストリームに入っていたところ、コース脇を走っていたスロー走行車両が突如目の前に現れる格好になり、余儀なくされた急回避の結果、コースサイドのガードレールに激突することに。マシンは大破しましたが、ステアリングを握っていた高星明誠にケガなどがなかったことは本当に幸いでした。

5月の大型連休中の富士スピードウェイにおけるビッグレースには長い歴史があり、1960年代後半〜70年代前半には「日本グランプリ」が開催されていました。そして今大会は、行動規制がないものとしては3年ぶりとなったゴールデンウィークの真っ只中の一戦とあって、2日間で7万3000人を数える入場者を迎えた大盛況のイベントとなりました。

今大会のレース距離は450kmと長く、各車両用にサーキットへ持ち込めるドライコンディション用タイヤの数は、SUPER GTの標準である300kmレースより1セット多い7セット=28本とされました。そして当該シーズン未勝利のタイヤメーカーはさらに1セット追加できることから、今回ミシュランは各8セットのドライタイヤを23号車と3号車に用意しました。

今シーズンから23号車と同様にNISMOが車両のメンテナンスを担当するNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Z。予選で同車のQ1を担ったのは千代勝正で、5番手タイムをマークしました。そして進出したQ2では、前戦の岡山大会では予選を走ることができなかった高星明誠(写真)がミシュランタイヤでの初めての予選アタックで堂々の3番手タイムを記録しました。

予選における路面温度は、同日の午前中に行われた公式練習の終盤よりずいぶん低下したものになりました。その影響を強く受けたのがNo.23 MOTUL AUTECH Zでした。松田次生がQ1を担当し、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zとは0.389秒というわずかな差のベストタイムを刻みましたが、接戦のSUPER GTでは11番手に沈むことになり、Q1突破はなりませんでした。

出場台数の多いGT300クラスでは、予選のQ1は2つのグループに分け、別個のセッションを設けて行われます。同クラスで唯一ミシュランタイヤを履くNo.7 Studie BMW M4はQ1のBグループに出走し、荒 聖治の手により8番手タイムをマーク。進出したQ2では、富士を走るのは初めてというアウグスト・ファルフスのアタックにより予選12位を獲得しました。

