miniで琵琶湖を走る

ノーマもジョブズも愛した禅寺 名古屋から福井、大本山永平寺への道

ニューノーマルの時代になり、旅のスタイルにも一部で変化が起きている。ただ遊ぶだけではなく、仕事と旅を重ねるワーケーションや、自分自身と向き合う時間を得るために旅を選ぶ人も増えてきた。そんな中、旅先として注目を集めているのが日本のお寺だ。今回はそんなお寺の中でも禅寺として特に知られ、ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン二つ星の福井県・大本山永平寺へ名古屋から車で向かう。
MEM  バナー 「ミシュランニュースレターに登録」
今回の地図

※「ミシュランガイド」掲載飲食店/宿泊施設(赤字)と外国人観光ガイド「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」掲載地(緑字)が全てイラスト上に記載されているわけではありません。

「では参りましょう」 

尼僧さんの言葉と共に、私たちは永平寺の門前にある宿坊旅館「柏樹関」(はくじゅかん)の扉から外へ出た。9月初旬、午前4時50分。夜は明け切れておらず、生暖かい風が身体を包む。闇の中、その風で揺れる葉音が耳をたたく。永平寺の「朝のお勤め」に参加するのは、私たちのほかは母娘連れ、単身の女性、そして夫婦の4組。歩きながら空を見上げると、月明かりで雲の輪郭が銀色に輝き、その遠くには星々が輝いていた。少しだけ月に照らされた薄闇の中、参道と並ぶように流れる永平寺川のせせらぎと、鈴虫の鳴き声、そして時折吹く生暖かい風による葉音を聞きながら、お寺へと歩いて行く——。 

* * * 

話は前日に戻る。私たちは愛知県名古屋市から福井県の曹洞宗大本山永平寺へ向かおうとしていた。友人と二人、ワーケーションとして近場の旅先を探していたのだ。永平寺は約770年以上前に鎌倉時代初期の禅僧、道元によって開かれた道場で、禅宗の中でも修行は特に厳しいと言われる。ここでは宿坊旅館もあり座禅などの体験もできるという。 

出発にあたり、まずは腹ごしらえをと昼食に選んだのは味噌煮込みうどん専門の「山本屋本店 大門本店」。『ミシュランガイド 愛知・岐阜・三重2019特別版』に掲載された同店は、明治40年創業、土鍋で直に煮る昔ながらの作り方にこだわる。 

 

ミシュランガイド

「ミシュランガイド 愛知・岐阜・三重2019特別版」と共にドライブ 

山本屋本店の味噌煮込みうどん

古くはすまし汁の中に生のままのうどんと具材を入れて煮込む家庭料理で、そこに赤味噌を使って味噌煮込みうどんにしたところ人気に。 

mini cooper

旅のパートナーはMINI Cooper D 3 Door 

山本屋本店の味噌煮込みうどんの食べ方

土鍋は三重県伊賀の窯元で専用に焼いておりお皿代わりに使うためふたに湯気抜きの穴がない。

一つひとつ手作りのため注文をしてから少しだけ待つ。この時間がたまらない。「おまちどうさま」の声と共に、ぐつぐつと煮え上がる鍋がやってくる。アツアツのうどんを箸ですくい上げ、鍋蓋に載せて食べるのが山本屋本店流。これで少し冷ますことができる。職人が毎日手打ちをした麺と、アジ節や宗田鰹の鰹だしと味噌が絡み合う。 

「鍋で直接煮るので、少し固く感じるかもしれませんが、これがいわばアルデンテで味噌の味としっかり合うんです」と話すのは中島店長。各店舗でそれぞれ出汁からとっており、口にすると出汁と味噌の旨味がじゅわっと広がる。これがアルデンテのうどんに合うのだ。すするというより噛むに近い。

山本屋本店

山本屋本店 大門本店 
「ミシュランガイド 愛知・岐阜・三重2019特別版」に掲載 
住所:愛知県名古屋市中村区太閤通6-5 
TEL:052-482-2428
Web:公式サイト  

