駿河湾沼津saからのぞむ

エピキュールの旅「東海道」編③

Epicures(エピキュール)とは美食家、食道楽を意味することば。ギリシャの快楽を探求していた哲学者、エピクロスを語源とします。
食の快を探求するため、日本の名産品、特産品の産地へ訪れ、その食文化を学ぶ旅。ミシュランガイドを片手に、いざ食道楽ドライブ!
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 江戸のころ、観光ルートとしても栄えた東海道五十三次は、今でもその土地ごとに魅力があります。今回はこの長い街道を食文化とともにドライブする3本立ての最終回です。

東海道3 イラストマップ

 日本橋を出て西へ西へ。前回、藤枝で染飯を食べていたりしたらもう夕方が近づいてきてしまいました(東海道編①)。このままでは京都の三条大橋まで本日中にたどりつかないかもしれません。これはいけないと新東名高速道路から、伊勢湾海岸自動車道に入り、東名阪自動車道で西へ向かいます。伊勢湾海岸自動道の湾岸長島には、ナガシマスパーランドが左手に海とともに見えてきますが、夜の姿はなかなか壮大です。

 東名阪自動車道で亀山に降りれば「関宿」です。ここは江戸から47番目の宿で、古代に鈴鹿の関があったところ。街並みは約1.8キロほど古い建造物が残っており、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されました。

東海道の47番目の宿場町 関宿

東海道の47番目の宿場町「関宿」

 関宿の町屋は、古いものでは18世紀中頃の建築で、明治時代中頃までの建築物が半数以上をしめています。二階建てが一般的ですが、二階部分の前面を土壁で被った塗籠のものもあり目を引きます。

東海道の宿場町 関宿

関宿は東海道の宿場町で唯一といっていい古い町並みが楽しめる場。車で走ることもできる

旅籠 会津屋

元は旅籠の一つだった会津屋。今は山菜おこわを食べることができる

 江戸時代の「関宿」の特産物は火縄で、数十件の火縄屋があったといいます。火縄は鉄砲に用いたため、大名の御用がありましたが、それだけでなく、道中の旅人が煙草などに使うために購入したため、おおいに繁盛したそうです。ちなみに火縄は桧の皮、竹の繊維や木綿糸などをよって縄をつくり、これに硝石を吸収させたもの。火持ちがよいので点火に使われていました。

「関宿」は江戸時代には参勤交代やお伊勢参りの人々などで賑わいました。現在、旧東海道の宿場町のほとんどが旧態をとどめていない中で、珍しく歴史的な街並みが残っています。名物として知られているものの一つが「志ら玉」で、餡入りの白玉団子。旅人の茶請けとして江戸の昔から親しまれています。

関宿 志ら玉屋

関宿にある「志ら玉屋」。ここだけでなく、最寄りの道の駅でも購入できる

関宿 志ら玉 お団子

「志ら玉」は餡入りのお団子で、甘さを抑えた飽きのこない味わい

 約1.8キロの古い街並みを車で走ってみるとタイムスリップしたような気分になります。今回も、ミシュランのタイヤ「MICHELIN PRIMACY 3」で走っていますが、こんな時も静粛性と安定感が高く、静かな街並みを車窓から楽しむにももっていこいです。ステアリングを切った時の応答もよく、細い道での小さな操作にも思ったように車を運んでくれます。

 周辺には駐車場もあるので、車を停めての散策もおすすめです。近くには「道の駅 関宿」もあり地元の特産品などのお土産も買えます。関宿の古い街並みを楽しんだら、いよいよ京都へ。52番目の「草津宿」から53番目の「大津宿」を経て、ゴールの京・三条大橋へ。

 JR山科駅沿いに地下鉄東西線・御陵駅の南を抜けて、旧国道との合流点の先に蹴上の清水跡(けあげのしみずあと)があり、三条通りを進むと三条大橋が見えてきます。三条大橋周辺はすっかり近代化され、欄干の擬宝珠のみが昔の面影をのこしています。また、橋の西南には地元の方々が立てた『東海道中膝栗毛』の弥次郎兵衛と喜多八の像があり、かつての東海道をしのばせます。

