
SUPER GT 2024 ROUND 6
SUGO
■予選:9月21日/決勝:9月22日
■開催地:スポーツランドSUGO(宮城県)
■レース距離:300km(84周×3.586 km)
ウェットコンディションでミシュラン勢が快走
PONOS FERRARI 296が2位表彰台を獲得
4つの世界的なタイヤメーカーにより、世界で最もハイレベルなタイヤ競争が繰り広げられているSUPER GTシリーズ。その2024年シーズン第6戦がスポーツランドSUGOで開催され、ミシュランタイヤを使用するNo.20 シェイドレーシング GR86 GT(平中克幸/清水英志郎)がGT300クラスのポールポジションを獲得。決勝レースではやはりミシュランユーザーであるNo.45 PONOS FERRARI 296(ケイ・コッツォリーノ/リル・ワドゥー)がGT300クラスの2位、No.7 Studie BMW M4(荒 聖治/ニクラス・クルッテン)が4位でフィニッシュしました。
今大会の予選は悪天候のためにキャンセルされ、このレースウィークで最初の走行セッションであった公式練習でのタイム順によって各車のスターティンググリッドが決されることになりました。その公式練習では、No.20 シェイドレーシング GR86 GTがGT300クラスのトップタイムを刻み、No.7 Studie BMW M4が4位、No.45 PONOS FERRARI 296が5位と、ミシュランタイヤ装着車3台すべてが上位のタイムをマークしました。決勝レースはウェットからドライへと路面コンディションが変化していくコンディションになりましたが、ミシュランのウェット用タイヤとドライ用タイヤはともに優れたパフォーマンスを発揮し、No.45 PONOS FERRARI 296の2位、No.7 Studie BMW M4の4位という好成績につなげました。なお、ポールポジションからスタートしたNo.20 シェイドレーシング GR86 GTは車両トラブルのため残念ながらリタイアとなりました。


SUPER GT第6戦 菅生
PONOS FERRARI 296
ミシュランタイヤ装着車がポールポジションを獲得し、ハーフウェットの決勝レース序盤ではトップ3を独占。ミシュランのウェット性能の高さが目立った今大会でした。もっとも、ミシュランタイヤはドライコンディションでも良好なパフォーマンスを見せており、No.45 PONOS FERRARI 296は路面が乾いた後半スティントも力強く戦ってGT300クラスの2位でフィニッシュ。PONOS RACINGはSUPER GTで初めての表彰台獲得を果たしました。ケイ・コッツォリーノ(写真左)にとってもこれがSUPER GTでの初表彰台でした。そして、コッツォリーノとともにNo.45 PONOS FERRARI 296をドライブする23歳のリル・ワドゥー(写真右)は、2005年以降のSUPER GTで初めて表彰台に上った女性ドライバーとなりました。

8月31日〜9月1日に開催される予定になっていた第5戦鈴鹿大会が12月7〜8日に延期となったため、今大会は第4戦富士大会以来、約1カ月半ぶりのSUPER GT戦でした。この大会直前までは残暑が続いていたスポーツランドSUGOは一変して秋の気配となり、日中でも気温は20℃をようやく超える程度でした。

土曜日の午後は大雨の予報が出ており、そのとおりの天候になった場合は予選を行わず、土曜午前に行う公式練習でのタイム順でスターティンググリッドを決めることが、金曜日のうちに競技会審査委員会から各チームに伝えられていました。そして実際に、予選は大雨のためキャンセルとなりました。

土曜午前に公式練習が行われていた時点では、午後の予選が中止となるかは分かりませんでした。それでも各チームは、予選中止の場合に備え、公式練習で激しいタイムアタックを展開。雨が降りしきる状況でミシュランタイヤが強さを見せ、No.45 PONOS FERRARI 296はGT300クラス5位につけました。

公式練習での雨量はかなりのもので、スピンを喫してクラッシュする車両が続出。1時間45分のセッションの中で6回も赤旗中断がありました。しかし、3台のミシュランタイヤ装着車は路面をしっかり捉えながら走り続け、No.7 Studie BMW M4はニクラス・クルッテンのドライブで4位のタイムを刻みました。

公式練習でのタイムアタック合戦で1番時計を叩き出し、結果的にポールポジションを獲得したのはNo.20 シェイドレーシング GR86 GTでした。ドライブしていた平中克幸(写真中央)は記者会見で「雨量が増えたときもタイヤが常にグリップしてくれたので、そこはすごく強みになったと思います」と語りました。

日曜日の決勝レースはハーフウェットの路面コンディションのもとでスタート。そこでミシュランタイヤ装着車3台がGT300クラスのトップ3を占める状況がしばらく続き、今回のレースをご覧になったファンの皆様やレース関係者に「雨に強いミシュラン」を改めて強く印象づけることになりました。

5番手スタートだったNo.45 PONOS FERRARI 296ですが、13周目には首位に浮上。その後、50周以上にわたってレースをリードし、最終的には2位でゴールしました。前半スティントを担当したコッツォリーノと、SUGOでのレースは今回が初めてであった後半スティント担当のワドゥーの健闘が光りました。

