
SUPER GT 2024 ROUND 7
AUTOPOLIS
■予選:10月19日/決勝:10月20日
■開催地:オートポリス(大分県)
■レース時間:3時間
低い路面温度のもと高い安定性をミシュランタイヤが発揮
Studie BMW M4が2戦連続4位フィニッシュを果たす
今日のモータースポーツでは希少なタイヤ競争が激しく演じられているSUPER GTシリーズ。その2024年シーズンの第7戦がオートポリスで開催され、ミシュランタイヤを使用してGT300クラスに出場しているNo.7 Studie BMW M4(荒 聖治/ニクラス・クルッテン/ブルーノ・スペングラー)が前戦の菅生大会から2戦連続となる4位でフィニッシュしました。同じくミシュランタイヤを履くGT300クラスエントラントのNo.20 シェイドレーシング GR86 GT(平中克幸/清水英志郎)は9位、No.45 PONOS FERRARI 296(ケイ・コッツォリーノ/リル・ワドゥー)は車両トラブルに見舞われて24位でした。
今大会では、土曜日の走行セッションは悪天候のためにすべてキャンセルとなりました。その結果、公式練習は実施されず、各車両は今大会に用意したタイヤとマシンのセッティングを合わせ込む機会がないまま、日曜日に集中的に行われた予選と決勝を走ることになりました。また、決勝中の路面温度は終始20℃前後という低さでした。そうした難しい条件の中、ミシュランタイヤは温まりの良さと低い路面温度のもとでのパフォーマンスの高い安定性を武器に、各パートナーチームの戦いをしっかりと支えました。


SUPER GT第7戦 オートポリス
Studie BMW M4
決勝日の朝に行われた予選はハーフウェットの路面が走行ラインだけ次第に乾いていくという状況で、No.7 Studie BMW M4はダンプタイヤ(湿った路面用のタイヤ)からスリックタイヤに切り替えたところで赤旗中断が入るといった不運があって22番手のタイムに留まることに。しかし、ドライコンディションとなった決勝レースでの同車のペースはとても良く、ポジションを18も上げて4位に入賞。同車をシリーズ全戦で走らせる荒 聖治とニクラス・クルッテンは、ドライバーズランキングで5位につけることとなりました。

搬入日であった金曜は好天であったオートポリスですが、予選日の土曜日は濃い霧か激しい雨かという悪天候に見舞われ続けました。結局、午前中の公式練習は中止となり、午後の予選も順延を繰り返したすえに翌日へ延期に。ミシュランのベテランのタイヤテクニシャンも、天候には勝てずお手上げといった表情。

土曜は、午前中の公式練習の中止決定後に天候は一時的に回復し、お昼の時間帯に設けられていたピットウォークは幸いにも予定どおりに実施できていました。しかし、この後はまた天候が崩れ、サーキット付近で落雷が発生したほどの激しい雷雨となり、予選を午後に行うことはできませんでした。

予選は決勝日である日曜の朝に移して実施されました。GT300クラスの予選は午前8時から30分間にわたって行われましたが、サーキットの一部では写真のような濃い霧が立ち込めているような状況でした。それでも大きなアクシデントなどはなく、SUPER GTドライバーたちの技術の高さが示されました。

今大会は3時間レースで、No.7 Studie BMW M4は3名のドライバー体制で出場。ブルーノ・スペングラー(写真中央)が第1スティントを、ニクラス・クルッテン(写真右)が第2スティントを担当しました。なお、クルッテンはこの決勝日に22歳になり、誕生日お祝い仕様のサングラスをかけています。

決勝レースはドライコンディションで行われましたが、路面温度は20℃前後という低さでした。予選でミシュラン勢最上位の5位となったNo.20 シェイドレーシング GR86 GTは、タイヤの温まりの良さを生かしてライバルたちのスタート直後のチャージを押さえ、ポジションをキープしてレース序盤を戦いました。

No.7 Studie BMW M4は、スペングラーがステアリングを握った第1スティントのうちに大幅なポジションアップを果たしました。クルッテンが担当した第2スティントでも荒 聖治が担当した第3スティントでもペースは良く、ミシュランタイヤの性能を存分に発揮して、2戦連続となる4位入賞を果たしました。

No.20 シェイドレーシング GR86 GTは、レース中盤まではトップ5をうかがう好位置を走行。しかし、ピットストップ中にセーフティカーが入ったため、すぐにはコースへ戻れず順位を落とすという不運。そこから挽回して、9位でのゴールとなりました。パフォーマンスについては手応えを得られた一戦となりました。

