
SUPER GT 2024 ROUND 5
SUZUKA
■予選:12月7日/決勝:12月8日
■開催地:鈴鹿サーキット(三重県)
■レース距離:300km(51周×5.807 km)
異例の12月開催となったシリーズ最終ラウンド
課題を見いだし来シーズンにつなぐ
当初の予定日であった8月31日〜9月1日での開催が台風の影響により断念され、12月に延期して行われた第5戦鈴鹿大会が、2024年シーズンのSUPER GTシリーズの最終ラウンドとして行われました。ミシュランがタイヤ供給活動を展開しているGT300クラスには3台のユーザー車両が出場しましたが、その中での最上位を得たのはNo.7 Studie BMW M4(荒 聖治/ニクラス・クルッテン/ブルーノ・スペングラー)で、13位でフィニッシュしました。残る2台のミシュランタイヤ装着車は、No.20 シェイドレーシング GR86 GT(平中克幸/清水英志郎)が19位、No.45 PONOS FERRARI 296(ケイ・コッツォリーノ/リル・ワドゥー)が22位で、今シーズン最後のレースをそれぞれ終えました。


SUPER GT第5戦 鈴鹿
Studie BMW M4
12月の鈴鹿でのSUPER GTレースの開催は前例がなく、コンディションを予測し、適した技術仕様のタイヤを用意するのは大変難しいことでした。そして、ミシュランが今大会に用意したドライ路面用タイヤは、実際のコンディションに対してベストマッチであったとは言えず、3台のミシュランタイヤ装着車はいずれも苦戦。その中で、地力の高さを見せて予選25位から大幅に這い上がったNo.7 Studie BMW M4が13位フィニッシュを果たしました。

今シーズンは雨のレースが多かったSUPER GTですが、最終ラウンドは好天に恵まれました。12月に入ったとあって、さすがに寒さを感じる2日間でしたが、予選日には1万8500人、決勝日には2万7000人のお客様がサーキットを訪れ、国内モータースポーツの今シーズン最後のビッグイベントを楽しまれました。

14シーズンにわたってミシュランタイヤとともにGT500クラスを戦い、史上最多となる4度のチャンピオンに輝いたロニー・クインタレッリが、SUPER GTからの引退を決断。今大会がラストレースとなりました。セレモニーでは息子さんと一緒にステージに上がり、お客様からの盛大な拍手に笑顔で応えていました。

最終レースの開催は例年11月であり、それが12月となったのは今大会が初めて。事前テストも行われなかったため、データが乏しく、用意すべきタイヤの技術仕様の判断は難しいものでした。もっともそれは、どのタイヤメーカーにとっても同じこと。ミシュランは、ミシュランなりのアプローチで臨みました。

開始時の路面温度は12℃という低さだった公式練習では、20号車が13位、45号車が17位、7号車が19位につける自己ベストタイムをそれぞれ記録していましたが、路面温度が19℃にまで上がった予選では軒並みタイムが伸びず、20号車が19位、45号車が24位、7号車が25位という非常に厳しい結果となりました。

300kmの距離で行われた今回のレースのスタート時の路面温度は21℃と、前日の予選開催時とほぼ同レベル。SUPER GTでは、予選も決勝もドライコンディションの場合、決勝は予選で使用したタイヤでスタートしなければならないルールのため、ミシュラン勢には予選同様の厳しい戦いが予想されました。

25番手グリッドという後方からのスタートとなったNo.7 Studie BMW M4ですが、ブルーノ・スペングラーのドライブによって前半スティントのうちに順位をかなり上げることに成功。後半スティントもニクラス・クルッテンがうまくまとめて、苦しい中でも大きくポジションを上げて13位に入りました。

No.20 シェイドレーシング GR86 GTは、レース前に発覚した車両トラブルの修理のために正規のスターティンググリッドに着くことができず、ピットスタートに。レースが始まってからは、前半担当の清水英志郎、後半担当の平中克幸の双方が懸命な走りを続けて順位を上げ、19位でゴールしました。

No.45 PONOS FERRARI 296は、リル・ワドゥーが担当した前半スティントのうちに3つ順位を上げましたが、ケイ・コッツォリーノがステアリングを握った後半スティントで、タイヤにゴムかすが貼りついたことによる異常振動が発生。予定外のタイヤ交換を行うことになり、21位完走に終わりました。

