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Vol.03 「密な、つながり」
──レーシングドライバーが語るミシュランのストリートタイヤとレーシングタイヤの共通性
──レーシングドライバーが語るミシュランのストリートタイヤとレーシングタイヤの共通性
・ゲスト:荒 聖治選手(SUPER GT No.7 Studie BMW M4ドライバー)
・お相手:小田島広明(日本ミシュランタイヤ モータースポーツダイレクター)
2024年SUPER GT開幕戦で3位表彰台を獲得した荒選手とミシュランの小田島モータースポーツダイレクター(とミシュランマン)
──荒選手は、いろいろなレースでミシュランタイヤを使われた経験をお持ちですが、現在は普段乗られている愛車にもミシュランタイヤを装着されているのですね?
荒選手:そうですね、BMW 118iにはPILOT SPORT 5、ミニにはCROSSCLIMATE 2を着けています。
──お使いになられていて、いかがですか?
荒選手:僕は思うんですけど、世の中ではクルマ好きとか運転好きの方ほどミシュランタイヤを選ばれるのかもしれないですけど、むしろ、クルマの知識はあまりない方とか運転にあまり自信のない方にこそ使っていただきたいのがミシュランタイヤだな、ということですね。だって、安心ですから。今の世の中には省燃費性能を追いかけて肝心な性能を犠牲にしているタイヤとか価格で勝負しているようなタイヤなどがいろいろあって、クルマはただの移動手段と考えている方はそういうタイヤに目を向けがちかもしれないですけど、逆だと思うんですよ。そういう方々にほど、ミシュランタイヤのような確かな商品を選んでいただいて、安全に快適に移動してもらいたいなと思うんです。
小田島:新品に履き替えたとき、大概のタイヤは良いフィーリングに感じられると思います。ただ、それを長い距離にわたって使っていただいていく中で、いかに快適に付き合えるものとするか、そして、その性能をいかに変わらずに発揮し続けられるものとするか、というところがタイヤに求められている大事な考えだと思います。そしてミシュランの場合、その考え方はストリートタイヤもレーシングタイヤも同じなんです。
荒選手:タイヤに高いグリップ力があるということは、ストリートでも本当にアドバンテージだと思うんです。曲がれるし、止まれるし、不安定にならない。ということは、とっさに何かを回避しなければならない状況になったときもグリップを失わずに避けられる、ということですよね。そういう限界性能の高さって、安全に対して全部効いてきます。例えば雨の日になると高速道路での事故が増えますけど、そういう話を聞くと僕は、『良いタイヤを皆さんがつけていれば、こんなにも事故が起こることはないのにな』と思ってしまう。何しろ、クルマが路面に接している唯一の部品がタイヤなんですから。
対談は、荒選手がSUPER GTで所属するBMW M Team Studie x CRSを運営するBMW専門店 Studie AGの東京店にて実施。その店舗には、世界限定50台ながらミシュランが同車専用に開発したPILOT SPORT 4 Sを標準採用したBMW 3.0 CSLが展示されていました(展示車両は標準仕様のPILOT SPORT 4 Sに履き替えられていました)。
──それにしても荒選手は、いろいろなレース経験の中でミシュランタイヤをお使いになってこられましたね。
荒選手:2000年の全日本GT選手権(※現在のSUPER GTの前身シリーズ)のGT500クラスにトヨタ・スープラで出場しましたが、このときのタイヤがミシュランでした。各レースで使用できるタイヤの本数制限などがまだ緩かった時代で、このときミシュラン流の高度なレーシングタイヤ開発を経験できました。そして、翌2001年からル・マン24時間に参戦するようになって、2002年から2004年まではアウディのトップカテゴリーのマシン(※LMP900クラスのアウディR8)に乗り、2004年には総合優勝できました。その間はずっとミシュランタイヤでしたが、アウディが僕の能力を認めてくれて、ル・マンの本番で使用するタイヤの技術仕様を決める事前テストにも参加を求められました。そうした経験は、その後もレーシングドライバーを続けていくにあたって、とても大きなものになりましたね。
──ル・マンでのレース経験の中で、ミシュランタイヤについて強く印象に残されたことは何でしょう?
