ミシュランの歴史 EPISODE.01
1889年、ミシュラン創業。タイヤの未来はゴムボールから生まれた
ミシュラン兄弟。兄のアンドレ(左)、弟のエドアール(右)
パリで絵画の勉強をしていた弟・エドワールと、建築会社を経営していた兄・アンドレのミシュラン兄弟。彼らがミシュラン社を創業したのは1889年のことでした。
その前身となったのは、ミシュラン兄弟の祖父と従兄が興したゴムと農機具の製造会社、1832年設立のバルビエ & ドーブレ社。苦境に立たされ破産寸前となったこの会社を再建するため、ミシュラン兄弟はパリからクレルモン=フェランに呼び戻されたのです。絵画と建築。ゴムにも農機具にもまったく無縁の世界に身を置いていた彼らは、現場で従業員達から根気強く話を聞き、経験を学び取ることで、新しい仕事を着実に学んでいきました。
ミシュランの前身となるバルビエ=ドーブレ社工場。1864年、クレルモン=フェランのカルム広場にある工場を描いたもの。背景には、ピュイドドーム火山も見える。
この時代のミシュラン社の人気商品は二つ。子ども用ゴムボールとブレーキパッドでした。ミシュラン兄弟はまず、このゴムボールの販売方法を徹底的に見直し、中学校を始めとした教育機関を新たな取引先として開拓。その結果、わずか8年で注文を26倍に伸ばしたのです。
また、輸送産業に着目していたミシュラン兄弟は、ゴム製品の製造技術を応用したブレーキパッドの開発にも着手、これを「サイレント」と名付けました。当時、市場に出回っていたブレーキパッドは鉄製か鋳物製で、ブレーキを踏むたび思わず耳を塞ぎたくなる酷い音を出していました。ところがミシュランの特許製品である「サイレント」は、静粛性と乗り心地の良さを実現していたため、世間の注目をさらったのです。
ミシュランのブレーキパッド「サイレント」
こうして経営難を脱したバルビエ & ドーブレ社はミシュラン社として生まれ変わり、現在に至るまでタイヤの歴史を変える様々な革命を起こしていきました。
文/ヤマダマサノリ 編集/佐野未代子(Condé Nast Creative Studio)
2 脱着可能な空気入りタイヤの誕生
1891年、ミシュランタイヤの名を広めた自転車用タイヤ
3 世界初の自動車レース
1895年、エクレール号が証明した空気入りタイヤの未来
4 ミシュランマン誕生
1898年、世界最古のユニークな企業キャラクターが誕生