super gt summary2018 00

SUPER GT 2018総括

SUMMARY REPORT OF MICHELIN IN SUPER GT 2018

異例のシーズン途中での

タイヤの方向性修正を断行

2018年は、ミシュランが2009年にSUPER GTシリーズのGT500クラスへ復帰してからちょうど10年目であったシーズンでした。
この2018年においてミシュランは、日産のワークスチームであるNISMOから出場したNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rと、GT500クラスには新規参戦となったNDDP RACING with B-MAXから出場のNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rという2台の日産 GT-R NISMO GT500にタイヤを供給。No.23 MOTUL AUTECH GT-Rの松田次生/ロニー・クインタレッリのコンビがドライバーランキングで7位となり、計4台がシリーズ参戦した日産 GT-R NISMO GT500勢の中で最上位となる結果を残しました。
これにより、シビアなタイヤ競争が繰り広げられているGT500クラスにおいてGT-R勢の最上位ランキングを8年連続でミシュランユーザーが獲得することになり、ミシュランタイヤの優秀性が改めて示されることになりました。なお、もう一台のミシュランタイヤ装着車であったNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rの本山 哲/千代勝正のコンビはドライバーランキング17位に終わりました。

ミシュランタイヤ装着車 全戦績

この2018年シーズンのSUPER GTにおけるミシュランタイヤの戦いについて、日本ミシュランタイヤの小田島広明モータースポーツダイレクターに振り返ってもらいました。

2018年SUPER GT第5戦 富士

2018年SUPER GT第5戦 富士

日本ミシュランタイヤモータースポーツダイレクター小田島広明(左)と日本ミシュランタイヤ代表取締役社長ポール・ペリニオ

日本ミシュランタイヤモータースポーツダイレクター小田島広明(左)と日本ミシュランタイヤ代表取締役社長ポール・ペリニオ

小田島モータースポーツダイレクターが振り返る

2018年SUPER GTのミシュランタイヤの戦い

「タイヤ競争という観点では、2018年における我々ミシュランの結果は悪いものではなかったと思います。ただ、我々が順調に戦いを進めることができていたのかというと、決してそうではありませんでした」

「我々のタイヤには速さはありました。実際、第2戦の富士では23号車が優勝しましたし、第5戦の富士ではやはり23号車がポールポジションを獲得しました。実は前年(2017年)は予選順位をあまり気にしておらず、決勝レースでの強さをより重視してタイヤを開発していたのですが、やはりもう少し前方のスターティンググリッドを確保できていた方が良いという意見にまとまりました。そこで我々の開発チームは、速さという点でパフォーマンスを上げ、予選順位を上げる、ということを高いプライオリティの課題として2018年のタイヤ開発に取り組みました。そしてオフシーズン中のテストの段階からパフォーマンスの向上を確認していました。一方、デグラデーション(※タイヤの性能低下)の問題はあまり見えませんでした。そうしたことから、『この方向性で良い』と判断した基本仕様のタイヤで2018年シーズンを戦い始めました」

「ところが、いざレースで使ってみると、この基本仕様のタイヤは脆さも持っていたのです。速さは持っているんだけれどもレースに強くない、ということが分かってきた。テストでは出なかったデグラデーションの問題が、レースで出てしまったということなのです」

「それでも第2戦の富士では23号車が優勝したわけですが、第3戦の鈴鹿以降の3戦は完全にデグラデーションの問題によって苦しんだレースとなりました。そして、第5戦の富士の後に、『やはりこれはシーズンの途中ではあっても方向性の修正をしなくてはいけない』という決断を下したのです。もちろんそれは、タイヤを開発する我々ミシュラン側だけで判断したわけでなく、チームであるNISMO側との双方の合意のもとでのことです。『このままの状態ではこの先ない、この先もっと厳しくなっていくだろう。だから、シーズン中でリスクはあるけれども、少しでも早い段階で修正をしていこう』ということで決断しました。『ここで切り替えなかったら、2019年に向けてオフシーズン中にその問題を解決するには時間が足りないかもしれない』という懸念もありましたから」

2018年SUPER GT第5戦 富士

2018年SUPER GT第5戦 富士

2018年SUPER GT最終戦 もてぎ

2018年SUPER GT最終戦 もてぎ

「そして第6戦の菅生から、シーズン中のものとしてはイレギュラーな度合いでベクトルを変えたタイヤを投入しました。そして、ウェイトハンディが70kgだった23号車が決勝で7位に入りました。新しい方向性のタイヤは速さという点では若干影を潜めたところがあって、菅生での23号車は予選では12位だったのですが、レースでは良好なペースで安定して走って7位まで追い上げてくれました。それなりの重さのハンディを抱えながらもちゃんとレースができたということで、レースでの強さは少し取り戻せてきたように思いました」

「最終戦のもてぎは、2018年の中では一番まとまったレースでした。タイヤに関しては、速さとデグラデーションのバランスが良いレベルで取れていたと思います。速さに関しても、あのときQ1(予選第1セッション)を突破できたGT-Rは我々のタイヤを履いた3号車だけでしたし。23号車にはちょっとトラブルがあったのでQ1突破にわずかに届きませんでしたが、決勝での23号車は安定して走ってGT-R勢最上位の7位でフィニッシュしました。あのレースでタイヤについては何の問題もありませんでしたし、あのレースで使ったタイヤの方向性で2019年に向けて進んでいっても大丈夫と確認することができました」

