世界屈指の高速コースとして知られるイタリアのイモラ・サーキットでFIA世界耐久選手権（WEC）のレースが初めて開催され、マイク・コンウェイ／小林可夢偉／ニック・デ・フリース組のNo.7 トヨタ GR010ハイブリッドが今季初優勝を飾りました。2024年シーズンのWEC第２戦として催された今大会は、6時間の決勝レース中に天候が大きく変化するものとなりましたが、これに最も的確な対応を見せたのがトヨタGAZOOレーシングでした。また、この週末はミシュランの事前の予測を大きく下回る気温／路面温度で推移しましたが、それでもミシュランのWEC用レーシングタイヤは高いパフォーマンスを存分に発揮。極めて幅広い温度レンジに対応するミシュランタイヤの能力に各パートナーチームのドライバーたちは厚い信頼を寄せ続け、全力で今大会を戦い抜きました。
6時間レースが折り返し点を過ぎたあたりからサーキットは雨の影響を受け始めましたが、この時点では大半の車両はスリックタイヤでの走行を継続しました。そして、その後に入ったセーフティカーが退いたところで、No.7 トヨタ GR010ハイブリッドはピットに入ってレインタイヤにスイッチ。スリックタイヤでコースに留まり続けた3台のフェラーリ 499PやNo.5 ポルシェ 963に対して大きなアドバンテージを手にしました。その後、路面は乾いていき、レースの最後の1時間は各車スリックタイヤに履き替えての戦いになりましたが、No.7 トヨタは小林可夢偉の力走でNo.6 ポルシェの追撃を退け、会心の勝利をつかみました。
ミシュランはWEC用レーシングタイヤにおいて、種類に応じて色が異なるカラーバンドをサイドウォールに施す処理を今大会から導入しました。この色分けでは、ホワイトがソフト、イエローがミディアム、レッドがハードのスリックタイヤであることを、そしてブルーがレインタイヤであることを示しています。
6時間レースの折り返し過ぎに降雨がありましたが、レース前半の3時間のうちに路面温度は35℃から16℃へと低下していました。しかし、ミディアムコンパウンドのミシュランタイヤはこの大幅な温度変化に対応。路面温度がスタート時より20℃近くも下がった中でも、高いグリップ性能と耐摩耗性能を発揮し続けました。
トヨタ GR010ハイブリッドは、フェラーリ 499Pやポルシェ 963に対してスピードでは一歩劣るところが今大会においてもありましたが、決勝では予選よりずっと競争力を上げてきていました。そして、最も適切なタイミングでタイヤ交換を行い、最後はドライバーが踏ん張って、チャンピオンチームらしい強さを示しました。
開幕戦カタールでWEC初優勝を飾ったポルシェ 963は、今大会でも終始優勝争いを演じ、6号車のケヴァン・ウストル／アンドレ・ロッテラー／ロウランス・ヴァントール組が2位に。開幕戦ウィナーの彼らはこれで2戦連続の表彰台獲得で、ランキング首位に立つドライバー選手権でのリードを広げることになりました。
母国レースを迎えて気合いがひときわ入っていたフェラーリ陣営。開幕戦カタールでは不振だった499Pはスピードを取り戻し、予選ではトップ3を独占しました。決勝でも多くの周回で首位を走りましたが、レインタイヤへの切り替えが後れてタイムロスを喫し、50号車の4位が最上位という不本意な結果に終わりました。
No.50 フェラーリ 499Pは、レースの60％を超える129周、つまり632kmもの距離を、1セットのミシュランタイヤで走りました。その大半で同車は首位を走行しており、世界最高峰の耐久レースのハイペースを支えながら傑出した耐久性能を発揮する、ミシュランタイヤの能力の高さが示された事例となりました。
