
SUPER GT 2022 ROUND 8
MOTEGI
■予選:11月5日/決勝:11月6日
■開催地:モビリティリゾートもてぎ(栃木県)
■レース距離:300km(63周×4.801km)
CRAFTSPORTS MOTUL Zはタイトルにあと一歩届かずも
ミシュランタイヤは最終戦でも大いに実力を示す
世界最高レベルのタイヤ競争が繰り広げられているSUPER GTシリーズの2022年シーズン最終戦がモビリティリゾートもてぎで開催されました。GT500クラスのチャンピオン争いの主役として今大会に出場したNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)は、ドライブスルーペナルティを受けて後退を余儀なくされましたが、ミシュランタイヤのハイパフォーマンスも手伝って追い上げを果たし、4位でフィニッシュ。タイトルにはあと一歩届きませんでしたが、千代/高星のコンビはドライバーズランキング2位を獲得しました。もう一台のミシュランタイヤ装着車であるNo.23 MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)は、アクシデントを避けようとした車両との接触によってフロントサスペンションを傷め、ピットに入って修理を強いられることに。そして、3周後れになりながらもレースに復帰し、13位で完走。シーズンを通して同車をドライブした松田/クインタレッリのコンビはドライバーランキング7位となりました。


SUPER GT最終戦 もてぎ
CRAFTSPORTS MOTUL Z
第2戦富士大会で不運なレーシングアクシデントにより大クラッシュに見舞われたNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zでしたが、続く第3戦鈴鹿大会で圧勝を飾り、第6戦菅生大会も制覇。今大会では4位で、チャンピオンの座には届きませんでしたが、GT500とGT300の両クラスを通じて唯一、2勝を挙げたマシンとなり、同車を駆った千代勝正/高星明誠のコンビはドライバーズランキング2位で2022年シーズンを終えました。

3年ぶりにSUPER GT最終戦の舞台となったモビリティリゾートもてぎ。予選日に1万3500人、決勝日には2万6000人のお客様が来場され、スタンド席はコロナ禍前に匹敵する賑わいとなりました。

ポイントリーダーとして今大会を迎えた千代/高星組のNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Z。予選Q1には千代が出走し7番手タイムで通過。Q2を担当した高星は4位となるタイムを叩き出しました。

No.23 MOTUL AUTECH ZでQ1を担当した松田次生は、マシンとタイヤに良い手応えを得ていましたが、アタックラップで他の走行車両に引っかかり、Q1突破にわずかに及びませんでした。

GT300クラスをミシュランタイヤで戦うNo.7 Studie BMW M4は、Q1を突破して臨んだQ2でも好タイムをマークしましたが、4輪脱輪によるペナルティでベストタイム抹消となる不運。

決勝日も晴天に。4番手グリッドにつけたNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zのひとつ前のポジションには、チャンピオン争いにおける最大のライバルであるNo.12 Nissan Zがいました。

