
WEC 2021 ROUND 2
PORTIMAO
■予選:6月12日/決勝:6月13日
■開催地:アウトドロモ・アルガルベ(ポルトガル)
■レース時間:8時間
中嶋一貴組のNo.8 トヨタ GR010ハイブリッドが2連勝
タフな条件での戦いをミシュランタイヤが支える
FIA世界耐久選手権(WEC)の2021年シーズン第2戦ポルティマオ8時間が開催され、今シーズンからの新カテゴリーであるハイパーカークラスに出場したセバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドン・ハートレー組のNo.8 トヨタ GR010ハイブリッドが開幕戦スパ・フランコルシャン6時間に続く優勝を飾りました。今大会が開催されたアウトドロモ・アルガルベはアップダウンが大きく、下りながら右に大きく回り込む最終コーナーでは左側の前後輪が約2.5秒にわたって強大な荷重を受け続けるなど、タイヤにかかる縦方向の負荷が他のサーキットより断然大きいという特徴があります。また、8時間にわたった今回の決勝レースは路面温度が最高で40℃を軽く超えるドライコンディションでの実施となりましたが、ハイパーカー、LMGTE Pro、LMGTE Am各クラスの出場全車が使用したミシュランタイヤは1セットで2スティントを連続でこなすという使命をいずれもしっかりと果たし、そのパフォーマンスを存分に示しました。

ポルティマオ8時間 ハイパーカークラス優勝
No.8 トヨタ GR010ハイブリッド
今シーズンのWECで唯一、内燃機関エンジンとモーター・ジェネレーター・ユニット(MGU)の双方を搭載するマシンであるのがトヨタ GR010ハイブリッドです。同車は、WEC独自の性能調整措置によって本来の車両性能を大幅に抑え込まれた格好になっていますが、燃料消費量が少なく、それによるピットストップ回数の少なさとチーム力の高さをもって堂々の開幕2連勝を達成しました。また、ハイパーカークラスに新規参戦するグリッケンハウス・レーシングのグリッケンハウス 007 LMH(写真右奥の赤/白の車両)が今大会でデビュー。アクシデントに見舞われながらも8時間レースを完走しました。

今大会の舞台となったアウトドロモ・アルガルベは2008年に完成した比較的新しいサーキットです。2020年からMotoGPが開催されていますが、WECのレースが行われるのは今回が初めてでした。そこでミシュランのWECタイヤチームは、MotoGPタイヤチームからデータの提供を受けるなど、最適なタイヤを準備するための努力を最大限に行って今大会に臨みました。

性能調整措置により、トップスピード等ではアルピーヌ A480・ギブソンがトヨタ GR010ハイブリッドより分があるという力関係となっています。実際、No.36 アルピーヌは予選でポールポジションを獲得し、決勝レースでもスタートからトップを走行。しかし、燃費に優れるトヨタ勢はピットストップを少なく済ませ、やがてNo.36 アルピーヌを攻略していきました。

レース中盤以降は2台のトヨタ GR010ハイブリッドがチームメイト同士によるトップ争いを展開。省燃費を優先させたペースで戦ったブエミ/中嶋/ハートレー組の8号車がやがてアドバンテージを握ることになり、開幕戦として行われた前戦スパ6時間に続いて優勝。コンウェイ/小林/ロペス組の7号車が僅差で続き、トヨタが今季初となる1-2フィニッシュを決めました。

小規模スポーツカーメーカーのグリッケンハウスが新開発のハイパーカー、グリッケンハウス 007 LMHを今大会でデビューさせました。今大会で見せたスピードはクラス下のLMP2車両レベルで、レースではLMGTE車両と交錯してダメージを負うなどしましたが、チームは諦めずにマシンを修復。54周遅れになりながらもチェッカーを受け、デビュー戦を最後まで戦いました。

GTカテゴリーの上位クラスであるLMGTE Proクラスは、最初のタイヤ交換の際にミディアム仕様より高い路面温度に対応したミディアム・ホット仕様にスイッチしたNo.51 フェラーリ 488 GTE EVOがペースを上げ、スタートからリードしてきたNo.92 ポルシェ 911 RSR-19をかわしてトップに浮上。そのまま逃げ切って、同車としては今季初、AFコルセチームとしてはWEC通算26勝目を飾りました。

アウトドロモ・アルガルベはイベリア半島の南部にあり、今大会の決勝レースでは初夏の強い日差しに恵まれて路面温度が上昇。そして、コースの大きな起伏により高荷重がかかったり抜けたりすることを延々繰り返すという、タイヤにとってはタフな条件の一戦でした。しかし、ハイパーカー、LMGTE Pro、LMGTE Amの各クラス出場全車が装着したミシュランタイヤはいずれも大きな問題を起こすことがなく、8時間にわたる各ユーザーの戦いを支え抜きました。