
MOTOGP 2020 ROUND 4
CZECH
■予選:8月8日/決勝:8月9日
■開催地:オートモトドロム・ブルノ(チェコ)
■レース周回数:21周(113.463 km)
悪条件の路面のもとミシュランタイヤが奮闘
ブラッド・ビンダー&KTMがMotoGP初優勝を飾る
2020年MotoGP第4戦の舞台となったチェコのオートモトドロム・ブルノは、路面が古く非常に滑りやすい状態となっていた上に、夏の日差しのもと路面温度が50℃前後の高温となって、タイヤにとって過酷な試練を課すコンディションとなりました。その中で、ミシュランのタイヤテクニシャンたちは各パートナーチームと協力してMotoGP公式タイヤ MICHELIN Power Slickの能力を最大限引き出す努力を傾け、最高峰クラスにふさわしい内容のレースを演出しました。そして、Red Bull KTM Factory Racingのブラッド・ビンダーがこの一戦を制し、MotoGP出場3戦目にして初優勝をマーク。2017年からMotoGPに挑んでいるオーストリアのバイクメーカー KTMとしても初のMotoGP優勝を飾りました。

チェコGP優勝
ブラッド・ビンダー(KTM RC16)
今大会を制したビンダーは、2016年のMoto3クラスチャンピオンで、今年MotoGPクラスにステップアップしたばかりの南アフリカ人ライダー。あと2日で25歳になるというタイミングで、わずか3度目のMotoGPレースにおいて初めての勝利を飾りました。また、2018年最終戦バレンシアGPでのポル・エスパルガロによる3位がこれまでの最上位であったKTMとしては、MotoGP参戦が丸3シーズンと3レースとなったところで悲願の初優勝を達成。同社は、MotoGP公式タイヤサプライヤーとしてのミシュランにとっては5社目の優勝バイクメーカーとなりました。

ディフェンディングチャンピオンであるホンダのマルク・マルケスが3週間前の第2戦スペインGPでの右上腕骨折が癒えず今大会も欠場。その決勝レースの序盤は、ペトロナス・ヤマハのフランコ・モルビデッリとファビオ・クアルタラロ、アプリリアのアレイシ・エスパルガロ、KTMのブラッド・ビンダーとポル・エスパルガロという、新鮮な顔ぶれによるトップグループが形勢されました。特にモルビデッリは好調で、レース前半はライバルたちの追撃を寄せ付けずにトップを走り続けました。

ビンダーはQ1(予選第1セッション)から予選を戦い、Q2(予選第2セッション)に進出すると予選7位を確保。決勝レースでは他のライダーたちよりタイヤをうまく持たせ、13周目にはモルビデッリをかわして首位に浮上しました。そして、じりじりと後続との差を広げていくと、最終的には5.2秒ものマージンを築いてMotoGP初優勝を飾りました。MotoGP出場わずか3戦目での優勝は、2戦目で勝ったマルク・マルケスのものに続く記録。南アフリカ人ライダーが二輪ロードレース最高峰クラスを制したのはこれが初めてのことでした。

先のスペインGPでは5位、アンダルシアGPではマシントラブルに見舞われてリタイア。この2戦の双方で優勝を飾ったチームメイトのファビオ・クアルタラロには差をつけられていたモルビデッリでしたが、今大会では予選で3位につけてフロントロウを獲得すると、決勝のスタートではホールショットを奪取。レース周回数21周の前半13周目までトップを走り続けました。その後モルビデッリは、ビンダーには先行されましたが他のライダーたちはすべて退け、MotoGPでの自己ベストとなる2位を獲得しました。

昨年はKTMのワークスチームに入ったもののシーズン途中で離脱し、今年はドゥカティのサテライトチームであるアビンティア・レーシングからの出場となったジョアン・ザルコ。路面コンディションが悪かった今大会ではタイヤに優しい彼のライディングスタイルが生き、予選では並み居るワークス勢を退けて自身2年ぶりとなるポールポジションを獲得。決勝レースでは3位走行中の10周目に、ポジションを争っていたKTMのポル・エスパルガロと接触し、通常のレーシングラインよりも大回りのラインを通過しなければならないペナルティが課せられましたが、それでも順位を落とすことなく3位でフィニッシュ。2018年マレーシアGP以来の表彰台に上りました。

第2戦スペインGPでの転倒で右肩に骨折などのケガを負ったスズキのアレックス・リンスですが、痛みを堪えながら前戦にも今大会にも出場。特に今大会では、他のライダーたちがタイヤマネージメントに苦戦して後退していった中でポジションを上げていき、最後はわずか0.139秒差で表彰台を逃すことにはなったものの大健闘と言える4位でゴール。ピットに戻った彼を、スズキのチームスタッフたち一人ひとりがいつものレース以上に誉め讚えていました。

12年前に再舗装されたのが最後というブルノの路面は非常に滑りやすく、そしてバンピー。グリップレベルが低いために容易にタイヤが滑り、それだけ早く摩耗が進むという状況でした。加えて、夏の日差しが路面温度を50℃前後という高さとしたことで、ミシュランの二輪モータースポーツマネージャーであるピエロ・タラマッソに「ミシュランが公式タイヤサプライヤーとしてMotoGPに復帰してから最も困難なもののひとつ」と言わせるほどの週末となりました。しかしながら、ミシュランのタイヤテクニシャンたちは担当する各チームのライダーやエンジニアとともに各々の最適なセットアップやタイヤの使い方を探り続け、ミシュランタイヤの底力を発揮させて各パートナーの戦いを支えました。