荒選手:一番感銘を受けたのは、タイヤの真円度ですね。
──真円度!? いかに丸いか、ということですか?
荒選手:そうです。これは、すごく重要なことです。レーシングタイヤでも、一般のストリートタイヤでも、です。タイヤは丸いのが当たり前と思われるかもしれないですけど、実際には、路面に接地した部分で変形が起こっています。一旦潰れて、それが路面から離れたところで元に戻って……ということを繰り返しながら転がっているんです。そのとき、できるだけ真円に戻ってほしいわけです。その性能は、ル・マンのような高いスピードレンジになってくると、ものすごく重要なんですよ。ル・マンでは、コースを1周するうちに何十秒もの間、時速300kmを超えるスピードで走るわけですから。そのうえ、ル・マンの決勝レースでは、タイヤ交換のロスタイムを減らすために、同じタイヤを3時間以上は使い続けるのが定石です。それだけの時間を、ストリートの比でない高さの負荷にさらされ続けながら、真円であり続けられるタイヤを作るのは、本当に難しいと思います。でも、ミシュランはそれを何十年も前から実現している。僕はその素晴らしさを身をもって体験してきました。僕が出場していたときのル・マンにはタイヤ競争がありましたけど、トップチームがこぞってミシュランを使いたがった一番の理由はそういうところです。そしてその技術は、皆さんがお使いのミシュランのストリートタイヤにも入っているわけです。
小田島:荒さんがお話しくださったタイヤの真円度についてですが、これは荷重がかかった状態でのタイヤのたわみ量がミシュランは安定しているということです。丸いタイヤに硬さが違うところがあると、それが高速で回転する中で振動が出てしまいます。振動は、ドライバーを不安にさせますよね。それは、レーシングタイヤでもストリートタイヤでも同じことです。ましてストリートタイヤはお客様が何万kmとお使いくださるわけですから、その間、ずっと不快な思いをしなければならないというのは、嫌ですよね。ですから、タイヤの真円度を高く保ち続けることは、ミシュランが長年にわたって重視して技術開発に取り組んでいるテーマのひとつなのです。
──荒選手は2024年シーズンもミシュランタイヤでSUPER GTを戦われましたが、どのようなところにミシュランの強みがあるとお考えですか?
荒選手:ミシュランタイヤは、どういう特徴のサーキットに行っても、そしてどんな天候になっても、一定以上の高いレベルの性能を発揮してくれます。ですから、どんなコンディションのもとでも、さほどの不安を持つことなく、常に自信を持って走りに臨める。そこが、我々のチーム(BMW M Team Studie x CRS)にとってミシュランタイヤが武器になっているところだと思います。SUPER GTでは、獲得ポイントに応じてハンデが課されていく制度(サクセスウェイト制度)がありますし、大会によって車両性能を調整する措置が取られることがあるので、毎戦、勝ち狙いで行くということはできません。でも、ミシュランタイヤを使うことで、どのレースでも常に高いレベルに位置し続けられていますし、そこでさらに条件が整えば優勝に手を届かせることができる。我々にとってミシュランタイヤは、そういう武器だなと思っています。
──ここ数年のSUPER GTにおけるミシュランタイヤについては、濡れた路面用のウェットコンディション用タイヤの性能の高さが特に注目を集め続けていますが?