ミシュランにとって今シーズンは、GT300クラスに集中した初めてのシーズンでした。昨年までのGT500クラスでの活動とは異なる方針でタイヤ供給活動に取り組みましたが、来シーズンはGT300用タイヤの開発に一層力を入れて取り組み、パートナーチームの活躍をより強力に支えていきます。
【サクセスウェイト】
SUPER GTは、各ドライバーのそれまでの成績に応じてハンディキャップウェイトの搭載を課す制度を採用しています。ただし、そのシーズンにおけるレース出場が8戦目となるドライバーの車両はウェイト搭載なしで出走できるルールとなっています。
今大会のGT300クラスには27台が出場しましたが、そのうち26台がシリーズ全戦に出場しており、これらの車両はシリーズ8戦目である今大会にノーハンディの状態で出場しました。
【GT300クラス予選】
11月のモビリティリゾートもてぎ大会からGT300クラスに導入された新しい予選方式が今大会でも運用されました。Q1(第1予選)には同クラスの全車が出走し、Q2(第2予選)は、Q1の上位14台と下位13台に分けた2つのセッションが行われるものです。つまり、各車両はQ1とQ2の双方を走ります。そして、両セッションの合算タイムにより予選順位が決定される、という仕組みです。
Q1とQ2では異なるセットのタイヤが使用可能です。そして、ドライコンディションで決勝を迎えた場合、予選で使ったタイヤでスタートすることが各車に義務づけられています。Q1とQ2のどちらのセッションで履いたタイヤでスタートするのかは、抽選によって決定されます。
今大会の予選は晴天のもとで迎えました。Q1開始時で、気温は18℃、路面温度は19℃というコンディションでした。
この予選における3台のミシュランタイヤ装着車は総じて苦戦しました。3台の最上位につけたのはNo.20 シェイドレーシング GR86 GTでしたが、予選結果は19位。Q1では平中克幸が1分58秒234を、Q2で清水英志郎が1分56秒706をそれぞれマークし、合計タイムは3分54秒940でした。
ミシュランタイヤ装着車の2番手はNo.45 PONOS FERRARI 296で、合計タイム3分56秒245(Q1:ケイ・コッツォリーノ 1分57秒277/Q2:リル・ワドゥー 1分58秒968)で予選24位に。No.7 Studie BMW M4は、合計タイム3分56秒425(Q1:荒 聖治 1分58秒431/Q2:ニクラス・クルッテン 1分57秒994)で予選25位にとどまりました。
【GT300クラス決勝】
決勝日である12月8日も冬晴れが広がりました。ただし、気温と路面温度はやはり低めで、レース前のパレードラップが開始された12時50分時点での気温は16℃、路面温度は21℃でした。
今大会は300kmレースで、前半と後半の2つのスティントで構成するのが基本でした。つまり、各車両は2名のドライバーによってレースを戦いました。ただし、そうでありながらもNo.7 Studie BMW M4は、荒 聖治、ニクラス・クルッテン、ブルーノ・スペングラーという3名のドライバーを擁する体制で今大会に出場。予選では荒とクルッテンが走りましたが、決勝ではクルッテンとスペングラーがステアリングを握り、荒は走行しませんでした。
前半スティントを担当したのはスペングラーで、オープニングラップで3つもポジションアップ。6周目までにはさらに2つポジションを上げると、その後、上位車両がアクシデントに見舞われたことでまた順位を上げ、前半スティントの半ばには18番手にまで浮上しました。
その後、No.7 Studie BMW M4はライバルをオーバーテイクするには至れずに周回を重ね、20周目を終えたところでピットに。そして、GT300クラスの走行車両全車がピットストップを終えたところで、No.7 Studie BMW M4は15番手につけていました。
スペングラーに替わってクルッテンが乗り込んでいたNo.7 Studie BMW M4は、後半スティントにおいても3つのポジションアップを果たしました。残り3周となったところで1台にかわされたものの、予選結果から12も順位を上げた13位でフィニッシュしました。
予選は19位だったNo.20 シェイドレーシング GR86 GTですが、ブレーキ関係の問題を解決するためにスターティンググリッドにつくことができず、ピットロードから全出場車両の最後にスタートすることを余儀なくされました。レースが始まってからの同車は堅調に走行し、前半スティントは清水英志郎、後半スティントは平中克幸が担当して、予選順位と同じ19位にまで挽回して今シーズン最後のレースを終えました。
24番手グリッドからスタートしたNo.45 PONOS FERRARI 296は、フランス人女性ドライバーのリル・ワドゥーが前半スティントでドライブ。オープニングラップでひとつ順位を上げると、18周目終了時にルーティンのピットストップを迎えるまでにさらに2つポジションを上げました。後半スティントはケイ・コッツォリーノが担当しましたが、路面に落ちていたゴムかすがタイヤのトレッド面に貼り付く「ピックアップ」と呼ばれる問題によって異常振動が発生したことから、予定外のピットストップを実施。タイヤ交換を行って再スタートを切り、22位完走という結果を残しました。

■日本ミシュランタイヤ モータースポーツダイレクター 小田島広明のコメント:
「今シーズン最後のレースに我々ミシュランは、ドライコンディション用タイヤに関しては、7号車、20号車、45号車の3台のいずれにも、ミディアムとハードの2種類のコンパウンドを用意しました。そして3台はいずれも、Q1とQ2の双方でハードタイヤを使用し、決勝の第1スティントも自ずとハードタイヤで走りました。第2スティントでは、3台ともにミディアムタイヤにスイッチしました。レース終盤に45号車がイレギュラーのピットストップを行いましたが、これはドライバーが異常な振動を感じ、ラップタイムも落ちたためでした。ピットに戻ってきた車両のチェックの結果、ピックアップによる振動であったことが判明しました。45号車は再びタイヤを交換してピットアウトしましたが、ここではハードタイヤを使用しました。
結果からも分かるとおり、今回の鈴鹿のために我々が選択して持ち込んだスペックのドライタイヤは、競争力があったとは言い難いものでした。そうなった理由のひとつには、この時期の鈴鹿に適したGT300用タイヤのスペックについての我々の知識と理解が十分でなかったことがあります。もっと違うスペックを投入すべきだったと残念に思っています。
今シーズンは、我々ミシュランにとってはGT300クラスに集中して取り組んだ初めてのシーズンでしたが、全体的に見れば、勉強の年であったという域を出ないシーズンになりました。我々はGT300用タイヤの開発にもっと力を入れる必要があると感じています。一方、非常に激しい雨からダンプコンディション(湿り気を帯びた路面コンディション)までのウェット路面に関しては、我々の製品の強みが十分に発揮されたと思っています」