SUPER GT富士ラウンドの名物となっているエアレースパイロット室屋義秀選手によるフライトパフォーマンスが今回も開催されました。今回、室屋選手は7月から参戦するエアレース世界選手権を想定したスピード重視のフライトを披露。富士スピードウェイのコースレイアウトに合わせてタイムアタックを行い、大観衆に本物の迫力を伝えました。
SUPER GTはドライバー部門のシリーズポイントに応じた重さのウェイトの搭載を各出場車両に課すサクセスウェイト制度を採用しています。今大会におけるミシュランパートナーチーム車両は、No.23 MOTUL AUTECH Zが22kg、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zが12kgのウェイトを積んでの出走でした。
【今大会のGT500クラス用ミシュランタイヤ】
■ドライコンディション用:スリックタイヤ(ソフト、ミディアム、ハード)
【GT500クラス予選】
予選日の5月3日(火)は終日晴天に。午前中に行われた公式練習の開始時間である午前9時ちょうどの路面温度は18℃でしたが、1時間半を越えるセッション中に強い日差しに照らされ続けたことで、終盤には28℃にまで上昇。その公式練習では、No.23 MOTUL AUTECH Zが6番手、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zが7番手のタイムをそれぞれ記録しました。
午後3時33分から行われたGT500クラスのQ1(予選第1セッション)までに路面温度はぐっと下がり、開始時で21℃となっていました。そうした中、千代勝正がアタックしたNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zは5番手のタイムを記録してQ2(予選第2セッション)に進出。一方、松田次生がこのセッションを担当したNo.23 MOTUL AUTECH ZはQ1突破はならず予選11位となりました。
一方、松田次生がこのセッションを担当したNo.23 MOTUL AUTECH Zは、No.3 Zとは0.389秒という僅差ながらも接戦のSUPER GTでは11番手に沈むことになり、Q1突破はなりませんでした。
GT500クラスのQ2は午後4時11分からの開始でしたが、路面温度はQ1より少し上がって23℃でした。このセッションに進んだNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zのステアリングは高星明誠が握りましたが、彼はミシュランでまだ2戦目ながらもタイヤのパフォーマンスをしっかり引き出すドライビングを見せて予選3位を獲得しました。
【GT500クラス決勝】
決勝日の5月4日(水)も富士スピードウェイは快晴。路面温度は前日より高めで推移し、午後2時30分に決勝レースのフォーメーションラップが開始された時点で33℃となっていました。
今大会のレース距離は、SUPER GTにおいては長めの450km。その途中に2度の給油のためのピットストップの実施が義務づけられており、つまり3つのスティントで構成されるレースでした。ドライバー交替の義務づけ回数は1回とされ、ひとりのドライバーが2スティント連続で乗ることも可能でした。
ミシュラン勢は、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zには千代勝正、No.23 MOTUL AUTECH Zにはロニー・クインタレッリがそれぞれ乗り込んで出走。ともに、スタート直後にひとつずつポジションを上げていきました。
No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zは2周目にひとつ順位を下げることになりましたが、トップ2台に食らいつきながら4位以下を引き離していくハイペースで周回を重ねました。一方、No.23 MOTUL AUTECH Zは、13周目には同じNissan Z GT500でブリヂストンタイヤを履くNo.12 Zを抜き去って9位に順位を上げると、20周目にはやはり同じNissan Zでヨコハマタイヤを履くNo.24 Zをかわして8位に浮上していきました。
ひとりのドライバーの義務周回数である34周を終えたところでNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zが、その1周後にはNo.23 MOTUL AUTECH Zが、それぞれルーティンのピットストップを実施。どちらもドライバー交替を行い、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zには高星が、No.23 MOTUL AUTECH Zには松田が新たに乗り込みました。各チームのピット戦略の違いから、各車の順位は暫定的な状態がしばらく続きましたが、GT500クラスのトップ車両が44周目に入っていたところでGT300車両のクラッシュが発生。破損したコースサイドのバリアの修復も必要になったことから走行は一時中断となり、その後3周にわたるセーフティカーランを経て、53周目よりレース再開となりました。
その直後、トップを争っていた2台のトヨタ GRスープラが接触。新たなトップにはNo.39 GRスープラが立ち、その真後ろにNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zがつける形になりました。走行ペースはNo.3 Zのほうが良く、同車を駆る高星はNo.39 GRスープラを激しくチャージしていきました。
そして59周目に突入していくメインストレートで、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL ZはNo.39 GRスープラのスリップストリームに入り、オーバーテイクのチャンスを狙いました。そのとき、ピットウォール側のコースサイドをスロー走行状態のGT300車両が走っており、同車がスロー走行であることが目視確認できたNo.39 GRスープラは進路を急変更して回避。しかし、その真後ろにつけていたNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zは、No.39 GRスープラが急にいなくなった目の前にスロー走行車両が突如として出現する形となりました。高星は咄嗟の判断でステアリングを大きく切ってスロー走行車両への追突を避けましたが、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zはハイスピードのままグランドスタンド側のコース脇のガードレールに激突。車両は大破しましたが、乗り込んでいた高星は自力でマシンを降り、大きなケガを負うこともなく済んだのは不幸中の幸いでした。
レースは即座に中断となり、クラッシュ車両の撤去やガードレールの破損箇所を補う緊急処置作業が行われました。その後、セーフティカー先導の状態で走行は再開されましたが、追い越し禁止の状態が解除されることがないままにレースの最大延長時間を迎え、62周目を終えたところでチェッカーフラッグが振られました。
No.23 MOTUL AUTECH Zは、1度目の中断からのレース再開時には8位につけていましたが、上位車両のペナルティや3号車のアクシデントにより6位に順位を上げてフィニッシュ。そして、レース終了直前にトップ走行車両と2位走行車両にペナルティが課されたことで、最終的には4位入賞という結果を手にしました。
【GT300クラス】
今回は28台が出場したGT300クラスでミシュランが唯一タイヤ供給を行うNo.7 Studie BMW M4は、Q1-B組に荒 聖治が出走して8番手タイムを記録しQ1を突破。そして進出したQ2ではアウグスト・ファルフスがタイムアタックを行い、予選12位を獲得しました。
迎えた決勝レースは荒が乗り込んでスタートを切りましたが、4周目にトラブルが発生。ピットへ戻されたマシンのトラブル原因が探られた結果、レース現場では修理が不可能な問題と判断され、無念のリタイアとなりました。

