WRC 2018 ROUND 6
PORTUGAL
■5月17日〜20日
■開催国:ポルトガル
■ステージ路面:グラベル
リタイア続出の大荒れの一戦を
ヒュンダイのヌービルが制す
2018年のラリー・ポルトガルは何人ものトップドライバーがクラッシュを喫してリタイアするサバイバル戦となりました。かつてのアクロポリス・ラリーのようなラフなグラベルイベントを想起させる荒れた展開となった中で優勝を飾ったのはヒュンダイのティエリー・ヌービル。抑えるべきところは抑え、攻めるべきところでは圧倒的なタイムを叩き出す見事な戦いぶりで今季2勝目を挙げ、今大会では総合21位に終わったセバスチャン・オジェをシリーズポイントで逆転し新たなポイントリーダーとなりました。
ハイライト
Highlights - 2018 WRC Rally de Portugal - Michelin Motorsport
Day 1 - Top Moments - 2018 WRC Rally de Portugal - Michelin Motorsport
Day 2 - Top Moments - 2018 WRC Rally de Portugal - Michelin Motorsport
Shakedown - 2018 WRC Rally de Portugal - Michelin Motorsport
ギャラリー
ラリー・ポルトガル総合優勝
ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ i20クーペ WRC)
1台1台の単独走行によるタイムアタックを繰り返して競い合うラリー競技では、走行時にはライバルが直接見えないだけに、コースが荒れている場合でもどれ だけペースを抑えるのが果たして適切なのか判断が非常に難しいものがあります。しかし、今大会におけるヌービルはその見極めが実に見事でした。また、ソフ トコンパウンドとハードコンパウンドの2種類のミシュランタイヤの使い方にも優れており、彼の能力に対する評価を一段と高めた一戦となりました。
ミシュランのラリー活動のマネージャーを務めてきたジャック・モレリ(写真前列中央)が先のラリー・アルゼンチンをもって勇退。今回のラリー・ポルトガルのスタート前にはトップドライバーが一堂に会して、彼の貢献を称えるセレモニーが行われました。今大会にはゲストとして招かれ私服で登場したモレリは、1970年代末からミシュランのモータースポーツ活動のために献身的に働き、1990年代には二輪世界グランプリロードレースにおけるタイヤ供給活動の責任者を務めました。2011年以降のWRCにおけるミシュランの公式タイヤサプライヤー活動を束ねてきたのも彼でした。そして今大会からその役はアルノー・レミーが務めます。
ポルトガル第2の都市 ポルトを中心としたポルト地方で今年も開催されたラリー・ポルトガル。その最初のステージは、同ラリーの名物ステージでもあるロウサダ・ラリークロスサーキットでのスーパーSS。3万5000人を超える大観衆が詰めかけました。
オープニングステージであるスーパーSSでトップタイムを叩き出したのは、前戦ラリー・アルゼンチンの優勝者であるトヨタのオット・タナクでした。ところが彼は、明くる日の最初のステージであったSS2において、前走車により走行ライン上に掻き出されていた岩に乗り上げ、結果的にはエンジンまでダメージを受ける事態に見舞われて、あえなくリタイアに。続くSS3では、チームメイトのヤリ‐マティ・ラトバラも岩によってサスペンションを破損させてストップ。トヨタにとって今回は困難な週末となりました。
路面の掃除役となる1番手走者を今回も引き受けたMスポーツ・フォードのセバスチャン・オジェは、ハンディを跳ねのけるべく限界ぎりぎりのドライビングを展開。SS4を終えたところで4位という好位置につけてみせました。しかし、SS5で乗り上げたイン側の土手に木の切り株が潜んでおり、それに前輪がぶつかったことでオジェのフォード・フィエスタWRCはステアリングが破壊されてコントロール不能に。無念のデイリタイアを喫したオジェは明くるデイ3からラリーに再出走しましたが、21位・ノーポイントでのフィニッシュとなりました。
第2戦ラリー・スウェーデン以来のWRC出場となったヒュンダイのヘイデン・パッドンは、遅い出走順であったために条件の良い路面を走ることができたことに後押しされ、ラリー序盤からトップ争いを展開。SS6を終えたところでラリーリーダーとなりました。ところが、続くSS7で路面に転がり出ていた岩を避けようとしたパッドンのヒュンダイi20クーペWRCはコース外側の溝に落ち、土手に車体を激突させる格好になってリタイアとなりました。なお、パッドンとコ・ドライバーのセバスチャン・マーシャルには幸い大事はありませんでした。
シトロエンのクリス・ミークは今回も出入りが激しいラリーを戦いました。ラリー序盤は好調な走りを見せ、SS5を終えたところでトップに立ちましたが、続くSS6で左リアタイヤをパンクさせて5位に後退。続くSS7では今度は左フロントタイヤをパンクさせ、デイ2終了時には7位となりました。明くるデイ3でミークは追い上げを図りましたが、SS12でコースアウトを喫して立ち木に激突。幸いにもミークと彼のコ・ドライバーであるポール・ナグルは無事でしたが、彼らのラリー・ポルトガルはここで終了となりました。
緩急をつけた見事な内容で第2戦ラリー・スウェーデンに続く今季2勝目を飾ったヌービル。オジェがノーポイントに終わったこともあり、一気に19ポイントものリードを得ながらランキングトップに浮上しました。
チームのエースドライバーであるオジェが早い段階で勝機を失ってしまった今大会でしたが、セカンドドライバーのエルフィン・エバンスが堅調な戦いぶりを見せて2位でフィニッシュ。また、ワールドラリーカーでは今年4戦目の出場であった24歳のティーム・スンニネンが自己ベストとなる3位で走り切り、Mスポーツ・フォードの若手たちが大荒れの一戦で表彰台の2つのポジションを占める結果となりました。
今大会はスペシャルステージによって路面の荒れ方やタイヤへの攻撃性が異なる難しいラリーでした。トップドライバーたちはハードコンパウンドの MICHELIN LTX Force H4とソフトコンパウンドのMICHELIN LTX Force S5(ともにサイズは205/65R15)の双方を数本ずつ携えてサービスを離れ(※1台の車両が一度に持てるタイヤの数は、車両装着4本+車載スペア2本まで)、4つの車輪のどれにどのタイプのタイヤを使うかをステージによって変えていくという戦いを強いられましたが、彼らの期待にミシュランタイヤは足元から応え続けました。