
SUPER GT 2021 ROUND 7
MOTEGI
■予選:11月6日/決勝:11月7日
■開催地:ツインリンクもてぎ(栃木県)
■レース距離:300km(63周×4.801km)
後続車両による追突にエンジントラブル
ミシュラン勢にとって失意の一戦に
日本で最も高い人気を誇るモータースポーツシリーズであるSUPER GTの2021年シーズン第7戦がツインリンクもてぎで開催されました。GT500クラスに出場した2台のミシュランタイヤ装着車ですが、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R(平手晃平/千代勝正)は後続車両の追突によって大きなダメージを受け、その修理のために喫したタイムロスが大きく14位に。そしてNo.23 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ)はエンジントラブルに見舞われて15位に。2台ともにタイヤ以外の要因によって失意のリザルトに終った一戦となりました。


SUPER GT第7戦 もてぎ
MOTUL AUTECH GT-R
前戦のオートポリスでレース終盤にマシントラブルに見舞われながらも3位表彰台をつかんだ好調ムードのまま今大会に臨んだNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rでしたが、ままならぬことが重なりフラストレーションの溜まる一戦となってしまいました。

新型コロナウイルス感染症の影響でタイやマレーシアでの海外戦がなく、代わりに富士スピードウェイとツインリンクもてぎで2度ずつレースを行うスケジュールとなった今シーズンのSUPER GT。もてぎでの1戦目は7月の暑い中でしたが、2戦目の今大会は11月。シリーズ最終戦として催されることが多かったSUPER GTもてぎ戦としてはなじみ深い開催時期でした。

晩秋を迎えつつある11月上旬のもてぎですが、晴天が続けば路面温度はそれなりに上がります。そこでミシュランはパートナーチームとの協議を踏まえ、スリックタイヤについては今大会におけるソフト仕様、ミディアムソフト仕様、ミディアム仕様、そしてハード仕様の計4種類を用意。パートナーチームの要望に柔軟に応えられる構えを取って戦いに臨みました。

No.23 MOTUL AUTECH GT-Rは松田次生がQ1を担当し7番手のタイムをマークしてこのセッションを突破。5番手から7番手までの3台は0.041秒差の中にひしめくという接戦ぶりでした。そしてQ2ではロニー・クインタレッリがアタックしましたがタイムがもうひとつ伸びず8番手。ただし7番手タイムを記録した車両がペナルティを受けたためNo.23 GT-Rは予選7位となりました。

前戦のオートポリスでは最後尾グリッドスタートから4位入賞を果たしたNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rは、Q1には決勝を見据えてやや硬めであるミディアム仕様のタイヤを履いて出走。このセッションを担当した千代勝正が叩き出した自己ベストはトップから0.662秒遅れにすぎませんでしたが、激戦のGT500クラスでは十分でなく、予選13位に沈むこととなりました。

写真はQ2に向けミシュランのタイヤテクニシャンを交えてミーティングを行うNISMOチームの様子。No.23 MOTUL AUTECH GT-RはQ1ではソフト仕様を履きましたが、Q2ではミディアムソフト仕様を使うことをNISMOチームは決断しました。なお、決勝レースのスタート時にQ1使用タイヤとQ2使用タイヤのどちらを履くかは、抽選によって無作為に決定されます。

