
SUPER GT 2024 ROUND 4
FUJI
■予選:8月3日/決勝:8月4日
■開催地:富士スピードウェイ(静岡県)
■レース距離:350km(77周×4.563 km) ※GT300クラスは71周
酷暑のなか最新版ミシュランGT300タイヤの進化を確認
Studie BMW M4がクラス7位でフィニッシュ
SUPER GTシリーズの2024年シーズン第4戦が夏真っ盛りの富士スピードウェイで開催されました。ミシュランはGT300クラスに出場する3台のパートナーチーム車両にタイヤ供給を行っていますが、今大会ではNo.7 Studie BMW M4(荒 聖治/ニクラス・クルッテン/ブルーノ・スペングラー)がクラス7位、No.45 PONOS FERRARI 296(ケイ・コッツォリーノ/リル・ワドゥー)が同11位でフィニッシュしました。
今大会にミシュランは、シーズン序盤で明らかになっていた問題点に対応して技術仕様を大きく変更したドライコンディション用タイヤを投入。路面温度が50℃に達した酷暑の中でも新型タイヤは過熱によるグリップ低下を最小限に抑えて高性能を安定的に発揮し続け、ミシュランが行った対策の正しさとGT300クラス用タイヤとしての進化が確認されました。


SUPER GT第4戦 富士
Studie BMW M4
前半と後半の2つのスティントで戦うことが基本の350kmレースとして開催された今大会ですが、No.7 Studie BMW M4は荒 聖治、ニクラス・クルッテン、ブルーノ・スペングラーという3名のドライバーを擁して出場。2戦連続となる7位入賞を果たしました。同車で今シーズンの全戦に出場している荒とクルッテンは、今大会を終えてドライバーズランキング9位につけることになりました。

前戦である第3戦鈴鹿大会から2カ月のインターバルを挟んだSUPER GT。折からの猛暑はこの週末の富士も例外でありませんでしたが、土曜日で20,600人、日曜日で31,600人と、昨年大会よりも多くのお客様が来場され、サーキットを満たしていた熱気は一層熱いものとなりました。

SUPER GT予選の前に行われたサポートレースでコース上にオイルが出たことを受け、スターティンググリッドの位置はQ2の順位で決定されることに。No.7 Studie BMW M4は荒がQ2でのアタックドライバーを務め、16台が出走したQ2上位グループで10番手のタイムをマークしました。

No.45 PONOS FERRARI 296は、ケイ・コッツォリーノがQ1のAグループセッションに出走して8番手のタイムを記録し、Q2上位グループセッションへの進出を決定。これを受けてQ2を走ったリル・ワドゥーはQ1のコッツォリーノより0.351秒速く走ってみせ、予選7位を確保しました。

ミシュラングループモータースポーツ総責任者のマチュー・ボナルデルが今大会に参加。走行後のタイヤを自ら観察していました。グローバルモータースポーツダイレクターである現在の彼がこうした作業を他のカテゴリーで行うことはなく、タイヤ競争のあるSUPER GTならではの光景です。

日曜日の午後2時30分の決勝フォーメーションラップの開始時点で、路面温度は50℃。約2時間後のレース終了時でも40℃でした。ミシュランは今大会に新しい技術仕様のドライコンディション用タイヤを投入しており、改良のベクトルが正しかったかどうかが問われたレースでした。

No.7 Studie BMW M4は、前半スティントではスペングラー、後半スティントではクルッテンがドライブ。前半スティントでは予選アタックを行ったタイヤをそのまま使いながら、路面温度50℃のもとでレース周回数のほぼ半分を安定的に周回。2戦連続の7位フィニッシュにつなげました。

No.45 PONOS FERRARI 296は、各スティントの前半では良好なペースで走り、オーバーテイクも見せました。ただ、タイヤ摩耗の進行がNo.7 Studie BMW M4よりやや早く、各スティントの終盤は苦しい状態に。最後は0.009秒差でライバルに先行され、ポイント獲得をわずかなところで逃しました。