「それにしても、SUPER GTのタイヤ競争というのはシビアです。2018年の我々はデグラデーションの問題に直面しましたが、性能低下が出てきた状態のタイヤでもラップタイムは過去のものに比べて十分速いんです。でもライバルも速くなっているわけで、そこでデグラデーションを出してタイムを落としていては勝負にならない、ということなのです。それから、2018年のことを総じて言えば、『タイヤに速さはあったものの、デグラデーションの問題があったために方向性を変えた』となるのかもしれませんが、実際にはデグラデーションについては毎レースそれぞれ異なる理由や要因がありました。そうした中で我々はいろいろ試行錯誤し、少しずつ前へ進んできた、というわけなのです」

GT500復帰から10年。そして8年連続で

GT-R勢最上位をミシュランユーザーが獲得

2018年はミシュランがGT500クラスに復帰して10年目のシーズンでした。
「この10年は、2つのフェーズに大きく分けることができます」と小田島ダイレクターは言います。

「フェーズ1は参戦開始(2009年)の準備段階から初めてのチャンピオンを獲った2011年まで。1年目の2009年は勉強、2年目の2010年は勉強しつつも少なくともひとつは勝ちを挙げる、そして3年目の2011年にはチャンピオンを獲る、というターゲットを最初に作り、一応そのとおりにできました」

2009年 HASEMI TOMICA EBBRO GT-R(ロニー・クインタレッリ/安田裕信)

2009年 HASEMI TOMICA EBBRO GT-R(ロニー・クインタレッリ/安田裕信)

2011年 S Road MOLA GT-R(柳田真孝/ロニー・クインタレッリ)

2011年 S Road MOLA GT-R(柳田真孝/ロニー・クインタレッリ)

「GT500は、2014年から新しいレギュレーションのクルマに変わりました。そこからがフェーズ2ですね。新しいクルマでは、タイヤのサイズが小さくなり、空力も変わって、タイヤに求められるものが以前のクルマよりはるかに厳しくなりました。我々ミシュランは、新しい技術や新しい手法を投入して対応していったのですが、そこで開発課題としてとりわけ重視したのはタイヤの安全性を担保することでした。もちろんそれまでもそうだったのですが、あのときはクルマの変化が本当に大きく、安全性を担保することがものすごくシビアな状況になっていました。実際、レース中の車両がタイヤの破損に見舞われるシーンを何度も目にしました。その中で我々ミシュランは、厳しい条件のもとながらも安全性の確保にものすごく力を入れました。タイヤとしても変更しましたし、ホイールメーカーさんにも協力してもらいました。そうしたことが結果的に、レースに強いタイヤ、レースにおける役割を果たし得るタイヤを生み出すことになりました」

「クルマの基本的な形は変わっていませんが、2017年から空力についてのレギュレーションが変更になり、それにともなって車両がまた変わりました。そこでタイヤに求められるものもまた少し変わり、味付けも変わって、そして今日に至るまで変化し進歩し続けている、というところです」

2018年SUPER GT第7戦 オートポリス

2018年SUPER GT第7戦 オートポリス

2018年SUPER GT第5戦 富士

2018年SUPER GT第5戦 富士

「SUPER GTは、タイヤメーカーが競争し合うことができる唯一のレースカテゴリーです。そして、いろいろな規制が入ってきていながらも、GT500は他のカテゴリーのGTカーより明らかに速いクルマであり続けています。タイヤに要求されるものは本当にシビアで、いわば極限の実験の場です。したがってミシュランとしては、ライバルメーカーとの競争に加えて、タイヤメーカーとしてチャレンジしていくには恰好のフィールドとSUPER GTを捉えています」

「これまでGT500クラスで10年続けてやってきたことで得られた大きな成果のひとつは、日産のワークスチームであるNISMOチームとの深いパートナーシップです。たとえば2018年のように何か問題を抱えたとき、単なるタイヤサプライヤーであったら『タイヤが悪い』と一方的に言われて終わりかもしれません。でも、現在のNISMOと我々は、『じゃあ、どうすればそのタイヤを生かせるか?』というレベルで協議を行います。クルマとタイヤ、双方の開発をする人と人とのつながりというのが、『どうすれば良いか?』というところまでお互いに踏み込める関係にまでなっている。そのあたりなどは、この10年で築いた大きな財産ですね」

「ミシュランのポリシーに、『仮にどんなに素晴らしい技術であっても、ユーザーが価値を認めてくれなければその技術には価値がない』というものがあります。『タイヤはクルマに合わせて作っていくもの』という考えですね。つまり、クルマを作る側とのパートナーシップというものが非常に大事なわけです。それはモータースポーツでも同じことで、その実践の一例がSUPER GTにおける我々とNISMOの関係にあるわけです」

「それにしても、2018年は久しぶりにチャンピオン争いの権利を失った状態で最終戦を迎えたシーズンになってしまいました。それはやっぱり寂しいことでした(苦笑)。もちろん我々が一番重視するのはタイヤメーカーの競争に勝つことで、2019年の目標はGT-R勢の最上位を引き続き獲得することです。でも、やっぱり勝ちたいなと(笑)。スポーツなので。そういう意味でも、パートナーチームのチャンピオン獲得に貢献できるように2019年も頑張ります」

You are using an unsupported web browser
本ウェブサイトではサポートされていないウェブブラウザをお使いのようです。一部の機能が正常に作動しない場合があります。閲覧中に動作が不安定になる場合があります。このウェブサイトを最大限活用していただくため、以下のブラウザのいずれかを使用していただくか、アップグレードまたはインストールしてください