
サウナ&ターフの聖地を巡る
非日常のグランドツーリングへ
【vol.02 神戸~瀬戸大橋~今治編】
神戸エリアで働くビジネスマンやサウナ好きは、なんて幸せなのだろう。そんな風に感じたのは、都会のど真ん中にある「神戸サウナ&スパ」の“ととのい具合”が、ウワサ以上だったからだ。
サウナ小屋を含む2種類のロウリュ付きサウナをはじめ、塩サウナ、ハマーム(岩盤浴)、11.7℃のキンキンorマイルドな温度設定の水風呂、ハンガリアンバス、ジャグジー、露天風呂、木製チェアを備えたととのいスペースなどなど、同施設には無いものが無い。
あちこちで言われていることだけれど、無いものは館内着のポケットだけで、それもゲストが忘れ物をしないようにという配慮から、あえてポケット無しとしているのだ。
また、優秀な秘書やゴルフのキャディーのように、ゲストを“先回り”した気遣いの数々も、大きな魅力のひとつ。ちなみに、11.7℃という水風呂の温度には、1995年1月17日に発生した阪神大震災の記憶を風化してはならないという想いが込められている。
満ち足りた気分でととのった後は、三宮高架下の飲み屋街で一期一会を楽しみ、いつもより深い眠りについた。
2022年7月にリニューアルしたサウナ小屋は、木材の宝石とも言われる香り豊かな高級木材「ケロ材」をはじめ、低めの天井や静かに灯る照明などによって、ゆっくりと瞑想できる空間に。サウナを出た後は、バケツシャワーの取っ手を引いて、頭のてっぺんから豪快に汗を洗い流したい。
降り積もった雪のように、天然塩がたっぷりと敷き詰められている塩サウナで、全身をツルツルすべすべに。塩サウナで蒸し上がった後、出口のドアを開けて進むと、塩や汗を洗い流すシャワーが自動的に出てくる。こうした気の利いた仕掛けが嬉しい。
様々な“ソロ活”を楽しむ人が増えている昨今、ゴルフ業界ではとうの昔から“1人予約”というシステムが確立している。ウェブなどを経由して各自で予約し、当日に初めて顔を合わせたメンバーでラウンドするのだ。
今回は、神戸近郊にお住いの30代から60代の方々とご一緒することに。「東京からクルマで来て、四国から宮崎へ向かう」と伝えると、一様に驚いた表情を浮かべていたが、終始なごやかな雰囲気の中でゴルフを楽しむことができた。共通の趣味は、初対面という垣根を軽々と飛び越える。
本州と四国を結ぶルートは、淡路島を経由する明石海峡大橋~大鳴門橋、瀬戸大橋、瀬戸内しまなみ海道の3つで、それぞれが魅力にあふれた道のりだ。グーグルマップで検索すると、ゴルフ場から3日目の宿である「ゴールデンタイム高松」までは、明石海峡大橋ルートなら2時間28分(197km)、瀬戸大橋ルートなら2時間54分(220km)と表示された。
普段であれば最短ルートを選ぶところだが、特に先を急ぐ必要もない一人旅。今回は、本州と四国を初めて陸路で結んだ偉業に敬意を表し、あえて瀬戸大橋ルートを選んだ。
ミシュランタイヤに共通する特徴は、履き始めから摩耗末期まで続く、快適性と安心感。ゴルフやサーフィン、ウインタースポーツなどを趣味とし、日常的にロングドライブする人との相性もバツグンだ。
1988年(昭和63年)に全線開通した瀬戸大橋は、岡山の倉敷市と香川の坂出市を結ぶ10の橋の総称。2015年には、世界一長い鉄道道路併用橋として、ギネス世界記録に認定されている。
3日目の宿に選んだ「ゴールデンタイム高松」は、男性専用サウナではあるものの、その完成度は驚くほどに高かった。詳しくは別の機会に譲るが、こだわり派のサウナ好きも満足できる施設であると断言できる。また、「鶴丸」のカレーうどんも絶品で、どんぶりの底が見えるまで飲み干してしまったことを書き記しておきたい。
4日目は、うどん県・香川を後にして、みかんの国・愛媛へ。サイクリストの聖地として全国にその名を轟かせている、瀬戸内しまなみ海道方面へとプジョーを走らせる。
愛媛の今治市もしくは広島の尾道市からアクセスする瀬戸内しまなみ海道は、6つの島を7つの橋で結んだ“海峡を横断できる道”。自動車道だけでなくサイクリングロードも整備され、瀬戸内海に浮かぶ島々や爽やかな海風を感じながら、移動の楽しさを満喫できる。