No.20 シェイドレーシング GR86 GTには困難な状況が続きました。予選では車両が異常な振動に見舞われ、Q2出走を断念せざるを得ず最後尾スタートに。大幅に仕様変更したことで振動は消えたもののマシンの速さも損なわれ、決勝レースは我慢の走りを続けて19位完走となりました。

ミシュランは、シーズン序盤のレースで直面していたタイヤのオーバーヒート問題に対策を行い、新しい技術仕様のタイヤを今大会に投入しました。それは、酷暑の中でも過熱による早期の性能低下を招かず、ミシュランとしては大きな問題の克服を確認できた実り多き一戦となりました。
【サクセスウェイト】
SUPER GTは、各ドライバーの前戦終了時点での累積ポイントに応じてハンディキャップを課すサクセスウェイト制度を採用しています。今大会におけるミシュランタイヤ装着車では、No.7 Studie BMW M4が30kg、No.45 PONOS FERRARI 296が14kgのハンディウェイトをそれぞれ搭載。No.20 シェイドレーシング GR86 GTはノーハンディの状態で出走しました。
【GT300クラス予選】
今シーズンのSUPER GTでは、予選はQ1(第1予選)とQ2(第2予選)の合計タイムにより順位を決定する方式で行われてきており、それは今大会においても適用される予定でした。そうしたところへ、SUPER GTの予選の前に開催されたサポートレースでコース上にオイルが出る事態が発生。出場台数の多いGT300クラスでは、Q1とQ2のどちらも2つのセッションに分けて行うことから、オイル処理後の路面の状態がセッションによって異なってしまうことが予想されました。
そこでSUPER GTの競技会審査委員会は、今大会ではQ1とQ2の合計タイムで順位を決定する方式を採らず、Q2の2つあるセッションのどちらを走るかを決めるためのものとしてQ1を実施し、そして行うQ2の順位でスターティンググリッドの位置を決定することとしました。
なお、Q1もQ2もドライコンディションとなったことから、両セッションを通じて使用できるタイヤは1セットに限定されました。路面温度は、Q1開始時で42℃、Q2開始時で43℃という高さでした。
3台のミシュランタイヤ装着車の予選最上位はNo.45 PONOS FERRARI 296でした。Q1ではケイ・コッツォリーノが1分38秒710を刻み、Q2上位グループセッションへの進出を決定。そのQ2ではリル・ワドゥーが1分38秒359をマークして予選7位を獲得しました。
今大会にも荒 聖治、ニクラス・クルッテン、ブルーノ・スペングラーという3名のドライバーをそろえて臨んだNo.7 Studie BMW M4は、Q1にはクルッテンのドライブでアタックし1分38秒333でAグループ3番手に。上位グループセッションへ進んだQ2では、荒が1分38秒574を記録して予選10位につけました。
Q1には平中克幸がステアリングを握って出走したNo.20 シェイドレーシング GR86 GTは、車両から大きな振動が発生したためにタイムを詰めることができませんでした。その後、チームでは車両状態の確認作業を懸命に行いましたが、Q2までに振動の原因を特定できず、そのためQ2への出走は取りやめざるを得なくなりました。これにより、No.20 シェイドレーシング GR86 GTは最後尾から決勝レースを戦うこととなりました。
【GT300クラス決勝】
富士スピードウェイは決勝日も酷暑に見舞われました。ドライコンディション用タイヤでスタートする条件となったことから、レギュレーションに基づき、出場各車は前日の予選で使用したドライ用タイヤを履いてスターティンググリッドにつきました。午後2時30分のフォーメーションラップ開始時点で、路面温度は50℃に達していました。
今大会は350kmレースで、それは富士スピードウェイを77周する距離です。ただし、上位カテゴリーであるGT500クラスの優勝車両が77周を走破したところでチェッカーフラッグが振られるため、GT300クラスの優勝車両の到達周回数は71周になる計算でした。レース時間はほぼ2時間で、給油のためのピットストップ義務回数は1回。したがって、300kmレースと同様に前半と後半の2スティントでレース戦略を組むのが基本でした。