No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zのスタートは上々でしたが、その後の第5コーナーでアウト側のライバル車を軽く押す格好になり、ドライブスルーペナルティを受けるという痛恨の事態に。
SUPER GTシリーズは、好成績を残すほどにウェイト(重り)の搭載によるハンディを課す、独自の制度を持っています。ただし、そのシーズンにおける出場が8戦目となるドライバーの車両は、ウェイト搭載なしで出場できる仕組みです。そして、GT500クラスでは参戦車両の全車がその条件を満たしていることから、シリーズ第8戦である今大会にはすべてのマシンがノーハンディの状態で出場しました。
【今大会のGT500クラス用ミシュランタイヤ】
■ドライコンディション用:スリックタイヤ(ソフト、ミディアム、ハード)
【GT500クラス予選】
搬入日であった11月4日(金)は夕方に降雨があったものの、明くる5日(土)のモビリティリゾートもてぎは朝から晴天。コースの路面は終日ドライで、GT500クラスのQ1(予選第1セッション)が開始された午後2時53分の時点で、気温20℃、路面温度25℃でした。
ミシュランタイヤ装着車でQ1を担当したドライバーは、No.23 MOTUL AUTECH Zが松田次生、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zが千代勝正。1分36秒129を記録したNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zは、このセッションで7位となってQ1突破を果たしました。一方、アタックラップで他車に引っかかる格好になったNo.23 MOTUL AUTECH Zの自己ベストは1分36秒390で、上位8台までが果たせるQ2(予選第2セッション)進出にワンポジション届かず、予選9位となりました。
Q2が開始されたのは午後3時44分で、気温はQ1と同じ20℃、路面温度は少し下がって23℃でした。このセッションに進んだNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zは、高星明誠のアタックによって1分35秒916をマーク。4番手グリッドという、決して悪くはないスタート位置を手に入れました。ただし、そのひとつ前のポジションには、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zにとってチャンピオン争いにおける最大のライバルであるNo.12 Nissan Zがつける、という予選結果となりました。
【GT500クラス決勝】
決勝日の11月6日(日)もモビリティリゾートもてぎは快晴。決勝レースに向けたフォーメイションラップの開始時で、気温は25℃、路面温度は30℃でした。
レースは序盤から波乱含みでした。千代が乗り込んだNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zは、4番手グリッドからポジションキープのスタートを見せましたが、オープニングラップの第5コーナーにはNo.8 ホンダ NSX-GTとの並走状態で進入。ライバルに前へ行かせぬため、ブレーキングを極力遅らせた千代でしたが、そこで前輪を軽くロックさせてしまい、アウト側にいたライバル車両に軽く接触。これでNo.8 NSX-GTはハーフスピンを喫してしまいました。
No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zはダメージなくそのまま走り続け、前を行くNo.12 Nissan Zを追いかけました。しかし、レースが9周目に入ったところで、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zには、先のNo.8 NSX-GTのハーフスピンの原因を作ったことに対する懲罰としてドライブスルーペナルティを科すという裁定が下ります。そして、9周目を終えるところで、千代は悔しさを噛み締めながらピットロードへ。12番手にまでポジションを落としてコースに戻りました。
No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zへのドライブスルーペナルティ裁定が出たのとほぼ同じタイミングで、4台以上の車両が絡んだ多重クラッシュが発生しました。さらには、ロニー・クインタレッリがステアリングを握っていたNo.23 MOTUL AUTECH Zが、アクシデントを避けようとしたマシンと交錯するという、別なアクシデントも発生。こうした事態を受け、レースコントロールは、FCY(コース上の全車に上限80km/hでの定常走行を義務づける措置)を導入。そして11周目からはセーフティカーがコースに入り、レースは中立化されました。
9番手グリッドからのスタートであったNo.23 MOTUL AUTECH Zは、ミシュランタイヤのウォームアップの良さを存分に生かし、オープニングラップで3台ものマシンをかわして6番手に上がっていました。そして8周目にはNo.64 ホンダ NSX-GTを抜いて5番手に浮上。そうした進撃を見せていたところで、アクシデントを避けようとして不測の動きを取ったマシンと接触し、左フロントサスペンションを破損するという痛恨の事態となったのでした。クインタレッリがピットまで何とか走らせた手負いのマシンには、NISMOチームのメカニックによる猛スピードでの修理作業が施されました。
セーフティカーランは20周目まで続きましたが、その間にNo.23 MOTUL AUTECH Zの修理作業は終わり、同車はトップから3周後れで戦列に戻りました。そして、21周目からレースは再開。この周回を終えたところで、各車のスタートドライバーの義務周回数がクリアされたため、何台もの車両がピットへ。その中には、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zも含まれていました。
No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zは、燃料補給とタイヤ交換を行い、千代から高星にドライバー交替してピットアウト。その目前には、ひと足先にピットストップを行ったNo.19 トヨタ GRスープラがいましたが、高星はミシュランタイヤの温まりの速さを生かし、ライバルをアウトラップでオーバーテイクしてみせました。
セーフティカーランの間は、コース上での追い越しは禁止ですが、前走車との間隔を詰めていくことは可能です。そのため、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zは、順位は変わらないものの、セーフティカーランのうちに上位車両とのギャップを縮めることができていました。さらに、チームが行った迅速なピット作業のおかげで、数台のライバル車両をピットストップで抜くことに成功。ファーストスティントを長く引っ張る作戦に出たNo.36 トヨタ GRスープラを除くGT500クラスの全車がルーティンのピット作業を終えた段階で、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zは実質的に5番手にまで順位を回復していました。
ドライブスルーペナルティを受けながらも、改めてタイトルを狙えるポジションにまで巻き返してきたNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zでしたが、まずは目の前を走るNo.17 ホンダ NSX-GTを攻略しなければなりません。ベテランの塚越広大が駆るNo.17 NSX-GTは、周回遅れのGT300車両を巧みに使いながら、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zをブロック。その後、両車の間隔は一端広がりましたが、高星が操るNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL ZはやがてNo.17 NSX-GTのテールに再び迫りました。そして、50周目の最終コーナーを素晴らしい速さで立ち上がると、メインストレートでライバルの横に並び、第1コーナーでオーバーテイク。4番手にポジションを上げました。
No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zの巻き返しは、ここまででした。3番手を走るNo.14 トヨタ GRスープラには1秒を切る差にまでに詰め寄りましたが、ポジションアップはならず、4位でフィニッシュ。そして、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zがタイトルを獲得するためには、その前を走らねばならない相手であったNo.12 Nissan Zは今大会を2位で終え、同車を駆った平峰一貴/ベルトラン・バゲットがシリーズチャンピオンに。No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zで今シーズンを戦ってきた千代勝正と高星明誠のふたりは、ドライバーズランキング2位となりました。
一方、9周目に不運なアクシデントに見舞われて左フロントサスペンションを破損したNo.23 MOTUL AUTECH Zは、ピットでの修理作業後も引き続きクインタレッリのドライブで40周目まで走行。そしてルーティンのピットストップを行って松田次生に交替。もはや順位もポイントも関係のない状況であることは承知の上で、両ドライバーはプッシュを続け、シリーズ最終戦をしっかりと戦い抜きました。
【GT300クラス】
ミシュランがGT300クラスでタイヤを供給している唯一の車両であるNo.7 Studie BMW M4は、今大会には荒 聖治とアウグスト・ファルフスのレギュラーコンビで出場。予選Q1ではAグループに出走し、荒が5番手のタイムを刻んでQ1突破を果たしました。そしてQ2ではファルフスが予選5位に相当する好タイムをマーク。ただし、その周回での同車には、タイヤ4本すべてがコース外にはみ出た局面があったため、同周回でのタイムは抹消に。アタックに入る前に記録していたタイムがQ2での自己ベストということになり、No.7 Studie BMW M4は予選14位となりました。
決勝レースにおけるNo.7 Studie BMW M4の前半スティントはファルフスが担当。オープニングラップで2つポジションを上げて12番手につけました。すると、GT500クラスの車両が9周目に入っていたときに多重クラッシュが発生。そして、導入されたセーフティカーがコースを退いた次の周回に、BMW Team Studie x CSLはルーティンのピットストップを実施しました。
ファルフスに替わってNo.7 Studie BMW M4に乗り込んだ荒は、40周の長さとなった後半スティントにおいて、ハイペースで安定的に周回し続ける好走を披露しました。45周目にNo.2 トヨタ GR86をかわしてポイント獲得圏内の10番手に上がると、翌46周目にはNo.9 フェラーリ 488 GT3を抜いて9番手に。そのポジションをキープしてフィニッシュし、No.7 Studie BMW M4を今季の全戦でドライブした荒は、GT300クラスドライバーズランキング11位でシーズンを終えました。

