今シーズンのMotoGPでは唯一の北米開催ラウンドとなるアメリカズGPが行われ、スズキのアレックス・リンスがヤマハのバレンティーノ・ロッシとのレース終盤の攻防を制してMotoGP参戦3年目にして初の優勝を飾りました。リンスの優勝タイムは従来の最高記録を約7秒も短縮するもので、マシンとともにミシュランMotoGP公式タイヤの進化が端的に示された一戦となりました。
予選は7位にとどまり、3列目のグリッドからのスタートとなったリンスでしたが、好タイムを安定的に並べてポジションを着実に上げていき、残り4周というところでバレンティーノ・ロッシをかわして首位に浮上。最高峰クラスの王座に就くこと9回を誇る帝王ロッシによる追撃を23歳のリンスは見事に振り切り、MotoGP参戦3年目・出走32戦目にして初の優勝をもぎ取りました。
今大会が開催されたテキサス州のサーキット・オブ・ジ・アメリカズは、コースの路面が非常にバンピーで、タイヤへの攻撃性がとても高いことで知られています。また、左コーナーと右コーナーの数はほぼ同じですが（左が9カ所、右が11カ所）、ターン16からターン18にかけて右旋回が続くセクションでタイヤにかかる負荷が非常に高いことなどから、ミシュランはリア用のスリックタイヤとレインタイヤの全種類については右側ショルダー部により固めのコンパウンドを使った左右非対称設計として持ち込みました。
レース序盤を支配したのは、このサーキットでこれまでに6回開催されたMotoGPレースで全勝を誇るホンダのマルク・マルケスでした。今大会でもポールポジションをさらうと、スタートではホールショットを奪い、ファステストラップを繰り返し更新しながら後続を引き離していきました。ところが、レースがやがて折り返しを迎えようという9周目にマルケスはリアを滑らせて転倒。あっけなくリタイアに追い込まれたのでした。
マルケスのリタイア後に首位を走ったのはヤマハのバレンティーノ・ロッシでしたが、彼の背後にスズキのアレックス・リンスが迫っていき、17周目にオーバーテイク。ロッシはすぐに反撃してきましたが、リンスは帝王のプレッシャーに屈することなく逃げ切って優勝。オフシーズン中のテストから好調ぶりが明らかであったものの開幕2戦は物足りない結果に終わっていたスズキが、2016年9月のイギリスGP以来となる待望の勝利を手にしました。
マルケスのリタイア後、8周にわたって首位を突っ走ったロッシ。今回、優勝はかないませんでしたが、前戦アルゼンチンGPに続いて2位表彰台を獲得し、ライダー選手権では首位とわずか3点差のランキング2位に。40歳を迎えても誰より闘争心を燃やし、鋭いライディングを披露し続ける史上最多勝ライダーへの評価が改めて高まった今シーズンの序盤戦となりました。
今大会においてもドゥカティ勢は他メーカーの車両より1ランク柔らかめのタイヤを使うことが可能で、サテライトチームであるプラマック・レーシングから出場のジャック・ミラーは前後ともにソフトタイヤを使用して3位でフィニッシュ。前戦アルゼンチンGPでの4位をさらに上回って表彰台に上り、今大会ではドゥカティ勢最上位の結果を挙げてみせました。
タイヤに厳しいサーキット・オブ・ジ・アメリカズでしたが、アレックス・リンスは従来の最高記録を約7秒も短縮するレースタイムで優勝。表彰台には3つの異なるバイクメーカーのマシンに乗るライダーたちが並び、どのマシンに装着されても高いパフォーマンスを発揮するミシュランタイヤの優秀性が鮮やかに描き出された結果となりました。
