
Enjoy MOTORSPORT with MICHELIN !!
Vol.01 ミシュランのモータースポーツ活動主要カテゴリー[2024年版]
自分のクルマやバイクがどのくらい速く走るのか試してみよう、相手と競争してみよう、というのがモータースポーツの原点です。したがって、モータースポーツはクルマやバイクが誕生した19世紀末から自然発生的に行われるようになり、どんどん発展していきました。ミシュランの自動車競技への初参加も19世紀末の1895年でした。それから約130年、ミシュランタイヤはいつの時代もモータースポーツを走り続け、様々なカテゴリーで数々の栄冠を勝ち取ってきました。1895年というと、日本の和暦では明治28年。つまり明治時代からミシュランはモータースポーツにおけるトップブランドであり続けているのです。ミシュランはモータースポーツにおけるトップブランドであり続けているのです。
ミシュランのモータースポーツ用タイヤには、一般のストリート用タイヤと同じように商品として販売しているものと、新しい技術を磨くプラットフォームとして開発を継続的に行いながらパートナーチームに供給しているものがあります。そして、後者の種類のタイヤを供給する活動を行っているカテゴリーが、世界耐久選手権(WEC)、MotoGP世界選手権、そしてSUPER GTです。
WECは、4輪のレーシングカーによる耐久レースの世界選手権シリーズです。そのトップカテゴリーはハイパーカークラスといい、ここに出場しているすべてのマシンがミシュランタイヤを使用しています。
MotoGPは、2輪のレーシングバイクによるサーキットレースの世界最高峰カテゴリーで、ミシュランは公式タイヤサプライヤーとして出場全車に製品を供給しています。
そしてSUPER GTは、市販のスポーツカーをもとに作られたGTマシンによって行われているレースで、ミシュランを含む4つの世界的なタイヤメーカーが参戦して競い合っています。
いずれのカテゴリーにおいても、タイヤには高いグリップ性能とそのパフォーマンスを長く安定的に発揮する能力が求められます。「Performance Made to Last」という言葉で表したポリシーのもと、ライフの最後まで高性能を発揮し続けるタイヤを追求しているミシュランにとっては、どれも挑戦しがいのあるカテゴリーです。
【SUPER GTってこんなレース】──SUPER GTは日本で最も人気の高いレースシリーズです。GT500とGT300という2つのクラスがあり、レースでは両クラスのマシンが一緒に走行しながら各々のクラスでの順位を争います。レースの長さは、短くて2時間弱、最長で3時間で、途中では燃料の補給やドライバー交替、そしてタイヤ交換が実施されます。2024年シーズンでは8大会が行われますが、そのすべてが日本国内のサーキットで開催されます。
【世界最高レベルのタイヤ競争】──ミシュランはSUPER GTにおける活動を格別に重要視しています。なぜなら、SUPER GTには世界で最もレベルの高いタイヤ競争があるからです。SUPER GTにはミシュランを含む4つの世界的なタイヤメーカーが参加しており、とても高度な技術開発競争を繰り広げています。この競争の中で技術を磨くことは、ミシュランにとって大変に大きな価値があるのです。
【SUPER GTでタイヤに課される試練】──レーシングタイヤには、乾いた路面で使うドライコンディション用タイヤと、濡れた路面で使うウェットコンディション用タイヤがあります。そして2024年シーズンのSUPER GTでは、各車両が使えるタイヤの本数がかなり少なく制限されています。例えば、レース距離が300kmの大会で使用できるドライコンディション用タイヤは 16本=4セットまで。これで、公式練習、予選、ウォームアップ走行、そして300kmの決勝レースのすべてをこなさなければならないのです(※ただし、そのシーズン中に当該クラスのユーザー車両が優勝していないタイヤメーカーには、各ユーザー車両にさらに4本=1セットを加えて用意することが認められています)。
そしてSUPER GTでは、ドライコンディションで決勝レースを迎えた場合、予選で使ったドライコンディション用タイヤでレースをスタートしなければならない規則になっています。つまり、SUPER GTで使用されるレーシングタイヤには、予選で一発の速さを出せるハイパフォーマンスと、予選でのタイムアタックをこなしたうえで決勝レースの序盤でも高い競争力を発揮し続けられる耐久性(高性能の持続性)を兼ね備えていることが求められるのです。