決勝日も晴天に恵まれたツインリンクもてぎでしたが、決勝レースのスタート前には、宮城県にある航空自衛隊松島基地から飛来した2機のF-2B戦闘機がサーキットの上空で迫力のデモンストレーションフライトを披露。2機を操るのはともに教官階級のベテランパイロットで、息を飲む妙技の数々を披露してサーキットを訪れたお客様を沸かせました。
SUPER GTシリーズではドライバー部門のシリーズポイントに応じて各出場車両にサクセスウェイトと呼ばれるハンディを課す制度を採用しています。GT500クラスでは、第2戦から第6戦まではドライバー部門における前戦までの獲得ポイントの1点につき2kgのハンディウェイトを課すルールになっていますが、今回の第7戦では獲得ポイントの1点につき1kgのハンディウェイトに。つまり、各車に課されるハンディは軒並み前戦の半分相当となり、No.23 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ)は37kg、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R(平手晃平/千代勝正)は36kgのウェイトを積んで出走しました。
【今大会のミシュランタイヤ】
■ドライコンディション用:スリックタイヤ(ソフト、ミディアムソフト、ミディアム、ハード)
■ウェットコンディション用:フルウェットタイヤ、ダンプタイヤ
【予選】
今シーズンのSUPER GTでは2度目のツインリンクもてぎ戦である今大会ですが、予選日と決勝日の両日を通じて好天に恵まれました。そして11月6日(土)の午後2時53分からGT500クラスのQ1(予選第1セッション)が開始。気温は21℃、路面温度は27℃と、この時期としては高めでした。
松田次生が乗り込んだNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rはソフト仕様、千代勝正がこのセッションを担当したNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rはミディアム仕様のミシュランレーシングスリックタイヤをそれぞれ装着してQ1に出走しました。そして、No.23 MOTUL AUTECH GT-Rは計測周回3周目に1分36秒959をマークし、このセッションで7位となってQ2進出を果たしました。一方、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-RはNo.23 GT-Rに対して0.305秒遅れのタイムを刻みましたが、このセッションの4位から0.2秒遅れただけでもQ1敗退となってしまう実力伯仲の状況の中では不十分で、No.3 GT-Rは予選13位に留まらざるを得ませんでした。
Q2(予選第2セッション)は午後3時31分から開始。路面温度は24℃でした。このQ2に進出したNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rを走らせるNISMOチームはタイヤ選択を変え、Q1で使用したソフト仕様より少し硬めのミディアムソフト仕様を選びました。そしてロニー・クインタレッリがアタックを行いましたが、Q1での自車のタイムに0.3秒以上も届かぬ1分37秒305に留まりました。このタイムはQ2で8番手に相当するものでしたが、7番手タイムを記録した車両が走路外走行によるペナルティでベストタイム抹消となったため、No.23 MOTUL AUTECH GT-Rの予選順位はひとつ繰り上がって7位となりました。
【決勝】
11月7日(日)の午後1時に決勝レースに向けたフォーメイションラップが開始されました。気温は24℃、路面温度は28℃と前日のQ1開始時と同様に高めでした。
無作為で行われる決勝スタートタイヤの抽選でQ1使用タイヤが選ばれたことにより、クインタレッリが担当する前半スティントのNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rはソフト仕様のタイヤを装着。7番手グリッドから良好なスタートダッシュを決めましたが、その先で軽いコースオフを喫して3台のライバル車の先行を許しました。その後、No.23 GT-RはNo.38 トヨタ GRスープラにかわされ、抜き返すことはできないまま周回を重ねていきました。
一方、予選13位であったNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rはミディアム仕様のタイヤを履いて出走。予選11位の車両がペナルティによって最後尾スタートとなったことから、予選順位よりひとつ上の12番手グリッドからレースを開始しました。千代勝正がステアリングを握ったこの白いNo.3 GT-Rは、軽いコースオフで遅れたNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rを含む3台をオープニングラップでかわして一気に9位へ。そのポジションをキープしながらレース序盤の戦いを進めました。
そして10周目、GT500車両と交錯したGT300車両がコースアウトし、同車の処理のためにFCY(フルコースイエロー)が導入されました。このFCYでは、コース上の全車には各々のポジションを守りながら80km/h以下の速度で走行することが求められます。そのためNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rが速度を落としていったところ、後方で競り合っていた2台のGT500車両が交錯して1台がスピンを喫し、その車両が減速していたNo.3 GT-Rに追突してしまうというアクシデントが発生。これによりNo.3 GT-Rは車両後部に大きくダメージを負うこととなってしまいました。
自力での走行を続けることはできたNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rは、なんとかピットにたどり着きました。NDDP RACING with B-MAXチームはリアカウル交換などの修理作業を猛スピードで行い、タイヤを新品のミディアム仕様に交換。ドライバーは千代のままでNo.3 GT-Rを再びコースへ送り出しましたが、すでにトップから4周遅れとなっていました。
このNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rが巻き込まれたアクシデントを受けて、No.23 MOTUL AUTECH GT-Rは11位へと順位を上げることになりました。しかし、ライバルを自力でかわしていくスピードはなく、義務周回数をこなした22周目終了時にピットへ。クインタレッリから松田次生へとドライバー交替を行い、前半スティントと同じソフト仕様のニュータイヤを装着してピットアウトしました。
後半スティントにおけるNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rの走行ペースは上位車両と互角でした。ところが、41周目に入ったところで同車のエンジンにトラブルが発生してしまいました。No.23 GT-Rは自走でピットに帰ることはできましたが、問題の確認と応急の手当てにはしばらく時間を要し、ドライバーは松田のままコースに戻ったときにはトップから5周遅れの最下位となっていました。
もはやポイント獲得さえ現実的でなくなったNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rでしたが、レースを捨てることなく走行を続け、上々のペースで周回を重ねていきました。しかし、残り3周となったところで同車のエンジンが再び不調を来たしました。ステアリングを握る松田はエンジン回転数がまともに上がらなくなったマシンをピットに戻しましたが、赤いNo.23 GT-Rがもう一度戦列に加わることはありませんでした。ただし、レース距離の70%以上を走行していたことから完走扱いとなり、トップから8周遅れの15位というリザルトが残されました。
一方、アクシデントに巻き込まれたことで前半のうちに4周遅れになりながらもレースを続けていたNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rは、平手晃平が乗った後半スティントではミディアムソフト仕様のタイヤを使用。良好なペースで走行を続け、トップから4周遅れというポジションのまま14位でフィニッシュしました。