■日本ミシュランタイヤ モータースポーツダイレクター 小田島広明のコメント:
「今シーズン最後のレースに我々ミシュランは、GT500クラスとGT300クラスの双方に、ドライコンディション用タイヤについてはソフトとミディアムとハードの3種類を用意していました。GT500クラスにおけるミシュラン勢の2台は、予選と決勝のファーストスティントではミディアムタイヤを使い、3号車はセカンドスティントではハードタイヤを履きました。一方、23号車は、イレギュラーなピットストップを行った際にハードタイヤにスイッチしたのですが、レースが残り3分の1となったところで行ったルーティンのピットストップではソフトタイヤに履き替え、それで最後のスティントを走りました。
今大会の気象条件は概ね我々の予測どおりで、予選で使用したミディアムタイヤは狙いどおりに機能しました。決勝は、アクシデントの多発によってカオス的な状況になり、レース結果は技術的なものとは別な要因によって決まってしまった、という感がありました。しかし、ことタイヤに関して言えば、我々は自分たちが持ち込んだ製品が発揮した性能にとても満足しています。3号車は、決勝の後半スティントではハードコンパウンドを履いたわけですが、それがアウトラップで示したウォームアップの良さは素晴らしかったですし、その後のラップタイムの推移もとても良好でした。タイヤのデグラデーション(性能低下)は、とてもマイルドでした。
3号車は、シーズン半ばに大きなクラッシュに見舞われてリタイアしたレースがありながらも、今大会にはポイントリーダーとして臨んでいました。そこまで巻き返してみせたチームやドライバーの努力に、感謝の意を表したいと思います。
GT300クラスにおいては、現在の我々のパッケージは、大きな問題を出すことは一切なくレースをフィニッシュできる仕上がりになっていると評価しています。我々が現在のコンセプトのタイヤでGT300クラスを戦ったのは今シーズンが初めてだったのですが、今大会へのアプローチにおいて大きな誤りは一切ありませんでした。とはいえ、いくつかの領域で、さらに改良していかなければならない、ということも自覚しています」

