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SUPER GTタイヤ、
そのシビアな世界の一端

[COLUMN] THE DEPTH OF SUPER GT TIRE

SUPER GTタイヤ、
そのシビアな世界の一端

SUPER GTは、世界で最も高いレベルでタイヤ競争が行われているモータースポーツシリーズであると言っても過言ではありません。そんなSUPER GTのトップカテゴリーであるGT500クラスのタイトルをパートナーチームとともにこれまで4度手にしてきているミシュランは、毎戦、そのレースの開催コンディションやマシンの状態、そしてチームの戦略に最も適していると判断した仕様のタイヤを投入して勝負に挑んでいます。

今回のコラムでは、ミシュランのSUPER GT活動を統括している日本ミシュランタイヤの小田島広明モータースポーツダイレクターの解説により、SUPER GTタイヤのシビアさの一端をご紹介します。

2018年のSUPER GTシリーズには、タイヤメーカーとしてブリヂストン、横浜ゴム、ダンロップ、そしてミシュランの4社が参戦しており、極めて高度なタイヤ競争を繰り広げています。現在、F1や日本のスーパーフォーミュラ、ドイツのDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)、あるいは二輪の最高峰レースであるMotoGPをはじめとする様々なレースシリーズがタイヤをワンメイクとして行われており、それに対して4社ものタイヤメーカーが凌ぎを削っているSUPER GTは際立った存在となっています。

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激しいタイヤ競争による後押しもあって、SUPER GTに出場するマシンの進化の早さは目覚ましいものがあります。トップカテゴリーであるGT500クラスには、日産をはじめ、トヨタ、ホンダという日本の3大自動車メーカーがそれぞれ独自に開発したGT500専用マシンを送り込んでいますが、そのパフォーマンスは上がるばかり。そのため、スピードを抑制して安全マージンを改めて大きく確保する目的で、2017年にはマシンの空力をはじめとする様々な領域での性能向上抑制を狙った車両規則の大幅な変更がありました。

実際、2017年におけるGT500クラスの各サーキットでのラップタイムは前年より大幅に遅いものとなりました。しかし、各自動車メーカーや各チーム、そして各タイヤメーカーの努力により、新しい車両規則によって低下した性能はわずか1年のうちに取り返され、2018年のラップタイムは2016年と互角かさらに速いものに。SUPER GT、特にGT500クラスの進化の早さが図らずも示されることになりました。

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SUPER GTにおけるタイヤに関する主な規制は、各レースに持ち込むことができるタイヤの本数についてのものです。シリーズ戦の大半を占める300km程度の距離でのレースであれば、1台の出場車両に対してドライコンディション用を7セット(28本)、ウェットコンディション用を9セット(36本)持ち込むことができます(未勝利タイヤメーカーはドライコンディション用をさらに1セット追加できます)。

一方、タイヤの種類に関する規制はSUPER GTには特にありません。この点がSUPER GTのタイヤ競争を激しいものとしている大きな要因のひとつです。もちろん本数制限があってのことですので、やみくもに多くの種類のタイヤを用意しても意味がなく、現在ミシュランではドライコンディション用であれば2~3種類ほどのタイヤを各レースに持ち込んでいます。

日本ミシュランタイヤの小田島広明モータースポーツダイレクターはこう説明します。 「各レースに持ち込むタイヤは、決勝レースのスタート時と終了時の路面温度を予測し、どちらかでより高いパフォーマンスを発揮できる仕様、もしくはどちらの路面温度のレンジもカバーできるような仕様を用意する、というところを基本的な考え方としています」

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路面温度への対応は、基本的にはコンパウンドの仕様の違いによって行っています。その仕様の違いを各レースの現場では「ソフト」や「ミディアム」や「ハード」といった呼び方で表していますが、これはあくまで便宜上のものであり、仕様の違いはコンパウンドの違いだけにとどまるものではありません。また、まったく同じコンディションのもとで開催されるレースはひとつとしてないわけであり、ミシュランがそのレースの開催コンディションに最も適したものとして投入しているSUPER GTタイヤの仕様は毎戦異なります。たとえば、どのレースでも「ミディアム」と呼ばれるスリックタイヤがありますが、その技術的な仕様は毎戦違うものであるわけです。