■日本ミシュランタイヤ モータースポーツダイレクター 小田島広明のコメント:
「今回のレースにおける23号車と3号車のタイヤ選択ですが、結果を出すという観点からすると、うまく機能しなかったと考えています。この週末に我々が持ち込んだタイヤの選択肢はパートナーチームの要望を反映したもので、我々の観点からすれば、別な選択肢もありました。
今回のレースの結果に関して言えば、3号車と23号車にそれぞれ振りかかったアクシデントなりマシントラブルなりによる影響が大きかったです。しかし我々としては、レースのリザルトよりも、本来出し得るパフォーマンスを発揮できなかったことを課題視しています。予選の各セッション、そして決勝レースにおけるパフォーマンスを見たとき、やはり別な選択肢があったと思っています。しかし、タイトル獲得にそれぞれ可能性を残していた我々の2つのパートナーチームは、ここで戦略的に勝負に出ることを望みました。そこで我々ミシュランとしては、我々のパートナーチームの意思を尊重しました。それが今回のタイヤ選択だったということです」

SUPER GT第7戦 もてぎ
CRAFTSPORTS MOTUL GT-R
オープニングラップを果敢に戦って一気に3つもポジションを上げたNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rには前戦オートポリスと同様の追い上げが期待できました。しかし、全車に80km/h以下での走行が求められるFCY(フルコースイエロー)が導入されて減速したところへ後続車両が追突。No.3 GT-Rには落ち度のないレーシングアクシデントでしたが、残念なレースとなりました。

Q2進出車両が決勝スタート時に装着するタイヤは抽選によってQ1使用セットに決まり、No.23 MOTUL AUTECH GT-RはQ1で履いたソフト仕様を装着してスターティンググリッドにつきました。最大で1万人程度という制限が引き続き設けられた中、来場されたお客様はソーシャルディスタンスを保ちながらマナー良く観戦。秋晴れのもとでの熱戦を楽しまれました。

ミシュランタイヤ装着車2台のスタートは良好でした。その後、No.23 MOTUL AUTECH GT-Rは軽いコースオフを喫して12位にまで後退。一方、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rは1周目のうちに9位にまで順位を上げ、そのポジションをキープしながら周回を重ねていきました。しかし10周目、No.3 GT-Rは後続車両の追突を受け、大きなダメージを負ってしまいました。

No.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rと同車への追突車両が後退したことでNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rは順位を上げましたが、自力で前走車をかわしていくスピードはありませんでした。そして後半スティントの半ばでNo.23 GT-Rにはエンジントラブルが発生。松田次生とロニー・クインタレッリに残されていたタイトル獲得の可能性はここで消滅しました。

後続車両に追突されたNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rが車両後部に負ったダメージは思いのほか大きく、ピットでの応急修理作業には5分ほどを要することになりました。序盤にして4周遅れとなってしまったNo.3 GT-Rでしたが、投げ出すことなくレースを継続。上位車両と互角のペースで周回を重ね、4周遅れの14位という結果で今大会を終えました。

41周目にエンジンが吹けなくなるトラブルを抱えたNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rでしたが、なんとか自力でピットにまで戻ることができ、そこで応急の修理を受けました。そして5周遅れとなりながらも戦列に戻りましたが、レースが終盤を迎えたところで同じ症状が再び発生。またもピットにマシンを戻すと、そこで競技継続を断念。痛恨の一戦となりました。

レーシングアクシデントやマシントラブルはいかんともし難いこと。それよりも、本来望み得るパフォーマンスを発揮できなかったことの方がミシュランにとっては問題でした。パートナーチームの意思を尊重したからこその今大会におけるタイヤ選択と運用でしたが、それはチームとミシュランの双方に課題と教訓を残すものとなりました。