No.7 Studie BMW M4は、荒 聖治、ニクラス・クルッテン、ブルーノ・スペングラーの3名のドライバーを今大会に招聘していましたが、決勝レースではクルッテンとスペングラーのふたりが走りました。前半スティントの担当はスペングラーで、オープニングラップで2つポジションを上げることに成功。4周目にもオーバーテイクを決めて7番手へと順位を上げていきました。
その後、スペングラーはポジションをキープしながら走り続けました。周回数が25周を過ぎたあたりからピットストップを行う車両が出始めましたが、No.7 Studie BMW M4は新型ミシュランGT300タイヤの向上したパフォーマンスの安定性を生かして前半スティントをライバルより長く取りました。そして、レースでの走行予定周回数の半分近くとなる32周を終えたところでピットへ向かいました。
タイヤをすべて新品に交換したNo.7 Studie BMW M4は、新たにクルッテンが乗り込んで後半スティントを戦いました。45周目には、タイヤ無交換作戦に出たNo.52 トヨタ GRスープラをかわして7番手に浮上。そして、6番手を走るNo.87 ランボルギーニ・ウラカンGT3を射程圏内に捉えながら走り続けました。最終的にはライバルに0.864秒届きませんでしたが、No.7 Studie BMW M4は最後まで力強くレースを戦い、7位入賞を果たしました。
No.45 PONOS FERRARI 296は、オープニングラップで2つポジションを落とし、逆にこの周で2つ順位を上げたNo.7 Studie BMW M4に前を走られる格好になりました。リル・ワドゥーがステアリングを握ったNo.45 PONOS FERRARI 296は、No.7 Studie BMW M4にプレッシャーをかけていきましたが、コース上で抜きに行くまでには至れませんでした。
そして、31周目を終えたところでPONOS RACINGはNo.45 PONOS FERRARI 296をピットに呼び込み、燃料補給、タイヤ交換、そしてドライバー交替を実施しました。
新たにケイ・コッツォリーノが乗り込んだNo.45 PONOS FERRARI 296は、後半スティントの大半で10番手を走行しました。最後はNo.11 日産 フェアレディZとの勝負になりましたが、最終ラップの最終コーナーで並びかけてきたライバルが0.009秒という本当の僅差ながらも先にフィニッシュラインを横切り、No.45 PONOS FERRARI 296は11位となりました。
No.20 シェイドレーシング GR86 GTは、予選で発生した異常な振動への対策が行われ、マシンには大幅な仕様変更が施されました。その結果、異常振動はなくなったことが決勝レース前のウォームアップ走行で確認されました。
決勝レースは、前半スティントを平中克幸、後半スティントを清水英志郎が担当しました。異常振動はなくなったものの、そのための大幅な仕様変更は車両のパフォーマンスを減じるものであったことから、両ドライバーともに本来のスピードを発揮することができませんでした。それでも彼らは諦めることなくゴールまで走り続け、No.20 シェイドレーシング GR86 GTはトップから2周後れの19位ながらも完走を果たしました。

■日本ミシュランタイヤ モータースポーツダイレクター 小田島広明のコメント:
「今回のシリーズ第4戦に我々はミディアムとハードの2種類のコンパウンドのドライコンディション用タイヤを持ち込みました。7号車と45号車は、2つの予選セッションと決勝レースのすべての走行をハードタイヤで行いました。一方、20号車は、予選ではミディアムタイヤを使用し、自ずとそのタイヤで決勝をスタートしました。そして後半スティントではハードタイヤにスイッチしました。
車両の重量も一因ではあるのですが、先の第2戦富士や第3戦鈴鹿での我々はタイヤのオーバーヒートの問題に直面していました。そこで今大会には、新しい仕様のタイヤを投入しました。同じ富士のレースでも、5月に開催された第2戦と比べて今回は10℃以上も路面温度が高かったわけですが、タイヤに問題はまったく見受けられず、このようなタフなコンディションでもきちんと戦えることが確認できました。これは、この週末における大きな収穫でした。シーズン序盤で我々がタイヤに抱えていた問題は解決できたと判断しています。これでユーザー車両のセットアップがさらに進めば、我々のタイヤのポテンシャルを存分に引き出してもらえるものと思っています」