タイヤの性能を追求していくと、最終的には路面温度の変化にどうしても敏感になっていきます。たとえば、5℃の路面温度の変化は、現在のSUPER GTタイヤにとってはとても大きなものです。ただし、その程度の路面温度の変化によってタイヤの性能がガタ落ちになってしまう、ということはありません。

「そのようなことがないように、路面温度の変化によってタイヤのパフォーマンスが変化する量をできるだけ小さくする。言い換えれば、そのタイヤがベストのパフォーマンスを発揮する路面温度のレンジをできるだけ広く取る。そうしたことを念頭に置いて各レースのタイヤを開発しています」(小田島ダイレクター)

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ミシュランは便宜上、「ソフト」「ミディアム」「ハード」といった呼び方でタイヤの仕様の違いを表している、と先ほど書きました。それは文字どおりタイヤの固さ、とりわけコンパウンドの固さに拠る呼び方です。

SUPER GTの標準である300kmレースは、タイヤ交換を行うピットストップを真ん中に挟んで、前半と後半の2つのスティントに分けて戦うのが基本です。午後2時頃にスタートした場合、1時間半〜1時間50分程度の長さのレースとなりますので、その間に気温や路面温度が少しずつ下がっていくのが常。すると、前半スティントではミディアムタイヤを使っていたのに対して、後半スティントではソフトに履き替える、というようなことが戦略的にあり得ます。

タイヤ固有の粘着性は、ミディアムよりソフトの方が高いものがあります。しかし、それを装着すれば必ずラップタイムが上がるというわけではありません。レース中に種類の違うタイヤに履き替えた場合、後半スティントにおいて前後タイヤの性能の出方に違いが出ることがあるからです。

「我々が注意を払わなければならないのはタイヤ単体の性能ではなく車両全体でのグリップです。つまり、4つのタイヤを車両に装着した状態でのバランス、特に前後のタイヤのバランスが重要なのです。現在のSUPER GTタイヤはかなり細かい開発をしています。そこでレース中にタイヤの種類を変えたとき、それまでのタイヤでは適正であった前後のバランスが新しく履いた種類のタイヤでは崩れてしまうということが往々にして起こり得るのです」(小田島ダイレクター)

同じような話で、タイヤの種類の違いによるライフの違いという問題があります。最も持ちが良いのはコンパウンドの固いハードタイヤだとお考えになるのが普通ですが、それがきちんと路面をグリップすることができない状態で使うと、タイヤが過度にスリップすることによって摩耗が余計に進み、想像されるよりよほど早くタイヤの性能低下を招くことになります。一方、柔らかいタイヤであってもきちんと路面を捉えてグリップさせて使うことができれば、そのタイヤの設定温度レンジの中であれば安定して速いラップタイムで走り続けることができるのです。

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こうしたこともあって、本当にメリットを見込めないかぎりは、レース中は極力同じ種類のタイヤを使い続ける方が良い、というのが基本的な考え方になります。

「GT500クラスのマシンはすべて後輪駆動車ですが、すると駆動力がかかるリアはタイヤの内圧が上がりやすく、タイヤが本来のパフォーマンスを発揮する温度レンジに入るのも早い。しかし、フロントに対してリアがあまりに先行すると、ハンドリングはアンダーステア傾向になります。また、リアタイヤのパフォーマンスが下り坂に入るタイミングが本来の狙いよりずいぶん先に来ると、今度はフロントのグリップが勝つ形になって、結果的にオーバーステアの強い状態になってしまいます。つまり、フロントもリアも同じように温まり、同じようなタイミングでパフォーマンスのピークが来て、そして同じように性能が緩やかに落ちていく、というタイヤにすることが実はとても大事なのです」(小田島ダイレクター)

なお、ミシュランの場合、各レースに持ち込むスリックタイヤやレインタイヤの構造は原則的にそれぞれ1種類のみとしています。なぜなら、構造が違えばタイヤのたわみ量変化(高さ)が違うことになり、それを履くマシンの車高が変わって空力性能に影響が出ることになるからです。現在のGT500マシンは車高をコンマ数ミリ刻みで調整するという世界にあり、そこで持ち込みタイヤの構造を限定しているところにもSUPER GTのシビアさの一端がよく表れていると言えます。

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