京都 三条大橋 弥次喜多像

ゴールの京都・三条大橋には弥次喜多像もある

京都 三条大橋

京都・三条大橋

 この三条大橋からほど近い御幸町通りに「御幸町 田がわ」があります。2017年2月に開店早々、ミシュランガイド京都・大阪2018に新しく1つ星で掲載された日本料理店です。そして2019年、2020年も同様に一つ星を維持されています。京町家を改装した店内はカウンタースタイルで、調理には陶器でつくられた炉を使用しています。

「これまで3つのお店で育てていただき、それぞれのお店で学んだ色を出していきたいと考えています。カウンターをフラットにしているのは、お客さまと向き合い、安心感をもってもらいたいという思いからです。フラットにしたことで、自分たちの手元が見える分、一切手を抜けない緊張感を持たせています」

日本料理店 御幸町 田がわ 外観

京町家を改装した日本料理店「御幸町 田がわ」

田がわ店主 田川喜章さん

田がわ店主の田川喜章さん。フラットなカウンターで料理を振る舞う

 そう話すのは店主の田川喜章さん。

「重視しているのはコース全体の流れです。どこで盛り上げるのか、何を食べていただくか。一番メインになるのはこの食材というのを考えて、そこに向けてどう山場を迎えるか、作るかを考えています。また、その際に私が三重の出身なので、三重の食材があるときはできるだけ使うようにしています」

 もともと筆者はプライベートで一度訪れていたのですが、あらためてこのような機会を得ることができました。特にお気に入りはお椀ですが「尾札部の真昆布、鰹節はお客さまのいらっしゃる30分前に削って香りを残している」と田川さん。京都は昆布だしが主流ですが、江戸(東京)から来た旅人にとっては鰹節の香りが疲れを癒やしてくれます。

御幸町 田がわ 伊勢海老の先付

先付 伊勢海老。もち米をたれのようにあつかい、最後にフィンガーライムをのせている

御幸町 田がわ お椀 鱧の豊年巻き

お椀 鱧の豊年巻き。道明寺粉、鱧、千両なすを蒸したものの上に白髪ねぎと香りづけに柚子を

御幸町 田がわ八寸 伝助穴子のしぐれ煮

八寸。伝助穴子のしぐれ煮、しいたけとほうれん草、などで彩られる

御幸町 田がわ 炊合せ 子持ち鮎の冬瓜巻き

炊合せ 子持ち鮎の冬瓜巻き。割いた松茸を冬瓜でくるんでいる。松茸の香りが口の中に広がる

御幸町 田がわ 実山椒おにき り

おにぎり。実山椒じゃこと牛筋のおにぎりは、牛のランプを仕入れ、その筋を使ってしっかりと煮込んでいる

 今回は秋のお料理を楽しむということで、5点ご用意いただきました(コース内容は実際のものと異なります)

 今回の東海道の旅で立ち寄れた宿場町はほんの一部。まだまだ訪ねるべきところはたくさんありそうです。特に愛知県などは、味噌文化を探るにはちょうどいい場所でもあります。また、別の機会に東海道の他の宿場町を訪れてみたいと思います。

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帰りの高速道路から、名残の一枚

田がわ_外観

御幸町 田がわ
「ミシュランガイド京都・大阪2020」に掲載
住所:京都府京都市中京区夷川通御幸町西入松本町575-1
TEL:075-708-5936
営業時間:※完全予約制
ディナー:18:00~20:30(最終入店)
不定休
Web:https://www.gokoumachi-tagawa.com/

2019年11月28日掲載(取材日:2018年11月22日)
※記載の内容は掲載時点の情報です。(ミシュランガイド公式リストbyクラブミシュランは、現在、終了しております。)
※全世界のミシュランガイドセレクション(レストラン・ホテル)の閲覧・検索はミシュランガイド公式ウェブサイトをご利用ください。

MEM鯖街道 中村

中村祐介 Yusuke NAKAMURA

編集者、ジャーナリスト、フォトグラファー
食生活ジャーナリストの会所属
一般社団法人おにぎり協会代表理事
一般社団法人日本編集部代表理事
株式会社エヌプラス代表取締役

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