【GT300クラスで戦うミシュラン】──GT500とGT300という2つのクラスがあるSUPER GTですが、ミシュランはGT500クラスにおいて4度のシリーズタイトル獲得をパートナーチームとともに果たしてきました。そして2024年シーズンからはGT300クラスでの活動に集中しています。
2024年シーズンにミシュランがタイヤ供給を行っているのは次の3台のマシンです。
■No.7 Studie BMW M4 [車両]BMW M4 GT3 [ドライバー]荒 聖治/ニクラス・クルッテン/ブルーノ・スペングラー [チーム]BMW M Team Studie x CRS
■No.20 シェイドレーシング GR86 GT [車両]トヨタ GR86 JAF-GT300 [ドライバー]平中克幸/清水英志郎 [チーム]SHADE RACING
■No.45 PONOS FERRARI 296 [車両]フェラーリ 296 GT3 [ドライバー]ケイ・コッツォリーノ/リル・ワドゥー [チーム]PONOS RACING
【SUPER GT GT300クラス用ミシュランレーシングタイヤ】──SUPER GTでは、タイヤの技術仕様はレースごとに変更することが認められています。そこでミシュランは、用意するタイヤの仕様を各レースの開催条件(サーキットの路面状態や想定される路面温度など)に合わせて変え、そのレースに最も適した仕様のタイヤを各パートナーチームに供給しています。
■タイヤサイズ:フロント用 30/68-18 リア用 31/71-18(※サイズ表記はタイヤ幅 [cm]/タイヤ外径 [cm] −リム径 [インチ])
【WECってこんなレース】──世界耐久選手権(WEC)は長時間にわたって走る耐久レースの世界選手権シリーズです。ハイパーカーとLMGT3という2つのクラスがあり、レースでは両クラスのマシンが一緒に走行しながら各々のクラスでの順位を争います。レースの長さは短くても6時間。最も長いレースは、あの有名なル・マン24時間です。途中では燃料の補給やドライバー交替、そしてタイヤ交換が繰り返し実施されます。2024年シーズンでは世界8カ国で8大会が行われ、シリーズ第7戦は日本の富士スピードウェイで開催されます(9月15日決勝)。
【WECにおけるミシュラン】──WECのトップカテゴリーはハイパーカークラスです。約1000馬力の最高出力で走るレース専用設計のレーシングカーが出場するクラスで、耐久レースにおける世界最高峰のカテゴリーです。そしてミシュランは、このハイパーカークラスにおける唯一のタイヤサプライヤーとして活動しており、同クラスの全車にタイヤを供給しています。
2024年シーズンのハイパーカークラスには9種類ものマシンが出場しています。それらのマシンの技術的な成り立ちは様々ですが、ミシュランは各車両の技術仕様に合わせて最適な設計としたレーシングタイヤを供給しています。
なお、ミシュランはこのハイパーカークラス用レーシングタイヤの開発作業を、主にコンピュータやシミュレータなどのデジタルツールで行っています。バーチャルでデザインしながら、実際の高度な要求にしっかりと応えるタイヤを実現しているのです。つまり、ハイパーカークラス用タイヤは、極めて低い環境負荷のもとで作り出されている、ミシュランならではの高性能レーシングタイヤであると言えます。
【WECでタイヤに課される試練】──WECにおいても、各車両が使えるドライコンディション用タイヤの本数はかなり少なく制限されています。例えば6時間レースの場合、予選と決勝レースで使用できるドライコンディション用タイヤは18本=4セット+2本まで。これは、決勝レースでは2時間近くを1セットのタイヤで走行することが求められる本数です。また、予選専用タイヤというものはありません。したがってWEC用レーシングタイヤには、SUPER GT用タイヤと同様に、予選で一発の速さを出せるハイパフォーマンスと、長時間にわたる連続走行でも高い競争力を発揮し続けられる耐久性(高性能の持続性)を兼ね備えていることが求められます。特に高性能の持続させたい時間の長さはSUPER GT用タイヤの倍以上であるというところが特徴的です。
