コロナ禍の影響で過去2年は開催されなかったアルゼンチンGPが、ミシュランが大会の冠スポンサーとなって「ミシュラン・グランプリ・オブ・アルゼンチン」の大会名で開催され、Aprilia Racingのアレイシ・エスパルガロがMotoGP初優勝を飾りました。この勝利は、イタリアの名門バイクメーカーであるアプリリアにとってもMotoGPで初めてつかんだ栄光となりました。 今大会では、MotoGPの機材を積んだ輸送機にトラブルが発生し、機材の現地到着が大幅に遅れました。それらの中には、公式タイヤサプライヤーであるミシュランの機材も含まれていました。ミシュランのスタッフたちは金曜日を夜通しで働き、土曜日に集約されたフリープラクティスと予選にすべてを間に合わせ、決勝レースまでを無事に終わらせました。思わぬ多難な一戦となりましたが、レースはトップ6に異なるバイクメーカーのマシンに乗る5名のライダーが入る結果となってミシュランタイヤの偏りのない高性能が示されるなど、ミシュランスタッフたちの不眠の努力が報われました。
兄のアレイシはアプリリアから、弟のポルはホンダから、それぞれワークスチームよりMotoGPに参戦しているエスパルガロ兄弟。アレイシはMotoGPで通算13年目のシーズンを戦うベテランで、昨年のイギリスGPでの3位がこれまでのベストリザルトでした。今大会では走り出しから速く、堂々のポールtoフィニッシュで待望のキャリア初優勝をつかみました。なお、アレイシにとって今大会はMotoGP出場200戦目という節目でした。そして、アプリリアもまた悲願のMotoGP初優勝を手にしました。
ミシュランが大会の冠スポンサーとなった3年ぶりのアルゼンチンGPですが、輸送の問題で機材到着が遅れ、ミシュランのMotoGPチームは金曜日夜通しで作業して、タイヤサービス設備のセットアップと出場全車のホイールへのタイヤの組み付けを行わなければなりませんでした。スタッフたちは作業をやり遂げ、土曜朝からの走行に間に合わせました。
アウトドルモ・テルマス・デ・リオ・オンドはタイヤへの攻撃性が高いサーキットです。そして、決勝レースは路面温度が44℃の高さにまで上がるコンディションとなったことから、全ライダーがフロントにハード仕様、リアにソフト仕様のMICHELIN Power Slickを選択。出場全車が同じタイヤ選択で戦うという希少なレースとなりました。
機材到着の遅れによって金曜日は走行を実施できなくなり、そのため土曜日は、通常は金曜に行われる2回のフリープラクティスとQ1とQ2の予選セッションを一気にこなすというタイトスケジュールに。そうした中での予選でアレイシ・エスパルガロがオールタイムラップレコードに迫るタイムを叩き出して初のポールポジションを獲得しました。
レースはエスパルガロ（写真手前）とプラマック・ドゥカティのホルヘ・マルティン（写真奥）の一騎打ちによるトップ争いが延々と繰り広げられました。レースの大半で前を走ったのはマルティンでしたが、残り周回数が5周になったところでエスパルガロがオーバーテイクを決めて前に。そのままリードをじりじりと広げていきました。
エスパルガロはマルティンの追撃を寄せ付けずに逃げ切って真っ先にチェッカーフラッグを受け、ちょうど200戦目の出場であったMotoGPレースで初優勝を飾りました。これは、MotoGP初年度の2002年からこの最高峰クラスに断続的に挑み、今年から本社直営のワークスチームによる参戦としているアプリリアにとっても初めての勝利でした。
機材輸送の問題から、通常どおりの時間を準備に使えずに迎えた今大会でしたが、予選でアレイシ・エスパルガロがオールタイムラップレコードに匹敵するタイムを記録したほか、決勝レースのトップ6に異なる5つのバイクメーカーのライダーが入るなど、ミシュランタイヤのパフォーマンスの高さと懐の深さは他のレースと同様に披露されました。