No.7 Studie BMW M4も、ウェットでの前半スティント、ドライでの後半スティントの双方で好走。ピットストップを行った際に、レースが中立化されるFCYの状態となり、ピットロードの閉鎖が解除されるのを待たねばならなかったのは不運で、それがなければ表彰台の一角を得られたであろう走りでした。

今大会は、ミシュランタイヤのウェット性能の高さが改めて示された一戦になりました。また、ミシュランは第4戦富士大会から新型スリックタイヤを投入しており、ドライ路面となった今大会の後半スティントでもそのパフォーマンスの高さが確認され、ミシュランとして収穫の多いレースとなりました。
【サクセスウェイト】
SUPER GTは、各ドライバーの前戦終了時点での累積ポイントに応じてハンディキャップを課すサクセスウェイト制度を採用しています。今大会におけるミシュランタイヤ装着車では、No.7 Studie BMW M4が38kg、No.45 PONOS FERRARI 296が14kgのハンディウェイトをそれぞれ搭載。No.20 シェイドレーシング GR86 GTはノーハンディの状態で出走しました。
【GT300クラス公式練習】
予選日であった9月21日のスポーツランドSUGOは朝から雨。9時15分からの公式練習は、気温18℃、路面温度20℃という、この時期としてはかなり低い温度レンジのウェットコンディションで推移しました。
雨足は強めで、その中でも降り方が一層強まることがたびたびあり、足元をすくわれてスピンを喫してしまう車両が続出。1時間45分にわたる公式練習は赤旗中断が繰り返されました。それでも、セッション開始から40分ほどが経った頃には雨が弱まるタイミングがありました。
予選が行われる予定である同日の午後は天候が悪化するという予報でした。実際にそうなれば予選開催は見送られる可能性が高く、そうなる場合は、この公式練習での各車の自己ベストタイムの順によってスターティンググリッドの位置が決まることになっていました。公式練習はGT300とGT500の両クラスの車両が混走するセッションで、コース上は絶えず混雑気味の状態でしたが、各車は雨が時折弱まるタイミングを狙いながら、果敢なタイムアタックを繰り広げました。
この公式練習でGT300クラスのトップタイムを叩き出したのが、ミシュランタイヤ装着車であるNo.20 シェイドレーシング GR86 GTでした。平中克幸が記録した自己ベストは、GT500クラスの4台より速いという素晴らしいものでした。また、No.7 Studie BMW M4が4位、No.45 PONOS FERRARI 296が5位と、ミシュランタイヤ装着車3台すべてが上位につける結果で公式練習は終了しました。
午後2時45分から開始予定だった予選は、予報どおりの悪天候のためにセッション開始が繰り返し延期されました。そして、その後も天候の回復は見込めなかったことから、予選のキャンセルが決定。公式練習のタイム順によって各車のスタート位置が決され、No.20 シェイドレーシング GR86 GTの初めてのポールポジション獲得が果たされました。
【GT300クラス決勝】
決勝日である9月22日も午前中は雨。それもかなりの強さでした。雨足が弱まるのを待つため、決勝レース前のウォームアップ走行セッションの開始は当初のスケジュールより1時間後れに。そして決勝レースも、当初の予定より52分遅い午後2時22分のフォーメーションラップ開始となりました。
気温は22℃、路面温度は23℃で、路面はハーフウェット。そのため、通常のローリングスタートではなく、セーフティカーが3周にわたって出場車両全車を先導して走り、安全が確認されたところでレース開始とされました。
清水英志郎が乗り込んでGT300クラスのポールポジションからスタートしたミシュランタイヤ装着車のNo.20 シェイドレーシング GR86 GTは、スタート直後は後続車両によるチャージを受けましたが、やがてライバルたちを突き放して首位のポジションを確かなものとしました。
また、その後方の2番手と3番手を走るマシンの背後には、No.45 PONOS FERRARI 296とNo.7 Studie BMW M4が接近。これら2台のミシュランタイヤ装着車は、前を行く2台を次々に攻略していき、レース序盤はミシュラン勢がGT300クラスのトップ3を占める状況に。昨シーズンまでのGT500クラス参戦時代でも突出していたミシュランタイヤのウェット性能ですが、その高さが再び大いにアピールされるシーンとなりました。
もっとも、ミシュランユーザー3台も互いにライバル同士です。2番手に浮上したNo.45 PONOS FERRARI 296は、ケイ・コッツォリーノのドライビングによってNo.20 シェイドレーシング GR86 GTに攻めかかり、13周目にオーバーテイクを成功させて首位に浮上しました。また、ニクラス・クルッテンがステアリングを握っていたNo.7 Studie BMW M4も20号車を攻略して3番手へと順位を上げていきました。
ポジションは下げたNo.20 シェイドレーシング GR86 GTでしたが、その後も3番手をキープしながら走り続けました。ところが、20周目に右後ろの車輪が突如脱落。ホイールを足まわりに留めている部品が破損したことが原因で、20号車は無念のリタイアを余儀なくされました。
その後、レースにはアクシデント処理のためのセーフティカーの介入が2度あり、多くの車両はそれらのタイミングでピットストップを実施。路面は次第に乾いてきており、後半スティントにはスリックタイヤを選ぶチームが大半でした。
13周目から首位を走り続けたNo.45 PONOS FERRARI 296の、路面がまだ乾かない中でのペースには圧倒的なものがあり、一時は2番手以下に11秒を超えるリードを築きました。しかし、セーフティカーが入ったことでそのリードはリセットされることに。その後、再び逃げを打って後続を突き放していきましたが、2度目のセーフティカーでまたも独走態勢を帳消しにされました。
それでもレースリーダーとして走り続けたNo.45 PONOS FERRARI 296は、39周目を終えたところでピットストップを行い、スリックタイヤにスイッチ。白いフェラーリ 296 GT3は首位の座を保ったままコースに復帰しました。
新たにリル・ワドゥーが乗り込んだNo.45 PONOS FERRARI 296は、乾いた路面のもとでも力強い走りを見せました。その背後には、後方から追い上げてきたNo.65 メルセデス・ベンツAMG GT3が迫りましたが、フェラーリのファクトリー契約ドライバーであるワドゥーはその理由を示すような素晴らしいドライビングを続け、ライバルを20周以上も押さえ込み続けました。
No.45 PONOS FERRARI 296は65周目にNo.65 メルセデスの先行を許しましたが、ワドゥーはチェッカーまでの残る13周においても果敢なドライビングを続け、3番手以下には20秒を超える大きなマージンを築いての2位でフィニッシュ。今シーズンからSUPER GTへの参戦を開始したPONOS RACINGは、初の表彰台獲得を果たしました。また、ワドゥーはSUPER GTで初めて表彰台に上った女性ドライバーとなりました。
レース前半は2番手を走行していたNo.7 Studie BMW M4は、40周目に黄旗が出たタイミングでルーティンのピットストップを行うことを決め、スリックタイヤへの換装と荒 聖治へのドライバー交替を実施。するとここでアクシデント処理のために競技状態を中立化させるFCY(フルコース・イエロー)が導入されました。FCY導入中はピットロードが閉鎖されるため、FCYが解除されるまでの間、No.7 Studie BMW M4はピットロード出口で待機しなければなりませんでした。その後、FCYはセーフティカーランに切り替えられて、ピットロード出口がオープンに。しかし、No.7 Studie BMW M4はトップ2台との間に周回遅れの車両を挟むことになってしまったため、ターゲットとのギャップが10秒以上に開いてしまうという不運に見舞われました。
その後、No.7 Studie BMW M4の背後にはNo.777 アストンマーティン・バンテージGT3が迫り、2台は激しい攻防を展開。このバトルの軍配は58周目にライバルに上がりましたが、No.7 Studie BMW M4はその他の後続車両を寄せ付けずに残る22周を走行。4位でフィニッシュして、開幕戦岡山大会での3位に続く好成績を残しました。