ランチに満足した私たちはMINI Cooper D 3 Doorに乗って、少し寄り道をしながら永平寺へ向かう。MINIは小さなボディーでありながら力強い走りが魅力。軽快で流れるようなフィーリングのおかげで、遠乗りでも苦にならない。アクティブな女性にもお勧めしたい。最初の寄り道先は滋賀県の長浜ICを降りてすぐの琵琶湖。晴れ渡る空の下、琵琶湖の横を走るのは気持ちがいい。タイヤはMICHELIN PRIMACY 4で、応答性が穏やかで正確な印象。琵琶湖沿いの道のワインディングも滑らかに走ることができる。まろやかでありながら安定感のあるしっかりした走りなので疲れずに長距離ドライブが楽しめるのだ。また高い静粛性で運転中のおしゃべりでも、音楽をかけている時でも邪魔にならない。 

琵琶湖をminiでドライブ

琵琶湖沿いのドライブは湖からの風もあって気持ちが良い。 

ミシュランタイヤのmichelin primacy 4

MICHELIN PRIMACY 4を装着しての旅だ。 

長浜ICから北陸道で福井の景勝地、東尋坊へも足を運ぶ。冬でこそ、日本海の寒々しい雰囲気があるかもしれないが夏、秋は多くの観光客で賑わう。丸岡ICから東尋坊までの道のりは平べったい田園風景が続き、ドライブとしても楽しめる。 

東尋坊の絶景写真

東尋坊の絶景を写真に収めようと訪れる観光客は多い。

丸岡ICへ戻り、そこから永平寺へ向かう。永平寺の手前には駐車場があるので、そこへMINIを停めて永平寺の宿である「柏樹関」へ。2019年7月にできたばかりのこの宿は、永平寺の門前に位置し、参拝客などが宿泊するいわば宿坊の役割を担うのだが、旅館のような設備とサービスがある。中に入ると眼前に3メートル弱の大きな魚の木型があって、これは永平寺で実際に使われていた魚鼓(ほう)だという。雲水(修行僧)が食事をする際、これをたたいて合図に使う。 

永平寺の宿 柏樹関

柏樹関は参道から永平寺川を橋で渡った先にある。 

木魚の原形となった魚鼓

扉が開くと目に飛び込んでくる魚鼓(ほう)。 

魚鼓は木魚の原形ともいわれている。古来魚は眠らないといわれ、寝る間も惜しんで修行をしなさいという教えを表しているのだとか。多くの雲水さんによってたたかれた魚鼓の腹には宝暦の文字が刻まれており、約250年以上の時を重ねてきたことがわかる。 

柏樹関の食事は、永平寺が監修する精進料理を味わえるので、さっそく夕食を楽しむことにした。前菜には永平寺でも食べられている胡麻豆腐もある。精進料理というと、簡素なものをイメージするかもしれないが、柏樹関の料理は食べ応えもしっかりある。「実際に永平寺の精進料理も見せていただきましたが、お寺のも素材の味があり、食べ応えも十分」と料理を担当した佐々木副料理長は教えてくれる。そして、永平寺の精進料理は手作りにこだわり、素材の旬を大切にし、見かけを追求しない。まさに日本料理の原点ともいうべき要素がたくさんあるのだ。

精進料理

精進料理とはいえ、工夫が施され満腹になる。

柏樹関の部屋

部屋は和洋室タイプ。障子を開けると、永平寺川。 

一人分のご飯を炊いてくれる

食事でご飯を選ぶとテーブルでご飯が炊き上がるのを楽しめる。 

道元の 典座教訓 和辻哲郎の 道元

旅のお供に2冊、道元に関わる本を。 

柏樹関には大浴場もあり、旅の疲れを流した後、部屋に戻りノートパソコンを開き仕事を。大窓をあけると永平寺川のせせらぎが聞こえて、いつもと違う心持ちで仕事へも向き合えた。そして翌朝、まだ夜も明けぬうちから尼僧さんに連れられて永平寺へ向かうのだった。 