荒選手:ミシュランのウェットタイヤはですね、本当にすごいんですよ。例えば、モビリティリゾートもてぎの第5コーナーの立ち上がりから、右回りの130Rコーナー、そしてS字区間までは、ウェットでも全開で行けます。本当にアクセルを踏みっぱなしでコーナーを抜けていけます。ここでは、ライバルたちはみんな、全開のまま行けるかどうか、ギリギリなんです。でも、ミシュランでは躊躇なく行けるんです。これは、全然違います。
小田島:そのノウハウが、お客様が手にされるストリートタイヤにも生きています。
荒選手:まさにそうですね。僕らが味わっているミシュランのレーシングタイヤのキャラクターは、皆さんが使われているストリートタイヤと一緒なんですよ。特にウェットで。ミシュランのストリートタイヤのウェット路面での安心感って、本当に抜群です。ウェット性能って、ストリートタイヤでは一番重要な性能なんじゃないかと僕は思うんですよね。今では日本でも制限速度が120km/hにまで上げられた高速道路がありますけど、雨の中を、あるいはチョイ濡れの路面状況のところを走るときの性能差って、ストリートタイヤでもハッキリ出ていると思います。その安全と安心をちゃんと判断して、タイヤを選ばれるのがいいと僕は思うんです。
小田島:PILOT SPORT 5を荒さんは履いてくださっていますが、日本市場へ導入する際に箱根ターンパイク(アネスト岩田 ターンパイク箱根)でまず試してもらっていました。そのとき、「このタイヤは安心して乗れます」というコメントをいただいていましたね。
荒選手:あのときのターンパイクがまさにそうだったんですけど、路面は基本的には乾いているんだけど、ブラインドコーナーの先がチョイ濡れだったりする、ということがよくありますよね。でも、PILOT SPORT 5はそんな状況でもグリップレベルが唐突に変化しなくて、適切なグリップをキープしてくれるんです。あのときのターンパイクで用意された試乗車は、FF(前輪駆動)のトヨタ カローラスポーツとFR(後輪駆動)の日産 フェアレディZという、駆動方式から何からまったく違うクルマだったんですけど、乗り比べてみたらタイヤ的にはまったく同じ乗り味だったのでビックリしました。つまり、どんなタイプのクルマに装着しても、その性能や持ち味を変わりなく出せるタイヤだということなんですね。これは、皆さんがお乗りのクルマがいろいろある中で、すごく重要なことだと思いました。
小田島:ストリートタイヤの使用条件の幅広さは、レーシングタイヤの比でないですからね。ストリートタイヤは、サイズに対する荷重とスピードレンジが設定の範囲内にあるのであれば、あらゆるタイプのクルマや使い方に適応しなければいけない製品なので。
荒選手:それから、PILOT SPORT 5を初めて履いたときに、「あれ? このタイヤ、すごい静かだし快適だな」と思いました。静音性を売り物にしているタイヤに負けないくらい静か。それは、タイヤの真円度とか、路面に追従する構造のしなやかさといったところから来ているんだと思います。それから、快適性重視のタイヤだと、トレッドブロックの剛性が不足していて、高い荷重がかかると負けてしまって力が出ない、というところがありますけど、PILOT SPORT 5では接地面積が安定して稼ぎ出されているから、トレッドパターンはそんなにアグレッシブでないのに、高い速度域でもちゃんとした強度が確保されている。だから、速度域の低いところから高いところまで、どの速度域で走っても、同じようなグリップ感、同じようなキャラクターで、平然と走れてしまう。これがPILOT SPORT 5の特にすごいところです。街中だと快適性を犠牲にしている、というスポーツ指向のタイヤにありがちなところが、PILOT SPORT 5にはないんです。
小田島:もちろん、スピードレンジを上げていっても、PILOT SPORT 5はちゃんと応えてくれます。そういう全方位的な性能を、荒さんにはちゃんと評価してもらえたので、うれしかったですね。
荒選手:例えばサーキットでスポーツ走行なんかを走るとなれば、PILOT SPORT 4 Sなどの、もっと適したタイヤがミシュランのラインアップの中にもありますよ。でも僕は、このPILOT SPORT 5が気に入っていますね。
──荒選手はCROSSCLIMATE 2もお使いですが、こちらはどうでしょう?