No.45 PONOS FERRARI 296は、予選はダンプタイヤで記録したタイムが自己ベストで17位に留まり、決勝でも順位をなかなか上げていくことができませんでした。そのうちに、コース上の異物でタイヤを傷めてイレギュラーなピットストップを強いられ、さらに終盤にはマシントラブルも抱えてしまうという苦しいレースとなりました。

決勝レースのコンディションは、終始低い路面温度のもとで安定していました。その中でミシュランが持ち込んだミディアム仕様のスリックタイヤは、ウォームアップ性能とグリップ性能とロングライフ性能のいずれも高いレベルで発揮。タイヤメーカーとしては大きな手応えを得られたレースとなりました。
【サクセスウェイト】
SUPER GTは、各ドライバーの前戦終了時点での累積ポイントに応じてハンディキャップを課すサクセスウェイト制度を採用しています。今大会におけるミシュランタイヤ装着車では、No.7 Studie BMW M4が50kg、No.45 PONOS FERRARI 296が44kgのサクセスウェイトをそれぞれ搭載。No.20 シェイドレーシング GR86 GTはノーハンディの状態で出走しました。
【GT300クラス予選】
予選日であった10月19日(土)は朝から悪天候に見舞われました。そのため、午前中に予定されていた公式練習はキャンセルに。午後もコンディションが回復せず、同日中の予選開催は断念され、決勝日の朝に行うこととなりました。
迎えた10月20日(日)の午前8時、GT300クラスの予選が開始されました。このとき、オートポリスには雨こそ降っていませんでしたが、霧が立ち込め、コースは濡れているところが多い状態であり、大半の車両はウェットコンディション用タイヤを装着して出走しました。それでもセッションが進むうちに走行ラインは乾き気味になっていったため、途中から多くの車両がドライコンディション用タイヤに切り替えました。
変則的な開催となった今大会の予選は30分間のセッションとされ、ひとりのドライバーがずっと走ってもよいルールのもと、その自己ベストタイムで各車両の順位を決する方式とされました。GT300クラスは出場台数が多いため、通常は2つの組に分けて予選が行われていますが、今回は出場した全27台が一斉に走行する形式で、他の車両に引っかからない周回を確保することは困難でした。
そうした中、平中克幸がスリックタイヤで果敢なアタックを行ったNo.20 シェイドレーシング GR86 GTが5番手のタイムをマークし、GT300クラスに出場するミシュランタイヤ装着車の予選最上位を確保しました。一方、サクセスウェイトが重いNo.45 PONOS FERRARI 296とNo.7 Studie BMW M4は、ダンプタイヤ(湿った路面用のタイヤ)からスリックタイヤに切り替えたところで赤旗が提示されて十分なアタックを行えなかったこともあり、45号車は17位、7号車は22位に留まりました。
【GT300クラス決勝】
予選の終了から約5時間後の午後1時20分に決勝レースのフォーメーションラップが始まり、ローリングスタートにより戦いの火蓋が切られました。曇天ではあるもののドライコンディションで、路面温度は21℃でした。
今大会は、オートポリスで開催されるSUPER GTとしては初めての3時間レースでした。給油のためのピットストップを2度行うことが必須のレースですが、No.20 シェイドレーシング GR86 GTとNo.45 PONOS FERRARI 296はSUPER GTの標準的な長さのレースと同じように2名のドライバーで戦いました。一方、No.7 Studie BMW M4は荒 聖治/ニクラス・クルッテン/ブルーノ・スペングラーの3名で臨み、その全員がレース中に交替でステアリングを握りました。
レース中には繰り返しアクシデントが発生し、セーフティカーが4度も入ることになりました。その中で、ミシュランタイヤ装着車の3台は力強くレースを戦いました。
No.7 Studie BMW M4は、2012年のDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)チャンピオンであるスペングラーが第1スティントを担当。22番手グリッドという後方からのスタートでしたが、オープニングラップで早速2つ順位を上げると、その後もどんどんポジションを上げていき、1時間強を走ったところで6番手にまで浮上してみせました。マシンを引き継いだクルッテンも、上位の車両と変わりないペースで走行。レースの残り時間が50分を切ったところでピットに入り、ラストスティントを走る荒にステアリングを託しました。
荒が乗り込んでコースに戻った65周目の時点で、No.7 Studie BMW M4は実質的に5番手につけていました。その後、路面温度が20℃を割り、最終的には18℃にまで下がっていった中でも、ミシュランタイヤは高いグリップ性能を発揮し続け、それに支えられた7号車は良好なペースをキープ。すると、残り周回数が11周となったところで、2番手を走行していた車両がイレギュラーなピットストップを行い、これによりNo.7 Studie BMW M4はひとつポジションをアップ。トータル88周を走行したレースを4位で終えました。
前戦の菅生大会でポールポジションを獲得し、今大会でも予選でミシュラン勢最上位につけたNo.20 シェイドレーシング GR86 GTは、清水英志郎がスタートから2スティントを連続で走り、ラストスティントを平中克幸が担当するシフトを組みました。
No.20 シェイドレーシング GR86 GTは、第1スティントではスターティンググリッドと同じ5番手をキープ。27周を走行したところでピットストップを行うと、第2スティントもトップ5圏内を走り続けました。そして、64周目を終えたところで2度目のピットに入り、ここで清水から平中に交替。すると、このタイミングでセーフティカーが入ったためピットロード出口が一時的に閉ざされてしまい、すぐにコースインできず貴重な時間を失ってしまうことになりました。
まったくの不運によりポイント圏外の12番手にまで順位を落としてしまったNo.20 シェイドレーシング GR86 GTでしたが、第3スティントでも走り自体は好調。平中がプッシュして3つポジションを挽回し、9位でフィニッシュしました。
前戦の菅生大会で2位表彰台を獲得したNo.45 PONOS FERRARI 296にとって今大会は厳しいレースとなりました。ケイ・コッツォリーノが担当した第1スティントでは、ライバルとの抜きつ抜かれつがありながらも、予選結果とほぼ変わらぬ順位につけていました。ところが、コース上の異物によってタイヤを傷めてスローパンクチャーを喫する事態が発生。No.45 PONOS FERRARI 296はイレギュラーなタイヤ交換のためのピットストップを行うことになり、ほぼ最下位に転落しました。
また、No.45 PONOS FERRARI 296には、第3スティントの途中でマシントラブルが発生しました。ステアリングを握っていたリル・ワドゥーはなんとか車両をピットに戻し、チームによる応急措置を受けてコースに復帰。トップから3周遅れの24位ながら、苦しかったレースを戦い抜きました。