永平寺川

「柏樹関」の横に流れる永平寺川。

* * * 

「ここから靴を脱いでください」 

そして今、私たちは「柏樹関」を出て尼僧さんに従い、月下で永平寺の門をくぐる。杉の大木に見下ろされながらさらに進むと参拝の入り口へ。そこで指示通りに靴を脱ぎ、永平寺内の建物から建物へと無言で歩く。一番奥にある法堂(はっとう)までは何分かかるのだろうか。永平寺は山の斜面に張り付くように入り口から上へと建物が続くため、階段で山登りをしているようなものだ。汗がにじむ。 

ようやくたどり着いた法堂は住持が説法をし、また法要や儀式を執り行う場所だ。永平寺の法堂は380畳で中央に巨大な須弥壇(しゅみだん)を据える。須弥壇には聖観世音菩薩が祀られ、階段の左右には阿吽(あうん)の白獅子を配している。天井には八面鏡をつけた天蓋が下げられていた。 

私たちは法堂の入り口近く左手前の椅子に座り、僧侶と雲水らによる「朝のお勤め」に参加する。法堂に銀の玉を槌で打つような鐘の音が聞こえてくると、順番に僧侶、雲水が入ってくる。最後に従者を引き連れた導師が入堂して「朝のお勤め」が始まった。 

永平寺の朝のお勤(つと)め

「朝のお勤め」では、自分たちも読経ができる。 

永平寺の法堂

法堂、奥に獅子がいる。

数十人の人の声による読経が始まると、抑揚や節があるわけでもないのに神秘的な響きが倍音と共に生まれて、堂の中に少しずつ満ちていく。一体、どれほどの人々の経がこの堂に染みこんできたのだろうか。堂の中だけではない、永平寺の中でどれだけの言葉が染みこんでいるのだろう。 

「朝のお勤め」で印象に残るのは経の響きだけではない。彼らの動作によどみがなく、万事がまるで絵巻物のように進んでいく様子に畏怖するのだ。幾度繰り返したら、ここまでの動きができるようになるのか。それは修行の厳しさに通じるものだ。 

「朝のお勤め」が終わる頃には日も昇り、法堂の外に山林の風景が広がる。それと共に耳にするのは鈴虫の声から、鳥や蝉の鳴き声へと変わっていた。帰り道では尼僧さんが永平寺の七堂伽藍(寺の主要な七つの建物)について解説をしてくれた。 

柏樹関へ戻ると、ちょうど朝食の時間となる。朝食は夜と同じく精進料理をアレンジしているもので、お粥が中心。禅宗ではお粥は色(肌つやをよくする)、力(体力のもとになる)、寿(長命にかなっている)などの十徳ありと敬っているという。 

食事を終えた後は、座禅体験で再び永平寺へ。日常で思い描くさまざまなことから少し離れてみたいと思い、ワーケーション先を寺にしたのだ。永平寺はAppleの創業者スティーブ・ジョブズや世界一のレストランといわれるデンマークのノーマのシェフ長たちも訪れ、愛した場所。一流で多忙を極める人たちがなぜ集うのかを、俗っぽいが確かめてみたい気持ちもあった。 

曹洞宗の座禅は、座禅堂へ入堂することから始まる。左足から入り、中央に祀られている文殊菩薩に合掌、頭を下げる。そして挨拶をした後、坐蒲(座禅用のクッションのようなもの)に着坐、そして手を組む。上体は背骨をゆったりと積み上げ、上に頭をバランス良く置くイメージ。耳と肩、鼻とおへそは垂直になるようにする。この姿勢が、慣れていないと辛い。目は見開かず、細めず自然に開き視線は前方に落とす。ここまでの体勢ができたら、まずは深呼吸をして心と体のこわばりをほぐし、上体を左右に揺らし振り子のように中心で静止し、始めていく。

永平寺の座禅体験

座禅をしている間はいろいろなことが頭に浮かんでしまう。 

永平寺の座禅体験 2

座禅体験はソーシャルディスタンスを守って行われた。 

何も考えないようにしていても、仕事のことや将来のことなどいろいろなことが思い浮かんでしまう。そのことが見えているかのように、座禅を指導してくれる僧侶は「何か思い浮かんだら、それに執着しないように。そして取り払おうともしないように」と話す。無にならなければいけないと思っていた私にとっては意外な言葉だった。「人は悩んだり考え事をしたりしていると、ロダンの『考える人』のように姿勢が縮こまってしまう。座禅の姿勢はそれとは真逆。座禅をしていれば、日常のあれこれから自然と離れていくことができますよ」と、僧侶は教えてくれた。 