荒選手:CROSSCLIMATE 2も最高なんですよ! レースだと、そのときのコンディションに合ったタイヤを着けるわけですけど、その真逆の考え方で、一年を通してタイヤを履き替えることなく過ごしたい、それでも、ちょっと雪が降ったくらいでクルマでの移動を諦めてしまうようなことはしたくない、という僕のような人にはベストのタイヤだと思います。僕は横浜に住んでいるんですけど、年に何回か雪が降ることがあります。普通の夏タイヤだと、もうクルマに乗るわけにはいかなくなりますけど、CROSSCLIMATE 2はある程度の雪やシャーベット路面くらいなら全然大丈夫ですよね。
荒選手:例えば、冬場に富士スピードウェイでイベントがあって、御殿場のホテルに泊まって朝になって窓のカーテンを開けたら、外は雪で真っ白だった……ということがあるわけですよ。普通の夏タイヤだったらクルマに乗ることを諦めないといけないですけど、CROSSCLIMATE 2ならそんなときでも安全に移動できます。こういうタイヤを着けていると、本当に安心ですね。雪の上でもしっかりグリップしてくれますから、ブレーキもバッチリ効くし、ステアリングの応答もしっかりしています。
小田島:冬場は何カ月もの間、雪とお付き合いをされなければならない地域のお客様であれば、スタッドレスタイヤが良いと思います。だけど、荒さんのように、一年の大半はドライかウェットの道を走るけど、雪が降らないわけではないという地域を走ることがあるお客様であれば、オールシーズンタイヤのCROSSCLIMATE 2は良い選択だと思います。夏タイヤに加えて冬タイヤを持っていると、その置き場に困る方も多いでしょうし、タイヤ交換の手間もありますから。
──CROSSCLIMATE 2のドライ路面やウェット路面での性能については?
荒選手:ドライでもウェットでも普通に走れます。先日も僕は横浜と広島の間を、CROSSCLIMATE 2を履いたミニで往復したんですけど、まったく快調・快適でした。普通の夏タイヤの感覚と変わりないです。だから、不満は全然ないですね。
小田島:CROSSCLIMATE 2のようなオールシーズンタイヤは、普通の夏タイヤのバリエーションとして存在している製品ですからね。
荒選手:もちろん、PILOT SPORT 5と比べて、ワインディングロードでのタイヤの動きなどはどうかと言ったら、そりゃあPILOT SPORT 5のほうがいいですよ。でもそれは、タイヤに一番求めているものは何か、どこのポジションでの使い方を狙っているのか、という話だと思います。
CROSSCLIMATE 2でひとつポイントがあるとすれば、空気圧の設定ですね。ドライやウェットの普段使いでのCROSSCLIMATE 2では、僕は空気圧を少しだけ高めに設定しています。
荒選手:空気圧に自分なりのアレンジを加えていく、という楽しみは、皆さんがお使いになるストリートタイヤにもちゃんとあるんです。これは、ミシュランのどのタイヤにおいても言えることだと思いますけど。
小田島:タイヤの空気圧は安全に関わることなので、まずはクルマの推奨空気圧でちゃんと管理していただきたいと思います。そのうえで、ハンドリングにこだわりがある方でしたら、空気圧を10kPa刻みくらいで変えてみて、フロントの応答性やリヤのしっかり感などの変化を試してみていただければいいかな、と思います。
荒選手:僕はタイヤの空気圧については、ちょっとオタク的なところがあるんです。SUPER GTでも、ミシュランのタイヤテクニシャンの方といつも空気圧の話をしています。僕はチームメイトとはドライビングの仕方が違うので、チームメイトが履いたタイヤでも、自分が走るときは空気圧を少し変えてもらっているんですね。実際にどれだけ変えるかはミシュラン側の判断にお任せしていますけど。
それにしても、ミシュランのタイヤって、レース用もストリート用も、同じコンセプトで作られていますよね。僕は「ミシュランのレーシングタイヤは、どのサーキットに行っても、どんな天候になっても、高い性能を発揮してくれる」と言いましたけど、それはストリートタイヤにもそのまま言えることですね。我々がレースで使っている技術がストリートタイヤに応用されていて、それが別物にはなっていない。そこは間違いないと、僕は自信を持って言えます。
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