SUPER GT最終戦 もてぎ
CRAFTSPORTS MOTUL Z
ドライブスルーペナルティを受けて12番手にまで順位を落としたNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zでしたが、その直後にセーフティカーが入ったことが有利に働きました。そして、千代勝正と高星明誠という両ドライバーの奮闘、NDDP RACINGのピット作業の速さとそのタイミングの良さ、さらにミシュランタイヤのハイパフォーマンスによって、タイトル奪取まであと一歩というところまで巻き返しました。

No.23 MOTUL AUTECH Zは序盤のうちに4つも順位を上げていましたが、多重クラッシュのあおりを受ける格好でトラブルに見舞われる不運に。それでもレースを投げず、最後まで戦い抜きました。

後半スティントにおける3号車は、No.17 ホンダ NSX-GTと一進一退の攻防を延々と展開。そして51周目にこのライバルを仕留め、今大会の4位、シリーズランキング2位を手にしました。

No.7 Studie BMW M4は、予選でベストタイム抹消のペナルティを受け14番手スタートとなったことが響きましたが、走りそのものは好調で、決勝では5つ順位を上げてフィニッシュしました。

決勝終了後には、出場した全ドライバーが立ち並んで、お客様へこの1年間の声援に感謝の意を表すグランドフィナーレが行われました。SUPER GT最終戦恒例のこのイベントですが、新型コロナウイルス感染症の影響で過去2シーズンは行われておらず、今回は3年ぶりの開催でした。

ミシュラン・モータースポーツのダイレクターであるマチュー・ボナルデル(写真左)が今大会を視察。同日にスペインで行われたMotoGPの最終戦ではなく、日本のSUPER GTへ彼がやって来た事実に、ミシュランがこのSUPER GTでのタイヤ競争をいかに重要視しているかが現れています。

全8戦で行われたSUPER GTの2022年シーズンもこれで終了。ミシュラン勢は、GT500クラスで2勝、GT300クラスで1勝という結果を残しました。「持続可能なイノベーション」を追求するミシュランは、その原動力となるモータースポーツの中でも最も厳しいタイヤ競争が行われているSUPER GTに、今後も全力で取り組んでいきます。