二輪ロードレースの世界最高峰シリーズであるMotoGPの2024年シーズン第10戦イギリスGPが行われ、Ducati Lenovo Teamのエネア・バスティアニーニが土曜日のスプリントレースと日曜日のグランプリレース（決勝レース）の双方で優勝を飾りました。 今回のイギリスGPは、1949年のマン島TTレースを第１回大会とするロードレース世界選手権（通称「世界グランプリロードレース」）の75周年記念大会として開催され、MotoGPクラスの出場全車がなにがしかの往年のマシンのカラーリングをモチーフにした特別カラーでグランプリレースを走行しました。そして上位9名のライダーが、シルバーストーンを20周するレースの従来記録を更新する所要時間でフィニッシュしました。また、オールタイムラップレコード（当該サーキットにおけるMotoGPマシンでの史上最速ラップタイム）とグランプリレースにおけるファステストラップの双方がAprilia Racingのアレイシ・エスパルガロによって塗り替えられ、出場全車が使用するミシュランタイヤの性能向上が示された記念大会となりました。
ドゥカティのワークスチームであるDucati Lenovo Teamは、2003年のMotoGP参戦開始当時のカラーリングをモチーフにした特別カラーで出場。チームの一翼を担うバスティアニーニは、キャリア初のスプリントレース優勝を土曜日に飾ると、日曜日のグランプリレースも制覇。それも従来記録を18秒以上も短縮するレースタイムで走り切って、今シーズン初優勝を飾りました。なお、イギリスGPでは毎年異なるライダーによる優勝が続いてきていましたが、今年もその例に漏れぬことになり、バスティアニーニの優勝によってこの10年で10人目のウィナー誕生となりました。
グランプリレースの序盤で3番手を争う#23 バスティアニーニ、#41 アレイシ・エスパルガロ、#93 マルク・マルケス。アプリリアの先輩ライダーであるマックス・ビアッジのカラーリングのヘルメットを被ったエスパルガロがこのバトルをリードしていきましたが、レース後半になるとバスティアニーニが強さを発揮しました。
20周で行われたグランプリレースの後半でのペースの落ち込みを最も少なく抑えたバスティアニーニ（写真中央）は、残り7周でチームメイトのフランチェスコ・バニャイア（写真右）を、残り2周でホルヘ・マルティン（写真左）をそれぞれかわして首位に立ち、リードを一気に広げて今季初優勝を飾りました。なお、表彰台に立った3人が被ったミシュランのキャップは、1980年代〜90年代のデザインを復活させたものでした。
ホンダワークスは、1983年にフレディ・スペンサーによってタイトルを獲得したNS500を彩っていたトリコロールを復活させてグランプリレースに登場。#10 ルカ・マリーニが、ホンダに加入してからの自己ベストとなる15番手でゴールしました。ただし、彼のタイヤ空気圧に規則違反があったことが分かり、最終成績は17位となりました。
ヤマハは、白地に赤のストロボラインが入った往年のワークスカラーでYZR-M1をあしらい、メカニックたちも往年のデザインのオーバーオールを着込んで作業にあたりました。今回のイギリスGPにおけるヤマハは、負傷が治り切らなかったアレックス・リンスが欠場となり、レミー・ガードナー（写真の車両）が代役参戦。グランプリレースではファビオ・クアルタラロが11位でフィニッシュしました。
アプリリアは、1990年代に同社が250ccクラスで最強を誇っていた時代のカラーリングをかなり忠実に蘇らせてグランプリレースに出場。予選でポールポジションを獲得したエスパルガロが、グランプリレースではファステストラップを叩き出す速さを見せました。しかしレース後半でのペースダウンが大きく、6位でのゴールに。グランプリレースのトップ5はドゥカティ勢が占める結果となりました。
今大会では、走行セッションが雨に見舞われることはありませんでしたが、レースウィークを通じて強めの風が吹き、路面温度が短時間のうちに大きく変化する毎日でした。しかし、ミシュランが用意した前後3種類ずつのMICHELIN Power Slickは、こうしたコンディションの変化への柔軟な対応を可能とし、各パートナーチームがアグレッシブにレースを戦うことを支えました。なお、写真のミシュランマンも1980年代のデザインを蘇らせたものです。