■日本ミシュランタイヤ モータースポーツダイレクター 小田島広明のコメント:
「今大会は450kmのレースということで、戦略の幅を広げるために、GT500、GT300の両クラスのミシュランパートナー車両に対してスリックタイヤは3種類ずつ用意しました。GT500クラスの2台は、予選ではともに今大会におけるミディアム仕様を履きました。そして3号車は、1回目のピットストップの際にソフト仕様にスイッチしました。そのソフトタイヤの良好なウォームアップ性能もあって、3号車は優勝を狙えるところを走りました。それだけにクラッシュは残念でしたが、高星選手が無事であったことは幸いでした。23号車は、第2スティントにもミディアム仕様を選択したのですが、このミディアム仕様のウォームアップ性能もとても良かったですし、タイヤが温まった後の松田選手は非常に速いラップタイムで周回しました。安定性とスピードの双方の観点からして、今大会におけるソフト仕様とミディアム仕様はどちらも今回の決勝レースに対する選択として間違いでなかったと考えています」

SUPER GT第2戦 富士
MOTUL AUTECH Z
ロニー・クインタレッリが担当した第1スティントでポジションを3つ上げたNo.23 MOTUL AUTECH Zは、松田次生が乗り込んだ第2スティントでも速さを見せ、上位進出が期待できる状態でした。その後、僚友車に起こったアクシデントのためにレースは実質的にそこで終了する格好に。No.23 MOTUL AUTECH Zのフィニッシュ時の順位は6位でしたが、レース終了直前に2台の上位車両にペナルティが課されたことで、最終成績は4位となりました。

NDDP RACINGとしては久しぶりに予選で上位を獲得し、3番手グリッドにつけたNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Z。決勝レースは450kmで、2度の給油と1度のドライバー交替の義務づけがあり、ひとりのドライバーが2スティント連続で走ることも可能でしたが、NDDP RACINGは給油のためのピットストップのたびにドライバー交替も実施する戦略でした。

No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zは良好なダッシュを決めてスタートでひとつポジションをアップ。No.23 MOTUL AUTECH Zも1周目のうちに1台をかわすことに成功しました。No.3 Zは2周目にひとつ順位を下げましたが、先行車両2台とともに後続をぐいぐい引き離していく力強い走りを見せ、今大会における競争力の高さをレース序盤から示していました。

GT300車両のクラッシュ処理のためのセーフティカーランが解除されてレース再開となったところで、高星明誠が乗るNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL ZはNo.36 トヨタ GRスープラをかわして2位に浮上。トップのNo.39 GRスープラにターゲットを絞り、これに迫っていきましたが、まったくの不運から大きなアクシデントに見舞われてしまいました。

第2スティントに向けてNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zはソフトタイヤに切り替えましたが、No.23 MOTUL AUTECH Zはミディアムタイヤを引き続き使用。両車ともにペースは良好で、どちらのタイヤ選択も間違いではありませんでした。そしてNo.23 Zは結果的には4位入賞を果たし、ドライバーズランキングではトップと8点差の3位につけることになりました。

BMW Team Studie × CSLは近藤翼をCドライバーとして登録し、決勝では荒 聖治、そしてアウグスト・ファルフスとステアリングをシェアさせながらレースを戦う計画でした。ところがわずか4周目にしてステアリング系にトラブルが発生しピットイン。長丁場のはずのレースが、開始から10分も経たないところで終了となってしまいました。

No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zのアクシデントは不運なことでしたが、お客様にもドライバーにも重大な負傷者が出ることなく済んだのは本当に幸いでした。そしてミシュランとしては、今大会に持ち込んだタイヤが狙いどおりのパフォーマンスを発揮し、実際にトップを奪おうというスピードを大観衆の前で披露できたことは大きな収穫でした。