座禅堂の中で、自分だけの世界に入る。静かな時間。鐘が一度鳴り、終了を知らせてくれた。わずか25分程度の体験だったが、いつでもできることを考えると、もう少しやってみようという気になった。 

座禅体験を終えた私たちは、大本山永平寺の国際参禅部長の横山泰賢さんに話を聞く機会を得た。横山さんは15年以上アメリカでの曹洞宗の布教に携わり、その後欧州でも活動を経てきたという。 

永平寺の七堂伽藍を案内してくれた

横山国際参禅部長自ら、七堂伽藍の案内をしてくれた。 

永平寺の唐門

永平寺の中でもよく知られる唐門。 

「私たちは自分たちの生まれてくる時と場所を選ぶことはできません。男女であることも選べなければ、自分の親を選ぶこともできません。つまり人は、生まれた時からままならないことだらけ。それなのに、自分の思い通りにならないことで悩んでしまう。先ほど体験していただいた座禅では、そうした思いを手放しにする実践なのです」 

日常とは異なる空間、永平寺。いつもと違う場に身を置くことで、気づけないことに気づけるのも旅の魅力だ。

永平寺親禅の宿 柏樹関

平寺親禅の宿 柏樹関 
住所:福井県吉田郡永平寺町志比6−1 
TEL:0776-63-1188(9:00〜19:00) 
ご予約:050-3504-9914(9:00〜19:00) 
Web:公式サイト

GO TOトラベルキャンペーン対象なので今ならお得に宿泊が可能。
新型コロナウイルス感染症対策についてはこちらよりご確認ください。

【MICHELIN EXPERIENCE MAGAZINE限定特典】 
チェックイン時に「MICHELIN EXPERIENCE MAGAZINEを見た」とお伝えいただいた、先着10組のお客様にオリジナル若狭塗箸をプレゼントいたします。(2020年10月31日まで)      

2020年9月25日掲載(取材日:2020年9月5日)
※記載の内容は掲載時点の情報です。(ミシュランガイド公式リストbyクラブミシュランは、現在、終了しております。)
※全世界のミシュランガイドセレクション(レストラン・ホテル)の閲覧・検索はミシュランガイド公式ウェブサイトをご利用ください。
※グリーンガイドの情報は『グリーン・ガイド・ジャパン改訂第6版』のものです。

今回のクルマ

mini cooper
​MINI Cooper D 3 Door 

高速・低重心ハンドリングの刺激と、ゴーカート・フィーリングの爽快さを凝縮。都会的な個性と魅力的な装備は、走っている時間をより楽しくしてくれる。 

https://www.mini.jp/ja_JP/home/range/mini-3-door-hatch.html 

article ban 2w

フォトギャラリー

ライター

MEM鯖街道 中村

中村祐介 Yusuke NAKAMURA

編集者、ジャーナリスト
食生活ジャーナリストの会所属
一般社団法人おにぎり協会代表理事
一般社団法人日本編集部代表理事
株式会社エヌプラス代表取締役

カメラマン

mem watanabe

渡邉政和 Masakazu WATANABE

企画・編集/中村祐介 Yusuke NAKAMURA、渡邊奈美 Nami WATANABE(株式会社エヌプラス)

MEM バナー 「ミシュラン ニュースレターに登録」
MICHELIN EXPERIENCE MAGAZINE これまでの記事はこちらから
You are using an unsupported web browser
本ウェブサイトではサポートされていないウェブブラウザをお使いのようです。一部の機能が正常に作動しない場合があります。閲覧中に動作が不安定になる場合があります。このウェブサイトを最大限活用していただくため、以下のブラウザのいずれかを使用していただくか、アップグレードまたはインストールしてください