ランチは、今治市のオーシャンビューカフェ「Ondata Coffee(オンダータ コーヒー)」へと足を運んでみた。サーファーズハウスのような佇まいに惹かれて入店したものの、この日の男性客はたまたま筆者のみ。少しばかり肩身の狭い思いをしているところに、幸運の使者が救いの手を差し伸べてくれた。なんと目の前のビーチに、ウミガメが現れたのだ。キュートかつ神秘的なその姿に、心がほっこりと温まった。
ストレスを与えないようにそっと近づき、釣り糸などが絡まっていたり、怪我をしていないかを確認した後、無事に海へと帰っていく様子を見届けることができた。
看板メニューのひとつである「ど海老カレー(サラダ付き)」と「自家製ジンジャーエール」をオーダー。ココナッツミルクベースのマイルドかつスパイシーなルーは、じゅわっと溢れだす海老の旨みと絶妙にマッチする。
瀬戸内しまなみ海道のサイクリングロードは、片道で全長70kmほど。せとうちの自然と建造物が織りなす絶景にココロは高揚し、気軽に立ち寄れる「サイクルオアシス」なども整備されているとはいえ、道のりとしてはなかなかにタフだ。走り切る頃には、太ももやふくらはぎ、お尻、腕など、全身が癒しを求めていることだろう。
東京からプジョーで1,361km走ってきた筆者は、サウナの聖地を巡ってきた効能なのか、「MICHELIN PRIMACY 4+(ミシュラン プライマシー フォープラス)」が生み出すしなやかな乗り味のおかげなのか、不思議なほどに疲れを感じていなかった。とはいえ、これからの旅程や宮崎での3日間におよぶゴルフ合宿を思うと、心身のコンディションをベストな状態にととのえておきたい。
というわけで、4日目の宿には、サイクリスト御用達の湯治場「しまなみ温泉 喜助の湯」を選んだ。「風神サウナ」や「みかんサウナ」でカラダを蒸しあげ、「桶シャワー」で豪快に冷やした後に向かった先は、休憩用の“ととのいイス”ではなく、ぬるめの温度に設定された高濃度の炭酸風呂だ。
イラストレーターのNAGA氏が描いた温泉壁画、「もし江戸時代が令和まで続いていたら」を眺めながら炭酸風呂に浸かっていると、いつもとは少し趣きの違うととのいを迎えることができた。明日はいよいよ、四国から九州へとフェリーで渡る。
テクノロジーが発展した現代に、江戸時代の文化が残っていたら……。そんな妄想から生まれた温泉壁画では、スマホやロードバイクといった現代のアイテムを使いこなしている江戸人たちの姿が、活き活きと描かれている。
3Fの「喜助の宿」は、明るくオシャレな設えやプレミアムラウンジなどによって、ドミトリータイプとしては望外の居心地の良さを実現している。もちろん宿泊ゲストは、「温泉・サウナ」を何度でも利用できる。※深夜0時~6時までは浴室清掃のため利用不可
【vol.01 東京~箱根~静岡~琵琶湖編】を読む
【vol.03 佐田岬~大分~宮崎~熊本編】を読む
愛車の「プジョー 308SW」はカーナビを装着していないため、ルートガイドはもっぱらスマホ上のグーグルマップを利用。ご存じの方はご存じのように、時にはトリッキーなルートを提案することもあるグーグルマップだが、軽快な操作感や素早いレスポンス、リアルタイムの交通情報を反映したルートなど、その有用性はかなり高い。今回の旅でも、頼れる執事になってくれた。この区間の走行距離は426kmで、メーター表示の燃費は19.2km/Lだった。
2024年1月19日掲載(取材日:2023年7月31日~8月2日)
※掲載内容は取材時の情報です。
企画構成・文・写真/のぐち まさひろ
取材協力/神戸スパ&サウナ(http://www.kobe-sauna.co.jp/)、Ondata Coffee(https://www.instagram.com/ondata_coffee/)、しまなみ温泉 喜助の湯(https://www.kisuke.com/yu-imabari/)