【WECハイパーカークラス用ミシュランレーシングタイヤ】──WECのハイパーカークラスでは、ドライコンディション用タイヤはソフト、ミディアム、ハードの3種類、ウェットコンディション用タイヤは1種類に制限されています。また、それらのタイヤの技術仕様は年間を通して同じでなければならないことになっています。例えば、路面温度が50℃以上になることもある中東のバーレーンで使われるミディアムタイヤも、路面温度が20℃を下回ることがあるル・マン24時間で使われるミディアムタイヤも、技術仕様はまったく同じです。つまり、とても幅広いコンディションに対応できる能力も、WEC用タイヤには求められるのです。
■タイヤサイズ:フロント用 29/71-18 リア用 34/71-18(※サイズ表記はタイヤ幅 [cm]/タイヤ外径 [cm] −リム径 [インチ])
【MotoGPってこんなレース】──MotoGPは2輪車のサーキットレースの世界最高峰シリーズであるロードレース世界選手権、通称「世界グランプリロードレース」のトップカテゴリーです。2024年シーズンでは世界15カ国で20大会が行われ、シリーズ第16戦は日本のモビリティリゾートもてぎで開催されます(10月6日決勝)。レース距離が110km〜120kmのグランプリレース(決勝レース)と、その半分の距離でのスプリントレースが、すべての大会において催されています。グランプリとスプリントのどちらのレースにおいても、途中でのタイヤ交換などはありません。
【MotoGPにおけるミシュラン】──MotoGPでは、ひとつのタイヤメーカーが公式サプライヤーとなり、すべてのレースにおいて全車にタイヤを供給することになっています。そして2016年シーズンからはミシュランがMotoGP公式タイヤサプライヤーの仕事を果たし続けています。
排気量1000ccのMotoGPマシンは、レース中でも時速350kmをゆうに超えるほどの高性能を持ったレーシングバイクです。2024年シーズンのMotoGPには5種類のマシンが出場していますが、全車が同じ技術仕様のミシュランタイヤを使用しています。つまりタイヤには、どのバイクに装着されても同じように高い性能を発揮する製品であることが求められています。
【MotoGPでタイヤに課される試練】──MotoGPにおいても、各車両が使えるタイヤの本数は制限されており、ドライコンディション用タイヤのフロント用は10本まで、リア用は12本までとなっています。この本数で、各大会における練習走行(プラクティス)や予選、スプリントレース、グランプリレースのすべての走行をこなさねばなりません。ただし、MotoGPではレース中のタイヤ交換はないので、SUPER GTやWECほど新品タイヤの残存本数を気にすることはありません。
一方、MotoGPならではの難しさがあります。基本的にスプリント勝負であるMotoGPでは、各ライダーはレースの最後まで限界レベルでプッシュしていくライディングを続けます。その攻撃的な走りによる高い負荷に耐え、摩耗を抑えてハイパフォーマンスを最後まで発揮する能力がMotoGP用タイヤには求められます。
【MotoGP用ミシュランレーシングタイヤ】──MotoGPでは、ドライコンディション用タイヤはソフト、ミディアム、ハードの3種類、ウェットコンディション用タイヤはソフトとミディアムの2種類に制限されています。ただし、各タイヤの技術仕様はレースごとに変更することが認められています。これを受けてミシュランでは、レースの開催条件(サーキットの路面状態や想定される路面温度など)に合わせて最適化を図ったレーシングタイヤを各大会に用意しています。SUPER GT用タイヤでは装着車両の特性などに合わせることもさらに行っていますが、MotoGPでは全車が同じ技術仕様のタイヤを使用しています。
■タイヤサイズ:フロント用 12/60-17 リア用 20/69-17(※サイズ表記はタイヤ幅 [cm]/タイヤ外径 [cm] −リム径 [インチ])
【電動バイクレースの最高峰 MotoE】──電動レーシングバイクによる世界最高峰のレースシリーズがMotoEです。その各レースは長くても15分間の超スプリントレースで、2024年シーズンでは8大会・全16レースがMotoGPとの併催で行われています。マシンはワンメイクで、ドゥカティ製。約150馬力のモーターを搭載し、最高速度は275km/hに達します。そしてタイヤもワンメイクであり、その公式サプライヤーはミシュランが務めています。