■日本ミシュランタイヤ モータースポーツダイレクター 小田島広明のコメント:
「今回のオートポリスに我々ミシュランは、ドライコンディション用タイヤに関しては、7号車と20号車には今大会におけるミディアム仕様とハード仕様を用意しました。45号車にもミディアムとハードを持ち込みましたが、フロント用のミディアムは2セット、リヤ用のハードも2セットという内訳でした。ウェットコンディション用タイヤについては、3台のいずれに対してもダンプタイヤ(湿った路面用のタイヤ)とフルウェットタイヤを用意しました。
予選で各車がベストタイムを記録したタイヤは、7号車と45号車はダンプタイヤ、20号車はミディアムスリックタイヤでした。決勝レースはドライコンディションで行われましたが、7号車と20号車は3スティントともミディアムを使用しました。一方、45号車はミディアムでスタートし、第2スティントではハードにスイッチしました。しかし、コース上の異物によってスローパンクチャーを喫したため、イレギュラーのタイヤ交換を行うことになり、ここでフロントはミディアム、リヤはハードという組み合わせに変更しました。そして、最後のスティントでは前後ともにミディアムを履きました。
今大会の予選は、タイヤのパフォーマンスについてはコメントできないような内容でした。セッション中はコンディションが刻々と変化していったため、どのタイミングでどのタイヤを使うかはギャンブルに近いものがありました。決勝レースは路面温度がかなり低い中で行われましたが、これは、この時期のオートポリスでは珍しいことでありません。ただ、風がずっと吹いていましたし、オートポリスにおいてはなかなかなかった長さのレースだったこともあり、かなり荒れた内容になりました。このようなコンディションの中で、我々が持ち込んだミディアムスリックは非常によく機能し、各ユーザーは安定して走ることができました。7号車はタイヤのウォームアップが特に良好でしたし、コンスタントラップも良かったです。燃費も良かったので、チームは自由度の高いピット戦略で戦えていました。我々ミシュランとしては、タイヤの安定性と低い路面温度のもとでの温まりやすさを確認できたので、残り2戦に向けた準備という意味では、非常にポジティブなレースになったと思っています」