二輪ロードレースの世界最高峰シリーズであるMotoGPの2021年シーズン第11戦オーストリアGPは、レース終盤に雨脚が強まり、大半のライダーがピットストップを行ってレインタイヤを履いたスペアバイクに乗り換える状況に。そうした中、スリックタイヤのまま走り続けることを選んだRed Bull KTM Factory Racingのブラッド・ビンダーがウェット路面を5周にわたってスリックで走る困難を乗り切り、MotoGP通算2勝目をつかみ取りました。また、今大会では電動バイクの世界最高峰レースシリーズであるFIM Enel MotoE World Cupの第5戦も開催され、Tech3 E-Racingのルーカス・チュロビクが初優勝を飾りました。
28周のレースも残り5周となったあたりで、かろうじて持ちこたえていた空模様が崩れて雨粒を切れ目なく降らせるようになりました。それでもスリックタイヤのままでゴールを目指すことを選択したビンダーは、直線区間に入っても全開にすることができないほどコントロールが難しくなった状況の中をレインタイヤ勢と遜色ないラップタイムで走り続け、昨シーズンの第3戦チェコGPに続くMotoGP通算2勝目をもぎ取りました。
開催地にちなんで用意されたオリジナルのチロリアンハットを被ってタイヤのフィッティング作業にあたるミシュランのサービススタッフたち。レッドブルリンクで2週連続開催となったMotoGPの2戦目であった今大会ですが、ミシュランは計6種類のうち1種類のタイヤの仕様を前戦から変更し、コンディションにより適したタイヤ配備として臨みました。
ドライコンディションに恵まれた予選では、同じコースで前週に行われたスティリアGPの勝者であるPramac Racingのホルヘ・マルティンが、彼自身が1週間前に刻んだオールタイムラップレコードをさらに塗り替える新コースレコードをマーク。ヤマハワークスのファビオ・クアルタラロも前週のマルティンのレコードタイムを上回るスピードを見せました。
雨粒は落ちてはいましたが路面を濡らすほどではなく、全車がスリックタイヤを履いて決勝レースをスタート。その序盤は#63 フランチェスコ・バニャイアがトップに立つも抜け出すことはできず、#5 ジョアン・ザルコ、#93 マルク・マルケス、#20 ファビオ・クアルタラロ、#89 マルティンらが抜きつ抜かれつの激しいバトルを延々と繰り広げました。
雨脚が明らかに強まった中でもビンダー（写真右）は勇敢にして繊細なライディングをもってスリックタイヤとは思えぬペースで走り続け、優勝という結果につなげました。写真でビンダーを称えているのはマルティンで、彼はレインタイヤ装着のスペアバイクへの乗り換えを選択。最後の2周で10台ほどを一気に抜き去って3位でフィニッシュしました。
MotoE第5戦は、21歳のドイツ人ライダーのルーカス・チュロビクが初優勝をマークしました。2位には25歳のブラジル人ライダーのエリク・グラナドが入りましたが、彼は4周目にMotoEの新コースレコードを樹立。サステナブルな材料を大幅に使用していてもパフォーマンスに妥協はないミシュランタイヤの哲学が端的に示された記録となりました。
前戦に続いてタイヤに厳しいレッドブルリンクでの開催であった今大会ですが、オールタイムラップレコードが2週連続で更新されました。また、予選の上位8位までのライダーが昨年大会のポールポジションタイムを上回り、ミシュランのMotoGP公式タイヤが特定のマシンやライダーへの偏りなく総じてパフォーマンスを上げていることが示されました。