【材料の約半分がサステナブルなMotoEタイヤ】──MotoEで使用されるタイヤは、ドライコンディション用、ウェットコンディション用ともに1種類に制限されています。そして、このMotoEのドライコンディション用タイヤにおいてミシュランは、とても先進的な挑戦を行っています。タイヤを構成する材料のほぼ半分を、いわゆるサステナブル材料(再生可能材料やリサイクル材料)としているのです。具体的には、フロントタイヤには49%、リアタイヤには53%ものサステナブル材料を使用しています。
非常に強力なグリップ性能を発揮する2輪用タイヤで、これほど高い割合でサステナブル材料を使用している例は他にありません。新しい技術を磨くプラットフォームとしての好例がミシュランのMotoE用タイヤなのです。
【ポルシェカレラカップってこんなレース】──SUPER GTやWECやMotoGPに用意しているタイヤが新しい技術開発を目的としたものであるのに対して、一般のストリート用タイヤと同じように商品として販売しているレーシングタイヤもあります。ミシュランには様々な種類の市販レーシングタイヤがありますが、その最高峰と言えるものがポルシェカレラカップ用のタイヤです。
ポルシェカレラカップとは、ドイツの自動車メーカーであるポルシェの特定の車種(2024年の場合はポルシェ 911 GT3 Cup)だけを使用して行われているワンメイクレースです。車両だけでなくタイヤもワンメイクで、長年にわたってミシュランがそのサプライヤーとなっています。
ポルシェカレラカップの大きな特徴は、同じ車両と同じタイヤでのワンメイクレースが世界各国で行われていることです。2024年の場合、ドイツ、フランス、アメリカ、オーストラリア、日本を含むアジア圏などで開催されています。ポルシェスーパーカップという国際レースシリーズも催されています。そして、これらすべてのレースの全出場車両がミシュランタイヤを使用しています。
【ポルシェカレラカップジャパン(PCCJ)】──日本のポルシェカレラカップであるPCCJは2001年にスタートしたワンメイクレースです。2024年シーズンでは6大会・全11レースが行われています。メジャーレースに併催される大会が多いことがPCCJの特徴のひとつで、2024年シーズンの6大会のうちの1大会は4月のF1日本グランプリのレースウィークに開催されました。また、日本のフォーミュラカーレースの最高峰であるスーパーフォーミュラの第4戦、そしてSUPER GTの第2戦と第4戦でもPCCJのレースが併催されています。つまり、観戦に出かけたビッグイベントのサポートレースとして目にするチャンスがあるのがPCCJであり、ワンメイクレースとしては突出した注目度を持つものなっています。
PCCJは最長で30分間のスプリントレースです。途中でのタイヤ交換などはありません。出場しているのはアマチュアドライバーが多く、その腕前に応じて、プロ、プロアマ、アマの3クラスが設けられています。レースでは3つのクラスの出場者が一緒に走行し、各クラスにおける順位と総合順位を争います。
【PCCJにおけるミシュラン】──PCCJのすべてのマシンがミシュランタイヤを使用しています。ミシュランはすべての大会においてPCCJ専用のタイヤサービスを実施しており、日本で最も長い歴史を持つこのワンメイクレースシリーズを強力にサポートしています。
【PCCJ用ミシュランレーシングタイヤ】──PCCJにおけるタイヤは、このレースシリーズの専用車両であるポルシェカレラカップカーに最適化させた設計をミシュランが行ったタイヤで、ドライコンディション用、ウェットコンディション用ともに1種類のみです。そして、各車両が使えるドライコンディション用タイヤの本数は制限されており、2レース開催の大会では12本=3セットまで、1レース開催の大会では8本=2セットまでとされています。
■タイヤサイズ:フロント用 27/65-18 リア用 31/71-18(※サイズ表記はタイヤ幅 [cm]/タイヤ外径 [cm] −リム径 [インチ])
●
今回は、ミシュランが活動している代表的なレースカテゴリーをご紹介しました。これらのレースをご覧になるときは、マシンの足元を支えている黒くて丸いタイヤにもぜひ注目してくださいね!