■日本ミシュランタイヤ モータースポーツダイレクター 小田島広明のコメント:
「このシリーズ第6戦の週末に我々ミシュランは、ドライコンディション用タイヤに関しては、7号車と45号車には今大会におけるミディアム仕様のコンパウンドを、20号車にはハードとミディアムの2種類のコンパウンドを用意していました。一方、ウェットコンディション用については、7号車には湿った路面で最も能力を発揮するダンプタイヤを、20号車と45号車にはダンプタイヤとフルウェットタイヤを用意していました。決勝レースでの3台はいずれもダンプタイヤを装着してスタートし、7号車と45号車はセカンドスティントではミディアムコンパウンドのスリックタイヤを使用しました。
今回のレースで我々が得た結果は悪くないものだったと思います。大雨となった昨日(予選日)と同様に、ウェットコンディションでのファーストスティントでは、いつも多くの方々から高い評価をいただいているウェットタイヤの優位性を発揮できました。路面が乾き始めても我々のウェットタイヤのパフォーマンスは安定していましたし、スリックタイヤに切り替えたセカンドスティントでもトップ争いを続けることができました。路面温度が20℃前後で推移していった中、ミディアム仕様のスリックタイヤがうまく機能したと思います。我々のタイヤを履いた各車のラップタイムは安定していて、タイヤのデグラデーション(性能低下)にも問題はありませんでした。7号車はピットアウトの際に不運な状況に見舞われましたが、それがなければ表彰台圏内でレースを終えていただろうと思います。また、45号車が、あのような荒れたコンディションのレースで表彰台に上れたのはよかったです。ワドゥーは、SUGOでのドライビングには不慣れでしたが、経験豊富な日本人ドライバーと20周近くもバトルを繰り広げました。彼女の頑張りをタイヤでサポートできたことを誇りに思います」